アーキテクチャの生態系 (濱野 智史)

4757102453 「アーキテクチャの生態系」は、Wired Visionの濱野智史の「情報環境研究ノート」 でもお馴染みの濱野 智史さんが書かれた書籍です。
 献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 日本のインターネットならではの特徴や可能性について理解したい方には、刺激になる点が多く含まれている本だと思います。
【読書メモ】
■「検索エンジンは、的確な検索結果を導き出すためにリンク構造を利用している。このため、適切なタイミングで、大量のリンクを生み出すブロガーは、検索結果の生成に重要な役割を果たすようになっている。また、ブログ・コミュニティはきわめて自己言及的であるため、ブロガーが他のブロガーに注目することで、ブロガーの存在感と力は増幅していく。」(ティム・オライリー)
■ネット上にいかにして<都市空間>をつくるのか
 西村氏のネットコミュニティの設計思想は、初めは本来自由に人々が集まって作られたウェブ上の「アソシエーション」が、時が経つにつれて排他的で閉鎖的な「コミュニティ」へと変質することを避ける、という点に主眼が置かれています。
■個人主義・集団主義ではなく信頼社会/安心社会(山岸俊男氏)
・信頼社会(米国)
 人的流動性の高い社会では、不確実な環境の中でも、よりよい交渉や協働のための相手を探すために、まずは見知らぬ他人の信頼度を高く設定しておいて、いざその相手が「信頼」にたる人物かどうかを、後から細かく判断・修正するほうが効率的。
・安心社会(日本)
 人間関係があまり流動しない状態では、自分が所属する集団に対する「内輪ひいき」をして、「内輪」を裏切らないでいることが、結果的には合理的になる。
■グーグルからの逃走を実現するアーキテクチャ
 ミクシィというSNSは、雑多で猥雑なウェブ空間から「隔絶」したアーキテクチャとして人々の目の前に登場したのです。
■アーキテクチャを通じた規制方法
 「盗撮はシャッター音が必ず鳴るので物理的に無理」
■ツイッターの時間的な特徴は「選択同期」
 
■ニコニコ動画は「疑似同期」
■セカンドライフは「真性同期」
■「真性同期型アーキテクチャ」<後の祭り>を不可避に生み出してしまうシステム
 「疑似同期型アーキテクチャ」<いつでも祭り中>の状態を作り出すことで、閑散化問題を回避するシステム
■ニコニコ動画は、ユーチューブよりも、もっと直接かつ強力に「繋がりの社会性」を実現するためのアーキテクチャとして生まれてきた
■ニコニコ動画特有のインターフェイスこそが、本来であれば<主観的>なものになりがちなコンテンツの評価基準を、<客観的>と呼べるレベルに引き上げる効果を発揮していたのではないか
■ケータイ小説のユーザー(著者&読者)たちは、ほとんど<客観的>と呼べるほどに明かなコンテンツの評価基準を共有していた。だからある一時期のケータイ小説作品は、よくいわれるように、どれをひもといても「恋空」のようなワンパターンな物語展開を見せていた。
■操作ログ的リアリズム
 ひたすらにケータイというメディアにどう接触し、操作し、判断し、選択したのかに関する「操作ログ」を描くものである
■フリードリヒ・A・フォン・ハイエクは再帰的リバタリアニズム
 機能的には、市場という「自律・分散型」の情報通信システムの性能を評価しつつ、歴史的には、その「偶然性=自然成長性」としての側面を認める
■どれだけ匿名性がある種の理念から見て規範的に「悪」とみなしうるとしても、多くの日本のネットユーザーにとって、匿名的身分が「合理的」なものとして選択されている以上、それを頭ごなしに否定する主張は、端的に無意味なのである(西村博之氏)
■そもそも私たちは、米国的なインターネット社会のあり方を唯一普遍のものとみなす必要はない
■日本特殊の現象に見えた「繋がりの社会性」が、世界的に拡散しつつあるように見えてきます。
■私たちは、社会全体に浸透するに至ったアーキテクチャの設計と進化を通じて、日本社会のあり方そのものを書き換えていくことすら、不可能ではないはずです。

4757102453 アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか
濱野 智史
エヌティティ出版 2008-10-27

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“アーキテクチャの生態系 (濱野 智史)” への1件のフィードバック

  1. 『ARCHITECTURES アーキテクチャの生態系』:文脈から切り離された消費を後押しするアーキテクチャ

    昨年話題になった濱野氏の『アーキテクチャの生態系』ゅ

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