Amazon、Yahoo!、eBayと楽天は何が違うのか を読んで

CNET Japan Blog – 梅田望夫・英語で読むITトレンド:Amazon、Yahoo!、eBayと楽天は何が違うのかを読んで。

 CNETの梅田さんと楽天の(GREEの)田中さんのディスカッションが非常に興味深い。


 梅田さんの「Googleと楽天・ライブドアを比較することに意味はあるか?」という記事に対して、田中さんが「ネット産業は、サービス産業かテクノロジー産業か?」というトラックバックを打ち、それに梅田さんが答えるという形で議論が展開していく。
 (実は私もそれぞれの記事に個別にトラックバックを打ちながら考えようと思っていたんですが、議論のスピードについていけませんでした(笑))

 最後の梅田さんの記事のタイトルには含まれていないが、根底に流れているのは「Googleは何なんだ?」という疑問のように思う。

 
 まず米国のYahoo!、Amazon、eBayと楽天の比較論は、根本的には既存のサービス産業の違いとそれほど変わらないと思っている。
 Think Global, Act Localという有名な言葉があるが、どの産業においてもいくら経済のグローバル化が進んでいるといっても、その国にあわせたローカライズを行わないで成功するということは少ない。

 もちろん自動車やテレビのような製造業や、マクドナルドのような飲食業では事情はかなり違う。言葉を伴わない「モノ」の場合は、その製品自体が対象の国の文化に受け入れられれば、ある程度は用意にグローバル化が可能だ。
 しかし、それでも国にあわせて適切な手を打たなければ成功できないというのは、過去の数多くの外資系企業が日本参入で失敗した例や日本企業の海外進出の苦労を見れば明らかだ。
 (例えば米国車の日本参入の数々の失敗なんかが分かりやすい例かもしれない)

 これが言語をベースとする情報産業になると、その敷居はさらに高くなる。
 もちろんグローバル言語である英語の国が優位にあるのは言うまでも無い。グローバルな規模の優位を確立することも容易だし、そもそも最初からそれを計算に入れているモデルも多い。
 
 逆にいうと、情報産業においては米国で成功しているからと天狗になって参入すると失敗するのは当たり前だろう。
(米国のネットオークションで圧倒的な成功を収めているeBayが、鳴り物入りで日本に参入したのに上手く行かずに撤退したのは有名な話だ。)
 結局どんな産業であっても、それぞれの国の顧客を見ながら事業を行わなければ成功できないという話に帰結する気がする。

 上記の話とGoogleの現在の成功については次元が違う話だ。
 だから、この議論が盛り上がるのだろう。

 もちろん、Googleが顧客を見ていないわけではないのだが、Googleは明らかに顧客をテクノロジーでリードしている。
 他の事業者が基本的には既存顧客のニーズをテクノロジーで満たそうとしているアプローチなのに対し、Googleは「俺が作る未来についてこい」と言わんばかりの勢いに見える。 
 
 先日もMOTの勉強会で同じような議論になったが、やはりこういうテクノロジーでパラダイムを変えられる企業が、変化の時代には強いという話になった。
 変化を作り出して自らゲームのルールを変えることができるからだ。
(実際、これまでのネット産業は既存のインターネットやMicrosoftのルールの上でプレイしていたのに対し、Googleは強力な検索エンジンを武器にインターネットをあたかも人々の巨大なデータベースであるかのようにインターネットのルールを変えてしまったと思う) 

 ただ、逆にいうとゲームのルールが固定化した後や、テクノロジーが陳腐化すると、逆にそれが足枷になってしまうということも良くあることだ。
 そうなった時に、テクノロジーだけの会社は実に弱い。自社のテクノロジーが別のテクノロジーや低コストなものに置き換えられてしまうと存在価値を失ってしまうから。
 そうなった時には、結局顧客を押さえているものが強いということになるのではないだろうか。

 最近のGoogleのGmailやSNSへの事業展開には、そんな未来への思いが強く表れているように感じてしまいました。

 と自分でも書きながら、だんだんまた良く分からなくなってきてしまいましたが・・・ちょっとまたもう一度勉強しなおします・・・

「Googleニュース」登場の衝撃 を読んで

「Googleニュース」登場の衝撃を読んで。

 早いもので、Googleニュースの日本語版が開始されてもう一ヶ月になる。


 最初にGoogleニュースについて取り上げたときには、記事掲載を拒否しているのは一部の新聞だけだったような雰囲気だったが、どうも勝手掲載だったようだ。
 いつのまにやら大手で掲載されるのは朝日新聞と日経新聞だけになったらしい。
 (現状のニュースソースの一覧はceek.jpでまとめられています

 以前に「準備着々、報道機関ライブドア を読んで」でも書いたが、最近ますますメディア産業というものも一つのコンテンツ産業として見れば良いのでは?との思いが強くなってきている。

 記事というコンテンツを「つくり」、何らかの方法で利用者に「提供する」というイメージだから。
 音楽というコンテンツを「つくり」、何らかの方法で利用者に「提供する」のと同じように考えれば良いような気がする。
(ちょっと極端すぎるかもしれないが) 

 今回のGoogleニュースに対する反応も、各メディアが自分のコアをどちらと思っているかで変わってくるような気がする。

 記事を「つくる」のがコアだとすれば、その記事の提供先がGoogleニュースのような形で増えるのはウェルカムのはずだ。
 逆に記事を「提供する」のがコアだとすれば、インターネット上のメディアという軸では、Googleニュースをライバルとみなさざるを得ないだろう。

 「つくる」機能と「提供する」機能の両方を持っている既存大手メディアの「持てる悩み」がこれからより深くなるような気もする。 
(つくる側の機能がブログとの競合でどうなるかという話は、Unfogettable Daysの「ブログジャーナリズム/ブログメディアの特徴」で丁寧にまとめられています。こちらはまた別の機会に考えたいです。)

 
 ちなみに湯川さんのブログでは「グーグルニュースのコンピューターは、短時間に同じテーマの記事がどれだけ多く出ているかなどといったことを重要度の判断基準にしている。つまり記事を出す報道機関が数多く存在していて初めて成り立つ仕組みだ。現在のグーグルニュース日本語版のように大手が2,3社しか参加しないようではうまく機能しない。」と書かれている。

 実はこの点については、個人的には少し疑問があったりする。
 これまでの大手新聞の記事は、それほど各誌で大きな違いを見せていたんだろうか?
 案外、最新記事レベルであれば、現状のニュースソースでそれほど変わらないサービスを提供できてしまったりしないのだろうか?

 もちろん私も、グーグルニュースが既存メディアの役割を全て置き換えられるとは思っていない。
 先日週刊アスキーの編集長をされていた福岡さんにお聞きしたときは、やはり見出しの編集能力が重要だと話されていた。特に日本語は漢字の選択やひらがな・カタカナなど英語に比べて見出しの自由度が高いから、より一層編集者の裁量が影響するようだ。
 このあたりはグーグルニュースのような自動的な仕組みではカバーするのはかなり難しい。 

 まぁ所詮まだサービス開始から一ヶ月。
 この議論の結論が見えてくるのはまだまだ先の話でしょうね。

 どうなるのかなぁ・・・

[通信業界]FTTHサービス「Yahoo! BB 光」開始を正式発表 を読んで

ソフトバンクがFTTHサービス「Yahoo! BB 光」開始を正式発表を読んで。

 孫さんは、光ファイバでもADSLと同様のサプライズを見せられるのだろうか。


 ようやっとソフトバンクのFTTHサービスの概要が明らかになったが、今回の目玉は1Gbpsという速度のようだ。

 先日、ADSLの成功について友人と議論をしたが、やはりISDNのような従量課金から定額課金に変わる過程での積極的な低価格政策が、大きかったのではないかという話になった。
 この「従量課金から定額課金に変わる過程」というのがポイントだ。

 たしかにYahoo!BBが登場したときの低価格のインパクトは非常に大きかったが、従量課金のプロバイダから定額課金に切り替えたいというニーズがあったからこそ「プロバイダの大移動」があった。
 だからこそYahoo!BBは、初のプロバイダ事業参入にもかかわらず大きなシェアを取ることができたのだろう、という考えだ。

 はたして、利用者はADSLを光ファイバに積極的に置き換えるか?というのが最近の通信事業における大きな疑問だ。
 今回は従量課金から定額課金というサービス軸の大きな変化は無い。
 
 ADSLも光ファイバも所詮土管にすぎない。
 1Gbpsという接続速度で利用者は飛びつくのだろうか?

 CNETの記事によるとFTTHサービスのシェアについて孫さんは「ADSLで確保している程度のシェアはねらいたい」と発言しているらしい。
 まぁ、逆にいえば現在のADSLの利用者が他社のFTTHに逃げずにYahoo!BB光に移行してくれれば十分だという意味にも取れる。

 そういう意味では孫さんの本音はやはり記事の最後にある部分にあるのだろう。

なおソフトバンクグループでは、FTTHサービスに向けたコンテンツとして、会員専用のウェブサイト上で、テレビ地上波をはじめ、BB TV、ビデオ、DVD、CS、BSなどの放送がすべて視聴可能となる「無線TVパック(仮称)」を提供する予定としている。これにより、「ADSLではIP電話を標準サービスとして電話の世界を変えたが、FTTHではテレビの世界を変えることになる」と孫氏は述べた。

さてさて、思惑通りいくのかどうか・・・

 ちなみに、私は実は数少ない(?)BBケーブルTVの利用者だったりもします。
 ちょっと楽しみだったりして・・・

[通信業界]NTT東西、基本料金値下げへ を読んで

NTT東西、プッシュ回線使用料など廃止、基本料金値下げへ – CNET Japanを読んで。

 やっぱり値下げ競争をやってしまうんですね。


 前回「KDDIのIP固定電話サービスを読んで」の時にも書いたが、おそらくこの基本料金値下げ合戦はお互いの利益低下の引金になるだけで、通信業界には何の利益ももたらさないと思う。

 実際、数年前のマイライン獲得競争のときも、通信業界はシェアを拡大しようと野心に燃える「ある通信事業者」によって、円ではなく「銭」単位の通信料金競争に突入して血みどろの顧客獲得競争を繰り広げた。
 でも、結局勢力地図はほとんど書き換わらず、ほとんど誰も儲からなかった。

 その後、BBフォンの登場や携帯電話の台頭によってマイライン登録自体の意味が無くなる時代が来てしまったんだから、なんとも悲しい話だと思う。

 今回も同じような話になってしまいそうだが、やっぱり値下げに対して値下げで対抗するしかないというのが現在の通信業界の現実なのでしょうか。

 
 ちなみに、ちょっと話は違うが、先日CNETの御手洗さんと飲んだときに「結局儲かるのは業界内で価格競争が起こらないようにした業界だ」というような話になったのを思い出しました。

 そういえば通信業界もNTTよりDDIと日本テレコムが10円だけ安いという「業界秩序」が守られていた時代があったなぁ・・・懐かしい。

ベンチャービジネスとスモールビジネスの大きな違い を読んで

CNET Japan Blog – 梅田望夫・英語で読むITトレンド:ベンチャービジネスとスモールビジネスの大きな違いを読んで。

 ずっと「ベンチャー」という単語に一種の違和感を感じていたのだが、この記事を読んでようやく整理ができた。


 この記事は、ネタフルの「淡々と更新する「Craigslist」」というトラックバックをきっかけとして、ベンチャービジネスとスモールビジネスの違いについて、梅田さんの人生観を併記しながら書かれていて非常に分かりやすい。

 日本ではベンチャー=スモール(中小企業)的な使われ方をすることが多いような気がするが、ベンチャービジネスとスモールビジネスは本質的に全く違うということのようだ。

 もちろんどちらが正しい、間違いという話ではなく、どちらのスタンスを取るのかというのは、自分自身の価値観と相談してしっかり考えなければいけない問題なのだろう。

 KoWBのサトウさんPlain living, High thinkingのissuiさんzerobaseの石橋さん等、この記事をきっかけとして自分の人生観を振り返っている人がたくさんいるのを見て、影響を受けたのが自分だけでないのを感じてしまった。

 ちなみに、この記事を読んでちょっと前にネットエイジの西川さんが書いていた「米国ベンチャーの創業者シェア」という投稿を思い出した。
 何でも米国のベンチャーは、IPOまでいく場合には創業者シェアが5%くらいになっているのが当たり前で、現実路線としてM&Aをイグジットとして狙う人が多いということだ。

 これは、梅田さんが言う成長を訴求する「ベンチャービジネス」だからこその当然の特徴のようにも思えてくる。 
 短期の成長を訴求するためには早期にVCの資金も必要だろうし、IPOが難しいのであれば現実的なところでM&Aでイグジットというのも論理的だ。
 従業員や投資家への成長の約束が果たせないと分かったら、早期に諦めることも必要ということだろう。

 それに対し、日本の「ベンチャー」は経営者が51%以上持ったままでIPOするケースが多いという。
 もちろんこれは会社の支配権を持ちつづけているという意味で凄いことだ。

 でも、日本に有能な経営者が多いから、支配権を維持できているという話ではないと思う。
 
 最初は「スモールビジネス」的アプローチだった企業が、結果的に成功してIPOまで辿り着いていることだろうか?
 「自分の会社」という意識が強い日本人気質によるものだろうか?
 それともVCによる投資やM&Aによるイグジットの少なさなどの環境の違いがこの数字を作っているのだろうか?
 
 どうなんでしょう・・・?

[SNS]データの重要性を指摘するO'Reilly を読んで

CNET Japan Blog – 梅田望夫・英語で読むITトレンド:データの重要性を指摘するO’Reillyを読んで。

 タイトルだけを見たときは良く分からなかったが、この記事の中心テーマは、まさに私の最近の個人的興味の中心と完全に重なっていた。


 テーマになっているのはSNS(この記事ではソーシャルソフトウェアと定義されている)とGoogle、Microsoft、及びP2Pだ。

 最近GREEを使えば使うほど感じていたのだが、メールのアドレス帳とSNSが連動していれば確かにそんな便利なことは無い。
 前回「MSNがソーシャルネットワーキング「GREE」に学んだこと を読んで」でもメールとの親和性についてtakeshimさんがコメントしてくれている。
 
 それから良くGoogleのGmailとOrkutの統合についての話を知人としていたのだが、MicrosoftもOutlookで同様の取り組みがあるとは知らなかった。
 まぁ、冷静に考えれば当たり前のことなのかもしれないが。

 梅田さんが書いている「データ・ロックイン」というのがキーワードだろう。

 GREEにしてもmixiにしても、利用者がSNS上で友達リストを完成させようとする行為をベースに利用者数を増やしている。確かにその過程は楽しい。
 だが、大抵の人は友達リストを増やすのに疲れた段階でSNSに「飽きて」しまうようだ。
(私は別に飽きても良くて、ゆるくつながっていること自体がSNSの良さだと思っているが)

 結局人間は怠惰な生き物なので、友達リストをいくつも作るのは無理なのだ。
 メールアドレス帳に、IMのコンタクトリスト、SNSのリンクリスト、年賀状の送付リストに名刺データベース。本質的には同じモノのはずで、そのデータをあっちにもこっちにも入力するのは正直相当手間だ。
 そう考えると、「必須のツール」であるコミュニケーションツールとSNSのような仕組みの連動は必須で、それらのデータを握った企業がネットの中心を維持できるという理論は非常に良く分かる。

 実際、コミュニケーションツールとSNSが連動すると、現在とは全く違うソーシャルソフトの世界が出てくるはずだ。

 例えば、GREEで友達リストが100を越えると正直もう管理不能に陥る。
 仲の良い友達も面識の無い人もゴチャマゼだし、どういう知り合いだったか、疎遠なのかどうかも識別不能だ。

 他のメンバーから見ても、例えばキーマンとのリンクが多い人がそのキーマンと本当に「濃いつながり」なのかどうかは良く分からない。
 そのためにリンクの数だけが勝ちになってしまい、むやみに知らない人にリンクを張って数を増やした人が、なんだかキーマンのように見えてしまったりもする。(私も人のことは言えないが)

 Orkutがリンクの際に相手を5段階評価する仕組みを取り入れているのも、このあたりの問題意識からきているのかもしれないが、これがメールやIMのやり取りの多さが自動的にリンクの濃さに反映されるとどうだろう?

 誰が誰と本当に濃い中なのか一目瞭然になるし、自分が誰と最近コミュニケーションが疎遠になっているのかも一目瞭然だ。
 そんな便利なソーシャルソフトなら手放せなくなることは間違いない。
 

 ただ、ここで私もTim O’Reillyと同じ疑問を感じてしまう。

 「はたして、そんな重要な情報の管理を一企業に頼らないといけないのか?」

 そのソーシャルソフトに頼れば頼るほど、自分がビジネスで、プライベートで、どういう人とどのように付き合っているのかサービス提供企業には一目瞭然だ。 
 もちろんそこは倫理や信頼の問題だから、技術の問題とは別問題なのだが。

 これだけテクノロジーが進化しているのに、私たちはまだ自分のコミュニケーションやデータの管理を企業に頼らないといけないのだろうか?

 自分がP2Pに携わっているから言うわけではないが、もっと利用者自身のツールとして存在する手帳やカレンダーのようなツールが出てきてしかるべきではないのだろうか?

 私がP2Pに魅力を感じているのも、そういう視点からなんだなぁと改めて感じてしまいました。
(なんだか一人でちょっと勝手に感動してしまったので、長くなってしまってすいません)