「課題先進国」日本は、タイトル通り、日本が抱えている様々な課題についてのあるべき姿勢を考察している書籍です。
梅田さんがブログで紹介されていたので買って読んでみていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
日本の将来についてついつい悲観的になってしまう方には、刺激になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■先進国は自らの課題を解決して世界を先導した
1989年の名誉革命:イギリスは政治的大混乱という国の大課題に直面して、それを議会制民主主義というこれまでなかった制度を作り上げることで解決し、その後の世界の範となったのである。
■寺子屋という庶民教育の発展
幕末期には、江戸に約1500、全国ではおよそ1万5000の寺子屋があったといわれ、江戸における嘉永年間(1850年ころ)の就学率は70~85%と、先進諸外国に比較して圧倒的な高さを誇っていたといわれている。
■アジアの国々はほとんどすべてが列強の植民地にされてしまった。
日本人には国を守る強い意志と文化があり、その結果、植民地化されないですんだのだ。
そして、生産力と生産技術に、大きな彼我の差があることに気がつくと、日本は対外姿勢を全面的に変えて、欧米のすべてを導入することに決めてしまった。
■「課題先進国」から「課題解決先進国」に
日本の課題は、将来の世界の課題であるから、その課題を解決するということは、人類のこれからのモデルを提供することになるのだ。
■物質としての問題
エネルギー資源の問題、温暖化の問題、水の問題、食糧の問題、環境の問題
■ビジョン2050
・徹底したリサイクルによる物質循環システムの構築
・エネルギー効率を現在の3倍に引き上げる
・自然エネルギーの利用を現在の2倍に引き上げる
■過去は分析で足りるが、未来の洞察には基礎が不可欠だ。
現実をよく把握して、基礎的にものを考えるという姿勢が非常に大切である。
■アメリカ「では」こうやっているという「出羽の守」ではダメ
■グーグルは、ジグソーパズルの無数のピースを持ち、100でも1万でも1億でもピースを集めてくるが、できあがり図を描くことはできない。
ピースを想像しながらできあがり図を描くのが人の頭である。
■優れたビジョンの構築に成功しやすい方法
・可能な限り問題を具体化する
・問題が1億枚の全体像を含むことを、納得して議論を進める
・シャーロック・ホームズのような思考方法を試みることだ。ひらめきである。
ホームズのような才能に恵まれない私たちにもそれを可能にしてくれるのが、人と人との議論だ。(正反合の合を求める)
■上意下達から「議論とスピード」へ
日本人の心に、お上が何とかするという上意下達の意識が脈々と流れている。
私たちは議論の仕方を身につけなければいかねい。醸成すべきは議論の風土である。
■失敗の総括
社会がいろいろな実験を許して、うまくいったものを広める、というカルチャーを育てなければならない。
きちんと失敗を分析して、それを次に活かすのは当たり前のことだ。しかし、それが日本で行われていない。
■フロントランナーは常に孤独
新しいことを提案すると、人は必ず「それは誤りだ」という。
少し進み出すと、「誤りではないが、できるはずがない」となる。
できそうになってくると「できるかもしれないが、できても意味がない」となる。
そしていよいよできると「やっぱり、私の言ったとおりだ」と言う。
「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ 小宮山 宏 中央公論新社 2007-09 by G-Tools |