「ヒトデはクモよりなぜ強い」は、分散型組織の特徴や要素について具体的な事例を元に考察している本です。
koyhogeの小山さんに勧められて、昨年購入して読んでいたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
先日紹介した「ウィキノミクス」同様、この本で考察されているのも「フラット化する世界」ならではの新しい組織の可能性なのですが、個人的には分散型組織と集権型組織の対峙の事例としてアパッチ族とスペイン軍であったり、アルカイダとアメリカ合衆国であったりと、新旧まじえた考察がされているのが非常に興味深かったです。
当然、ナップスターやイーベイ、ウィキペディアなど、ネット企業の事例も多数出てきますので、インターネットを活用した分散的なアプローチで、巨大企業がひしめく市場にチャレンジしている企業にとっては、参考になる点が非常に多い本だと思います。
【読書メモ】
■分権についての重要な8つの法則
・分権型の組織が攻撃を受けると、それまで以上に開かれた状態になり、権限をそれまで以上に分散させる。
・ヒトデを見てもクモだと勘違いしやすい
・開かれた組織では情報が一カ所に集中せず、組織内のあらゆる場所に散らばっている
・開かれた組織は簡単に変化させることができる
・ヒトデたちには、誰も気づかないうちに、そっと背後から忍び寄る性質がある
・業界内で権力が分散すると、全体の利益が減少する
・開かれた組織に招かれた人たちは、自動的に、その組織の役に立つことをしたがる
・攻撃されると、集権型組織は権限をさらに集中させる傾向がある
■ヒトデとクモを見分ける方法
・誰かひとり、トップに責任者がいるか?
・本部があるか?
・頭を殴ったら死ぬか?
・明確な役割分担があるか?
・組織の一部を破壊したら、その組織が傷つくか?
・知識と権限が集中しているか?、分散しているか?
・組織には柔軟性があるか、それとも硬直しているか?
■信頼感とコミュニティ
クレイグズリストを使ってタダで箱を手に入れるということは、クレイグズリストというコミュニティにちょっとした借りができるようなものだ。
■開かれた組織では、最も重要なのはCEOではなく、組織のリーダーが、組織を構成するメンバーをどれだけ信頼し、その自主性に任せるかなのだ。
■分権型組織における5つの根本的要素
・サークル(ヒエラルキーのないグループ。自主性にゆだねられる)
・触媒(サークルを創設し、そのあとは身を引いて、表舞台から消えてしまう人物)
・イデオロギー(分権型の組織をまとめる接着剤の役割を果たす)
・既存のネットワーク(インターネットが、新しいヒトデの繁殖地)
・推進者(新しい概念を執拗なまでに推し進める)
■ヒトデによる侵略に対抗する具体的な戦略
・イデオロギーを変える
「どうせ人生に望みはないから、テロリストにでもなろう」というイデオロギーを「希望はある。自分の人生を良いものにできる」というイデオロギーに変えた(ケニアのジャミィ・ボラ)
・権限を中央に集めさせる(牛型アプローチ)
いったん財産を手にすると、それが牛だろうと本の印税だろうと、すぐに、利益を守るために集権的なシステムを求めるようになる。
・自らを分権型に変える(奴らに勝てないなら--奴らの仲間になれ)
■ハイブリッド型組織
・顧客経験価値を分散させた中央集権型企業(イーベイ、アマゾン、グーグル)
・中央集権型企業でありながら、ビジネスの一部に分権を取り入れている(GE、DFJ、トヨタ)
■肯定的な問いかけ(AI=アプリシエイティブ・インクワイアリー)
人々がお互いに意義のある質問をしあう、組織の権限を分散させるための手法
組織について自分がもつ夢を、どんなに実現不可能なものでも良いから話し合う。
■GMのような企業が伝統的な指揮管理型経営に何年もこだわっている間に、日本企業は経営の革新を進めていった。
「コミュニケーションが機能するためには、下から上に向かわなければならないことを教えた。そしてトップ・マネジメントとは1つの機能であり、1つの責務であって、地位や特権ではないことを教えた」(ピーター・ドラッカー)
■新しい世界のゲームのルール
・規模の不経済
・ネットワーク効果
・無秩序の力
・組織の端の知識
・誰もが貢献したがる
・ヒュドラの反撃に気をつけろ
・触媒が触発する
・価値こそが組織
・測定して、観察して、仕切る
・フラットにせよ--でないと負ける
ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ 糸井 恵 日経BP社 2007-08-30 by G-Tools |