AR-拡張現実 (小林啓倫)

4839935645 「AR-拡張現実」は、タイトル通りARの基本や可能性について考察されている書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 セカイカメラが大きな注目を集めたこともあり、AR=セカイカメラと思っている人も結構いるかも知れませんが、この本を読むとARには他にも様々な可能性があり、すでに様々な取り組みが行われているのに気がつかされます。
 特に日本ならではのARへの取り組みの提言については、個人的にもうなずくところが多々ありました。
 ARというものが、分かったようでどうもよく分からないという方には、参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■ARとは
情報技術を使って、現実空間に何らかの情報を追加すること、あるいはそれによって情報が追加された(すなわち「拡張」された)現実空間
■ARの実現形式による分類
・マーカー型
 ARを実現するために特殊なマーカーを使用する形式
・マーカーレス型
 現実空間にある特定の図形や写真を認識して計算を行う
・位置情報型
 さまざまなセンサー類を用いることで端末の位置や傾きを確認できれば、それに応じたコンテンツを提供することが出来る
■欧米に比べウェブカメラの普及率が低く、ビデオチャットの文化も根付いていない日本では、海外のように爆発的にAR広告/プロモーションが流行するという状況にはなりにくいかもしれない


■エヴァの1ファンとしては物語の聖地でなければ意味がないという話になり、物語の中心となる「第3新東京市」にあるローソンを、ということでローソン箱根仙石原店が選ばれました。
■アイフォーン用アプリの怖さというのは、アプリが公開された後の修正に対し即座に対応できないという点です。
■人間は何千年もの間、物理性のあるコミュニケーションに慣れ親しみ、それを工夫しながら発展させてきた。ARの時代が訪れれば、再びその精神性が発揮される可能性も高いのではないだろうか。
■既に、AR空間を整備することで、現実空間の人の流れを意図的に変えようという試みが始まっている
■e空間事業者の三層構造
・アプリ・サービス事業者:利用者のプライバシー情報は個別の管理下におく
・e空間デベロッパー:地域の人的インフラとアプリ・サービス事業者、e空間プラットフォーマーを媒介する
・e空間プラットフォーマー:地域情報やセンサデータ、統計処理されたプライバシー情報などまたがって配信する
■広告/プロモーション領域におけるAR活用例を探していると、見つかるのはたいてい海外での事例である。しかしARが空間のあり方を変えるという可能性について考えてみたとき、参考になるのは日本の事例であることが多い。

4839935645 AR-拡張現実 (マイコミ新書)
小林 啓倫
毎日コミュニケーションズ 2010-07-24

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