日本サッカーが世界で勝てない本当の理由 (岡田康宏)

4839934452 「日本サッカーが世界で勝てない本当の理由」は、サッカー情報サイトサポティスタの運営をされている岡田康宏さんの書籍です。
 献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本で取り上げられているのはもちろんサッカーの話題であり、日本代表の話なのですが。
 不思議と、現在の日本社会の問題や、日本人の可能性について考えさせられる作りになっています。
 ちょっと普段と違う視点で日本について考えてみたい方にも参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■日本サッカーの力が急激に伸びた三つのポイント
・1960年のデットマール・クラマーの招聘
・1992年のハンス・オフトの日本代表監督就任
・1998年のフィリップ・トルシエの日本代表監督就任
■三つのポイントの共通点は、その時期に社会を巻き込んだビッグイベントがあったということ。(東京五輪、Jリーグ創設、自国でのW杯開催。)
■サッカーは「試合が終わったとき、相手より1点でも多く点を取っていた方が勝ち」というゲーム
 美しいパスサッカーを理想と考える人が多い日本のサッカー界では、点を取ることよりもパスを回すこと、勝負に勝つことよりキレイなサッカーをすることが優先されがちです。
■「(日本の選手は)コーチの手が入ると、当たり障りのないプレーをするようになる。シュートを打って失敗するとバツ。横パスならバツはつかない。日本の減点主義社会の延長線上にサッカーもある」(犬飼基昭)


■練習の中でトルシエは選手たちを厳しい口調で問い詰めます。一方で、カメラの前ではっきりとトルシエに批判的な言葉を口にする選手もいます。
 しかし、トルシエは彼らを信頼してピッチに送り出しますし、チームの雰囲気も悪くない。
 彼は、自身があえて挑発的に振る舞うことで選手たちに反発心を起こさせ、選手たちの自主性を引き出すことに成功しました。
■ワーワーサッカー
 中盤で相手選手に素早く寄せ常に複数の選手がボールを奪いに行く日本代表のスタイルが、ボールにワーワーと群がる子どもたちのサッカーと見た目が似ているところから命名されたもの
■個々の選手のやることが決まっていて、監督やコーチからのサイン通りにプレーすることが求められる野球と違い、サッカーはピッチの中での選択肢は無数にあり、個々の選手には、現状を分析し戦略的な判断をする能力と、個々の判断をチームとして共有するためのコミュニケーション能力が求められます。
 しかし、こうした自己判断能力やコミュニケーション能力と言うのは、スポーツの世界に限らず日本人が最も苦手とする分野です。
■52年にサンフランシスコ講和条約が発効するまで存続した文部省仮検定教科書には「国語」がなく、「言語」と「文学」という2つがありました。「言語」は今日でいうリテラシー教育。コミュニケーションの受発信能力を上げることを目標にしていました。「文学」は今日も続く日本の良き文学を教える鑑賞教育です。さて講和条約が発効して本検定教科書が出てみると「言語」が消えて「文学」だけ。しかも「国語」という名前になっていました。(宮台真司)
■諸説ある中で有力なのは、48年以降冷戦体制が深刻化して米国が日本を反共の防波堤にする方向に転換したので、日本人に思考能力が付きすぎては困ると思ったのではないかと。
■スポーツビジネスの発展を促す要素
・勝利
・普及
・市場
■一般的なファンが「観客」だとすれば、サポーターと言うのは「参加者」です。彼らは良くも悪くもクラブを「自分たちのもの」だと考えています。
■浦和がなぜこれだけ成功したのか
 川崎、千葉、柏などもそうですが、Jリーグがこういった「人はいるけれど物語がない郊外」を中心に、大きな支持を集めているのは偶然ではないでしょう。
■まず街を盛り上げることが第一で、極端なことを言えば、サッカーは単なる手段で、街が盛り上がればサッカーでなくても良かった(当時の鹿島のサポーターのリーダー)

4839934452 日本サッカーが世界で勝てない本当の理由 (マイコミ新書)
毎日コミュニケーションズ 2010-03-24

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