[通信業界]ソフトバンク、独自通信網を使った固定電話事業を開始 を読んで

「NTTの基本料は不要」–ソフトバンクグループ、独自通信網を使った固定電話事業を開始を読んで

 やはりこのニュースを取り上げないわけにはいかないだろう。


 孫社長は、「日本テレコム買収はこのためにあった」と発言している。
 またも通信業界の常識破りという点で非常に驚きだ。

 良くNTTは倒産しないという話をするときに私が例に出していたのが基本料金の存在だ。CNETの記事にもあるように、「固定電話市場のうち通話料金市場規模が約1兆4000億円であるのに対し、基本料金市場は約1兆8000億円」NTTは経営が苦しくなれば基本料金を値上げすれば本質的には生き延びることができる。
 
 ただ、それはあくまで競争がない世界の場合だ。

 もちろん光ファイバやCATVにおいては、NTTの基本料金不要の電話サービスというのは既に存在する。ただ、銅線の電話網に関しては、これまでこの基本料金の世界への参入は、投資対効果に見合わないとされてきた。
 米国からの圧力により、NTTの電話網への相互接続料はかなり低い水準まで押し下げられたため、独自網を作るよりもNTTに相互接続料を支払った方が安く済むというのが一般的な見方だったからだ。

 ソフトバンクはこの常識を、法人向けに特化した形で乗り越える予定のようだ。
 通信料金の値下げ競争が激化する中で、基本料金はおそらく現在でも聖域とされているはずだから、案外このインパクトはあるかもしれない。

 独自通信網といっても、銅線を各企業まで引きなおすわけでなく、NTTの局者に設備を設置するだけだから、それほど時間もかからないだろう。
 設備投資額が数百億円規模で、年間730億円のNTTへの相互接続料を支払わなくてよくなる計算だそうだから、狸算としては非常に効率も良い。

 
 他の事業者がいっせいに法人向けIP電話サービスに注力する中、「個人向けサービスなら、IPバックボーンのほうが全体的に見てコストダウンになる。しかし寸断も許されない法人向けには、より安定的なサービスが必要だ」と発言できてしまうのは、個人向けIP電話サービスシェアトップであるソフトバンクならではの実感なのだろうか。

 ブランドの問題もあり、実際にこのサービスを企業が受け入れるかどうかは微妙ですが・・・
 さて、NTTはこれに対してどう反応するのか、それとも無視を決め込むのでしょうか?

KDDI、子会社を統合して「KDDIネットワーク&ソリューションズ」を設立 を読んで

KDDI、子会社を統合して「KDDIネットワーク&ソリューションズ」を設立 – CNET Japanを読んで

 ソフトバンクの日本テレコム買収が、こんなところにも影響をもたらしているのだろうか。


 KDDIは子会社四社を統合して法人向け事業を強化するそうだ。
 個人的にはちょっと遅ればせながらという印象が強いが。

 私も実は昔、通信の法人営業をやっていた。
 当時はNTTに対してDDIと日本テレコムは明確に価格が安いという時代だった。
 例えば電話料金で言えば、全てのエリアでDDIと日本テレコムはNTTよりも10円安い。

 NTTは様々な割引サービス(それも複雑なもの)を投入することで、何とか顧客とのパイプをつなぎ、法人営業の充実化による人海戦術で顧客獲得競争を戦っていた。(要は私もその中の一人だった)
 それに対してDDIや日本テレコムは代理店に販売を依存していた印象が強い。

 代理店からしたら、DDIや日本テレコムのサービスは明らかにNTTより安いのが分かっているのだから、非常に売りやすかったはずだ。
 それに対してNTTの法人営業では、価格競争では本質的に勝てないのでシステムまでトータルに提案することでネットワークもNTTを選択してもらうというソリューション営業の道を選んだ、いや選ばざるを得なかったというのが私の印象だ。

 だが、時代は変わるものだ。

 Terachiさんも現在の法人事業は利益が出にくい体質になっていると指摘している。
 現在の法人向け通信サービスは完全に定価がなくなってしまい、それこそ「半値八掛け二割引」の世界になりつつあるらしい。
 結局通信事業者としても大口顧客は身を切ってでも確保しないといけないので、熾烈な価格競争に陥るケースが多いようだ。

 法人営業を代理店に依存してしまうと、この競争の俎上にすら乗れないというケースが増えているのかもしれない。
 そういう意味ではKDDIとしても、法人向け事業の強化は避けて通れない課題なのだろう。

 個人的には今後移動通信事業においても、同様の流れが出てくると考えている。
 KDDIは移動通信事業と固定通信事業を切り離すのではという憶測も流れているが、どうなんだろう。
 移動通信事業においても法人営業能力の強化は必須だと思うのだが・・・

[Blog]「ビジネス・ジャーナル」と「ジャーナル・アカデミー」 を読んで

CNET Japan Blog – 「ビジネス・ジャーナル」と「ジャーナル・アカデミー」
を読んで

 この梅田さんの投稿にしても、FPNへの渡辺さんの投稿にしても、最近、ブログでメディア論やジャーナリズム論を見ることが多い気がするが、私の気のせいだろうか。


 やはり有名ブロガーの皆さんも夏休みに入って、ブログを書いている意味というのを改めて振り返っているのかもしれないなぁと思ってしまう。
 (毎日質の高い投稿を続けるというのは相当大変な作業のはずだ)

 個人的にも、いままで自分がなぜこれほどブログの流れに魅せられるのか整理できずにいたが、今回の梅田さんの投稿で少し整理ができたような気がする。

 会社に入ったばかりの頃、特にNTTで働いていた頃は、どちらかというと私は書籍を主な情報源にしていたように記憶している。
 MBAに興味があったこともあり、読むのは大抵マーケティングやマネジメントの古典だった。これらの書籍を読むことで知識が体系的に吸収できる感覚があり、それはそれで非常に勉強になったと思っている。

 ただ、転職してITベンチャーに身をおくようになり、急速に書籍の知識だけでは足りないというのを痛感するようになった。NTTで刺激的に感じていたグロービスが物足りなくなってきたのも、この頃のように記憶している。
 

 今この感覚を振り返るなら、「ジャーナルアカデミー」と「ビジネスジャーナル」の違いで説明できるような気がする。

 とにかく、書籍の知識では遅いのだ。
 例えば今Googleの戦略に関する書籍が出版されたとしても、その書籍に反映されているのはせいぜい半年前までのGoogleの戦略だ。
 知識として吸収するには良くても、今を生きていく判断材料としてはあまり参考にならない。

 ただ、逆にIT系のニュースサイトの記事は、大抵どのサイトを見ても同じような記事の場合が多く、深い情報を得られるのはまれだった。
 そんな私の前に出てきたのがブログというわけだ。
 もちろん、多くの個人のブログは、これまでのプロに比べればそれほど質が高いわけではない。ただ、ブログはその圧倒的な情報量によって、ある程度の質の不足を埋めてくれると感じている。

 そういう意味で、梅田さんのまとめの文章には非常に賛成できる。

わざわざカネを出してまで読む雑誌の場合、その雑誌の特質と読者層の前提がある程度整合が取れていて、しかも編集という付加価値があって交通整理ができているが、ネット上の言説の場合、そのあたりが混然としている。それゆえに、誤解が生じやすく、噛み合わない議論が頻発する代わりに、さまざまな知が交錯して刺激的でもある。

 この「知が交錯」という点が、私がブログに惹かれてやまない理由だろう。
 
 これまで雲の上の存在で、受身でしかなかったジャーナリズムやアカデミズムの世界に、つま先だけでも突っ込むことができるわけだし。
 なんとも面白い時代になったものだ・・・と思うのは私だけだろうか?

[通信業界]ドコモ元副社長がボーダフォンのトップへ転身 を読んで

ドコモ元副社長がボーダフォンのトップへ転身,3G展開の遅れ取り戻せるか : IT Pro ニュース

 さすがにこのニュースはちょっと驚いた。


 そもそも、自由化後の日本の通信会社はその多くが電電公社出身者で占められており、今さらNTTグループの人間が他の通信会社に転職したところでそれほど驚く話ではない。

 ただ今回の話はさすがに格が違う。
 津田さんはこのニュースの段階では、ドコモエンジニアリングというドコモの子会社の社長だが、もともとは次期NTTドコモの社長に内定と騒がれた人だ。

 おそらくNTTグループの歴史の中で、これほどの大物がライバル企業に引き抜かれるというのは始めての出来事だろう。
 
 技術系の津田副社長がドコモの社長に内定した後、持株会社が待ったをかけて事務系の中村副社長が社長になったというのは有名な噂だが、実際のところこのあたりの話も少なからず影響しているのだろう。

 いくら社長になれなかったとはいえ、NTTグループにとどまっておけばこのクラスの役員は子会社の社長や顧問などを歴任することで一生が保証されている。まぁ、NTTグループはもともと電電公社、そもそもは逓信省なのだから国家公務員の天下りみたいなものだ。
 そのレールを蹴って、ライバルの、しかも現在不調がつたえられるボーダフォンの社長に転身するとは・・・時代も変わったものだ。

 もちろん、これが米国であれば、社長争いに敗れた経営陣が別の会社の経営者として転身するのは珍しくも無い話だ。
 日本にもついにその流れがきたということだろうか。

 ただ、個人的にはどうしても斜めに見てしまう。
 津田元副社長の経営者としての手腕を私は知らないので何ともいえないが、その功績は主に技術面でのものだ。
 はたして今のボーダフォンには技術面での梃入れが必要なのだろうか?

 3Gで出遅れたというのはもちろん分かるが、現在のボーダフォンの苦境はそれだけが原因とは思えない。
 NTTグループのような巨大企業の経営者の実力は、経営力だけでなくその社内人脈や調整力が大きく影響すると思う。

 はたしてほとんどの腹心をNTTグループに置いてきた状態で、ボーダフォン社長として本当に低迷する船をもう一度引き戻すことはできるのだろうか?

[Blog]「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」 を読んで

ITmediaニュース:「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」──「百式」を運営するビジネスマンを読んで

 記事をすっかり見落としていたのだが、NDO:Weblog経由で発見


 百式の田口さんには一度だけお会いしたことがあるが、非常に頭の回転の早いクールな方だ。

 田口さんが某大手ITコンサルで働いていたのは有名な話だが、下記の話は知らなかった。

今は、週1回程の大学院でのシステム構築と、フリーのコンサルティングで生計を立てる。年収は半分に落ちたが、「お金で時間を買った」。

 てっきり、百式関連で何か収入が入るからやめたのかと思っていたが、私の勝手な思い込みだったようだ。

 ただ、ネットをてこに使って自分のブランドを確立した例としては田口さん以上に良い事例は無いだろう。幅広い活動がそれを端的に表している。

百式の名前を出せば、ネット業界の人ならたいがい会ってくれるようになった。会社を辞めた今、名刺に印刷されているのは「百式」の大きな文字。“百式の作者”として、コンサルティングやライターの仕事を受ける。百式のコンテンツをまとめた本も2冊出版した。月1回、数十人の読者を集めてイベントもこなす。

 「大手コンサルの中にいる一人」として会社の仕事をしながら生きるのではなく、「百式の田口」として自分のやりたいことをしながら生きる。

 これまで日本人は「会社」の肩書きで仕事をしていたが、インターネットを上手く使えば、今後こういう「個人」のブランドで生きていく事例というのはどんどん増えて来るんだと思う。
 是非成功事例として突っ走って欲しいものだ。
 
 個人的には田口さんの言葉に更に刺激を受けた。
「シナプスの間の電流。インタラクションが上がれば上がる程、頭が良くなるもの。究極のインターネットは、みんながちょっとずつ頭がよくなる世界になるってことだと思う」
 そう、これだと思う。
 インターネットを上手く使えば、会社や組織の中だけでなく、世界の頭脳を借りることができる。だからこそ、より個人というものが浮き上がってくるのだろう。

 ちなみに、GREEの田中さんの記事といい、今回の百式の田口さんの記事といい、こうやって個人を取り上げているITmediaの岡田さんというのもまた注目のキャラクターのようだ。
 NDO:Weblogのnaoyaさんも、記事を書かれた等の本人である田口さんも、べた褒めしている。

 メディア名よりも記者の名前が前に出てくるというのは、これまでにはあまり無い現象のような気がするが、どうなんだろう・・・
 これも会社の肩書きから個人のブランドへの流れ減少の一つなんだろうか?

[P2P]Skype、有料IP通話サービスの試験提供を開始 を読んで

Skype、有料IP通話サービスの試験提供を開始を読んで。

 すっかりこのニュースを取り上げるのが遅くなってしまった。


 以前自分のブログで書いたこともあるが、私はPCから発信する形のインターネット電話は日本ではそれほど普及しないだろうと思っていた。
 ただ、最近微妙にその考えは変わってきている。

 私がコラムでSkypeを取り上げたのは5月の話になるが、それから数ヶ月でかなり日本においてもSkypeの認知度は上がってきているようだ。

 各種IT系雑誌はおろか、週刊ダイヤモンドなどの一般誌でも取り上げられるようになっているし、最近ブログでSkypeの書き込みを見ない日は無い。
 例えば、磯崎さんのブログではここしばらく実に丁寧にSkypeのレポートがされている。

 
 もちろん磯崎さんのケースは、あくまで国際会議がきっかけであって、一般的な日本企業の前例としては少し特殊かもしれない。
 やはりヘッドセットに対する抵抗感が日本と米国では違うと思うし、この感覚は変わらない。
 
 ただ、このSkype Outでの一般電話との連携サービスのビジネスモデルを見ていると、案外これならいけるのかもしれないとも思えてくる。

 磯崎さんが「道に落ちてる直径30cmのケーキに出くわしたアリさんモデル」と表現しているが、それでいいのかもしれない。
 Skypeの設備投資は、P2Pの特性もあり、通常の電話設備の投資金額に比べて極端に小さいはずだ。小さいことを考えると、現状の音声電話市場の一部を取ってこれるだけで十分利益が出るということだ。

 
 例を考えてみよう。

 現状のSkypeで、会社のビジネスホンの置き換えをするのはまだ厳しい。
 ただ、例えばうちの会社のようなベンチャー企業では、実は開発者の席にはビジネスホンを置いていない。
 もちろんほとんど必要が無いから置いていないのだが、たまに電話をかけたいときにこれが結構困る。

 でももちろんパソコンは持っているわけだから、それこそヘッドセットだけ買ってあげて必要なときだけSkypeで電話をしてもらえばいい。
 PCの起動時間を考えると、Skypeで電話を受けるのは厳しいかもしれないが、かけるだけと割り切れば結構便利かもしれない。

 Skypeに入るのはもちろん非常に少ない接続料だが、積み重ねれば結構いい金額になるかもしれない。
 そうやって考えていけば、結構細かく切り取れる電話市場は存在するのではないだろうか?

 当初の予想に反して、SkypeはPC電話の形態でも思ったよりも普及する可能性があるのでは・・・と思ってしまう今日この頃です。