[Blog]「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」 を読んで

ITmediaニュース:「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」──「百式」を運営するビジネスマンを読んで

 記事をすっかり見落としていたのだが、NDO:Weblog経由で発見


 百式の田口さんには一度だけお会いしたことがあるが、非常に頭の回転の早いクールな方だ。

 田口さんが某大手ITコンサルで働いていたのは有名な話だが、下記の話は知らなかった。

今は、週1回程の大学院でのシステム構築と、フリーのコンサルティングで生計を立てる。年収は半分に落ちたが、「お金で時間を買った」。

 てっきり、百式関連で何か収入が入るからやめたのかと思っていたが、私の勝手な思い込みだったようだ。

 ただ、ネットをてこに使って自分のブランドを確立した例としては田口さん以上に良い事例は無いだろう。幅広い活動がそれを端的に表している。

百式の名前を出せば、ネット業界の人ならたいがい会ってくれるようになった。会社を辞めた今、名刺に印刷されているのは「百式」の大きな文字。“百式の作者”として、コンサルティングやライターの仕事を受ける。百式のコンテンツをまとめた本も2冊出版した。月1回、数十人の読者を集めてイベントもこなす。

 「大手コンサルの中にいる一人」として会社の仕事をしながら生きるのではなく、「百式の田口」として自分のやりたいことをしながら生きる。

 これまで日本人は「会社」の肩書きで仕事をしていたが、インターネットを上手く使えば、今後こういう「個人」のブランドで生きていく事例というのはどんどん増えて来るんだと思う。
 是非成功事例として突っ走って欲しいものだ。
 
 個人的には田口さんの言葉に更に刺激を受けた。
「シナプスの間の電流。インタラクションが上がれば上がる程、頭が良くなるもの。究極のインターネットは、みんながちょっとずつ頭がよくなる世界になるってことだと思う」
 そう、これだと思う。
 インターネットを上手く使えば、会社や組織の中だけでなく、世界の頭脳を借りることができる。だからこそ、より個人というものが浮き上がってくるのだろう。

 ちなみに、GREEの田中さんの記事といい、今回の百式の田口さんの記事といい、こうやって個人を取り上げているITmediaの岡田さんというのもまた注目のキャラクターのようだ。
 NDO:Weblogのnaoyaさんも、記事を書かれた等の本人である田口さんも、べた褒めしている。

 メディア名よりも記者の名前が前に出てくるというのは、これまでにはあまり無い現象のような気がするが、どうなんだろう・・・
 これも会社の肩書きから個人のブランドへの流れ減少の一つなんだろうか?

[P2P]Skype、有料IP通話サービスの試験提供を開始 を読んで

Skype、有料IP通話サービスの試験提供を開始を読んで。

 すっかりこのニュースを取り上げるのが遅くなってしまった。


 以前自分のブログで書いたこともあるが、私はPCから発信する形のインターネット電話は日本ではそれほど普及しないだろうと思っていた。
 ただ、最近微妙にその考えは変わってきている。

 私がコラムでSkypeを取り上げたのは5月の話になるが、それから数ヶ月でかなり日本においてもSkypeの認知度は上がってきているようだ。

 各種IT系雑誌はおろか、週刊ダイヤモンドなどの一般誌でも取り上げられるようになっているし、最近ブログでSkypeの書き込みを見ない日は無い。
 例えば、磯崎さんのブログではここしばらく実に丁寧にSkypeのレポートがされている。

 
 もちろん磯崎さんのケースは、あくまで国際会議がきっかけであって、一般的な日本企業の前例としては少し特殊かもしれない。
 やはりヘッドセットに対する抵抗感が日本と米国では違うと思うし、この感覚は変わらない。
 
 ただ、このSkype Outでの一般電話との連携サービスのビジネスモデルを見ていると、案外これならいけるのかもしれないとも思えてくる。

 磯崎さんが「道に落ちてる直径30cmのケーキに出くわしたアリさんモデル」と表現しているが、それでいいのかもしれない。
 Skypeの設備投資は、P2Pの特性もあり、通常の電話設備の投資金額に比べて極端に小さいはずだ。小さいことを考えると、現状の音声電話市場の一部を取ってこれるだけで十分利益が出るということだ。

 
 例を考えてみよう。

 現状のSkypeで、会社のビジネスホンの置き換えをするのはまだ厳しい。
 ただ、例えばうちの会社のようなベンチャー企業では、実は開発者の席にはビジネスホンを置いていない。
 もちろんほとんど必要が無いから置いていないのだが、たまに電話をかけたいときにこれが結構困る。

 でももちろんパソコンは持っているわけだから、それこそヘッドセットだけ買ってあげて必要なときだけSkypeで電話をしてもらえばいい。
 PCの起動時間を考えると、Skypeで電話を受けるのは厳しいかもしれないが、かけるだけと割り切れば結構便利かもしれない。

 Skypeに入るのはもちろん非常に少ない接続料だが、積み重ねれば結構いい金額になるかもしれない。
 そうやって考えていけば、結構細かく切り取れる電話市場は存在するのではないだろうか?

 当初の予想に反して、SkypeはPC電話の形態でも思ったよりも普及する可能性があるのでは・・・と思ってしまう今日この頃です。

[メッセンジャー]脳を繋ぐテキストチャット、空間を繋ぐビデオチャット を読んで

脳を繋ぐテキストチャット、空間を繋ぐビデオチャット – CNET Japanを読んで

 SFCというのは、既に学校全体が巨大な未来の実験室になっているようだ。


 松村さんが表現している学生のチャット事情は、自分のようなテキストチャットが苦手な人間からすると正直想像もつかない。

 実は私はメッセンジャーが苦手だ。
 秘密主義の私としては、いる状態が相手に知られると言うのがそもそも何かイヤだ。
 (だからGREEのオンライン機能も正直嫌いだったりする)

 おまけにメッセンジャーのチャットはいつが終わりになるのか良く分からないし、複数メンバーでのチャットになったら更に辛い。
 まさに反射神経的にキーボードを叩くしかないのだ。
 (でも実は一時期オンラインゲームにはまっていたので、必至にチャットをしていたが)
 
 「脳を繋ぐテキストチャット」とは実に面白い表現だ。
 多分、私はこの脳に繋がれるような感覚が嫌なのだろう。
 そんな私にとって、時間に拘束されないメールは実に気軽だ。
 
 でも、こういう脳を繋いで共同作業する人たちが出てくると、仕事のスタイルも大幅に変わってしまうのだろうとも感じる。

 
 そういう意味では、もう一つの「空間を繋ぐビデオチャット」というのも興味深い。
 Skypeを使って作業をしている人も言っていたが、インターネット電話の可能性を感じてしまうのはやはり「定額制」(要は無料)というところのようだ。

 これまでの「電話」という行為は従量課金でお金がかかっている中でのコミュニケーションだった。
 よっぽど腹が据わっている遠距離恋愛の恋人同士でもない限り、電話をしている際にお金がかかっているという感覚はなかなか消えない。
 当然、「電話」というのはある程度の目的を持ってする行為だったはずだ。

 それがSkypeのようにどれだけつないでも定額と言うことになると、松村さんが書いているように普通に離れた空間を埋めるだけの手段として使われる可能性が出てくる。
(Skypeはビデオチャットではないが、個人的にビデオの動画部分の必要性はあまり感じていない。私たちはあまりに映像の無い電話という「音声チャット」の世界に慣れてしまったのだと思う)

 実際問題、オンラインゲームにはまっていた時に、オーストラリアの連中からボイスチャットに入れと言われて相当困惑した。
 入ってみたら、本当に彼らはボイスチャットで会話をしながらゲームをしていた。なんだか回りに彼らがいるようで奇妙な感覚だったのを覚えている。
 (私は自分のPCのマイクが壊れているとウソを言って、ボイスチャットには参加しなかったが)

 現在の電話機は全て従量課金を前提に作られているから、かけるという行為は外せない。でも、空間を埋める端末と言う視点で考えるとどうなるのだろう?

 例えば、単身赴任の夫と家族の空間を埋める目的の端末であれば、それこそ常時お互いの映像を表示しっぱなしの定点カメラと集音マイクでも良いのかもしれない。

 ・・・どうだろう・・・・それはないかなぁ。

[P2P]P2Pとネットワーク技術の未来にあるもの を読んで

CNET Japan Blog – 江島健太郎 / Kenn’s Clairvoyance:P2Pとネットワーク技術の未来にあるものを読んで

 江島さんが現状のP2P業界を取り巻く雰囲気を、分かりやすい言葉でまとめている。


 Winnyの開発者逮捕をきっかけに、インターネット上では様々な議論が巻き起こっていた。もちろんその中心は著作権や開発者の権利に関するものだったが、同時に「P2P技術とWinnyの問題をごっちゃにするのはおかしい」という議論も一部で始まっていた。

 開発者の逮捕という事件をきっかけに、議論が反対側に触れるというのも何だかおかしな話だ。
 正直不謹慎な話だが、事件をきっかけに有識者の間で、これからP2Pはどうなるのか?という興味が逆に戻ってきて、意外に追い風になっていたりする。
 
 例えばCNETの渡辺さんITmediaがアリエルの小松社長にインタビューしたり、「P2Pは悪くない」というタイトルでの日経コミュニケーションの記事が出たり。
 P2P電話のSkypeもここに来て、週刊ダイヤモンドや東洋経済で取り上げられるなど注目を浴びている。

 不思議なものだ。

 
 ただ、もちろんこの話はあくまで一部の有識者や記者に限った話。
 社会全体のP2Pに対するイメージはあくまで不正ファイル交換やアンダーグラウンドであり、これを今更ポジティブに変換することは、江島さん下記の指摘のとおり不可能に近いだろう。(P2Pの啓蒙コラムを書いている私が、こんなことを書くのも変だが)

実際問題として、世間的にはP2PといえばWinny事件などをめぐって「違法ファイル共有」「著作権侵害」といったネガティブ・キーワードと生々しくリンクされて記憶に刻まれてしまった。反体制的なイメージが濃すぎて、もはやP2Pという技術に対する冷静な議論の機運を逸してしまい、とにかく印象として「クロ」なのだ。

 ただ、この問題に対するソリューションは単純だ。
 P2Pという言葉を使わない、もしくは別の言葉で表現すればいい。
 実際問題、米国ではすでにP2P関連技術の企業は、P2Pという単語を使用していない。グリッドやリレーネットワークというような言葉で置き換えている。

 日本では、オーバーレイネットワークが定着するのだろうか。
 (個人的には言葉が長いのがあんまり好きではないが(笑))

 
 個人的な興味は、江島さんが終盤にかかれている部分だ。

 先日の森さんのサーバー型放送についての話で出てくるコンテンツ周りの利権とは別に、P2P型のコンテンツ配信では味方になるはずのブロードバンド事業者が乗り気にならないという課題がある。

 江島さんが書いている「xDSL技術が暗黙に仮定してきた、Web型トラフィック主体の上り下りの非対称性が、P2Pだと崩れてくる」という点だ。
 結局45MbpsのADSLでも上りはせいぜい1~3Mbpsしか出ない。対象のP2P通信は現状ではできないわけだ。
 
 単純な話、それならFTTH推進派のNTTグループが、この特徴を上手く使うべきだろう。FTTHなら上りも下りも高速で実現できる。
(逆にいうと、現在FTTHがADSLに対して持つ優位性はそれぐらいしかなくなりつつある) 
 実際、NTTグループはFLET’S.NETやSIO-Netなど研究所を中心に、既に多くのP2P技術の蓄積がある。

 江島さんの記事を読む限り、まだまだNTTの中でも課題は多いようだが、是非亀井さんたちに頑張って欲しいものだ・・・
 (それにしても江島さんが亀井さんの後輩とは知らなかった・・・スモールワールドというかなんというか・・・)

[通信業界]AT&T、電灯線を利用したブロードバンドサービスの試験運用へ を読んで

AT&T、電灯線を利用したブロードバンドサービスの試験運用へを読んで

 かなり古い記事だが、個人的に興味があるネタなので取り上げてみたい。


 NTTで働いていた頃、電力系の会社がこのような電灯線を利用したブロードバンドサービスの試験をしていて正直恐ろしかったものだ。

 利用者の立場からシンプルに考えれば、ノートパソコンに電源と電話線の2本のケーブルをささなければならないのは明らかに効率が悪い。
 電力会社がこのサービスを開始したら、一気にシェアを奪われてしまうのではないかとそれは不安になったのを覚えている。

 その試験の話はそれこそ5年も前の話のように記憶しているが、その後サービスを開始したという話は伝わってこない。
 実は実験に携わっていた人に話を聞いたこともあるのだが、やはりコストや技術の面でまだ課題が多いという実情もあるようだ。 

 で、振り返って今回のAT&Tのニュースを見ると、どうも事情は大きく違うようで、まずはアクセス回線部分に電灯線を使って、その先は無線LANというモデルのようだ。
 そもそも電話会社であるAT&Tが電力会社のインフラにアクセス回線を頼ろうとしているところが、広い国土の足回りを地域電話網会社に頼らなければならない米国の電話市場の特殊な環境だろう。

 日本でももちろんNTT東西地域会社に頼っているのだが、どうもコスト面が大きく異なるようだし、個人的には最近電力線を使った通信サービスにはあまり興味は無い。

 よくよく考えてみると、通信自体を「線」に頼る時代自体が終わろうとしているような気がしてしまうからだ。
 何もコンセントで通信に差し込まなくても、最後のところは無線LANやブルートゥースに頼ってしまえばいいはずだ。

 でも、これって固定通信なのだろうか、移動通信なのだろうか・・・