「マーケティングはつまらない?」は、日経ネットマーケティングの「マーケティング・ゼロ」の連載もされている関橋英作さんが書かれた書籍です。
出版記念パーティーで本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本は、冒頭に書いたマーケティング・ゼロのコラムの記事を再編集、加筆したものですが、関橋さんならではの視点から、日本ならではのマーケティングということについて考察されていますので、普段米国を中心としたマーケティング事例に物足りなさを感じている人には刺激になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■もともと、日本人はアダプテーションが得意はなず。
外来のものを取り入れて、あたかも自分たちの文化のように形を変えてしまう術。文字や宗教がそうですし、能・狂言などの芸能や建築も。日本独自の文化と思い込んでいるものはほとんど大陸から渡ってきたものです。
■欧米型のマーケティングでは、勝ち組負け組に二分割。
日本人には対称性のある二元論が身に付いているのです。
勝ちの中にも負けはあり、負けの中にも勝ちはある。
■カンヌ国際広告祭の変化
・フィルム部門が何と言っても注目の的。
・2007年にユニリーバの「ダブ」がフィルム部門のグランプリを受賞
(ダヴのフィルムはWebサイトで流されましたが、テレビCMとして最低限オンエア)
・2008年は、フィルム部門で2つの作品がグランプリを受賞。テレビCMとWeb、それぞれから選ばれる
・2009年は「フィルムは広告の最高峰ではなくなった。いろいろある手法の1つでしかない」
■ブランディングを一言で言うと「好きになってもらうこと」。それ以上のことはありません。
■イチロー選手の変化
孤高の天才は、カッコいいけれど、いつまでも孤高のまま。イチロー選手は、コミュニケーションの力を借りて「すごい」の質を変化させたのです。「すごい」を「大好きなすごい」に。
■マーケティングのコミュニケーションの基本
・Who will buy?
・What to do?
・How to do?
■日本の文字は中国からやってきましたが、中国人は日本の草書のような文字は書きません。伝統という枠組みがそれを許さないのです。
しかし、日本人はぞんざいなまでに書きなぐる。そこから、新しい文字芸能が生まれました。
■自分をプロテクトする外国人 vs 相手をおもんばかる日本人
彼らは自分を守るための最善の方法として、ディスカッション術を身に付ける。話が上手というより、相手に言い負かされないことを目的にしている。ディベートは、その最たるものです。
■それに引きかえ、日本人は親から、「他人に迷惑をかけてはいけない」「社会に迷惑をかけてはいけない」と教えられます。つまり、世間の目を非常に気にしている。こういう価値観が、日本人の議論の仕方を独特のものにしているのでしょう。
■地方の逆襲が日本をリセットする
個の力こそが「地方力」だということを理解でき、日本探しは地方を探る旅なのかもしれないということが分かるでしょう。
■小さなお店のブランディングにはビッグヒットはふさわしくありません。ただの流行で終わる可能性があるからです。
■もともとマーケティングとは、今生きている人が潜在的に欲しいと願っているものを具現化させて、世の中の役に立つこと。消費者に「うれしい!」「ありがとう!」と言ってもらえるものを提供すること。その行為を通して、メーカーと消費者がWinWinの関係になること。私はそう思っています。
■ノウハウ本がつくり出した「ニッポン非考地帯」
すぐに答えを欲しがる。手っ取り早い解決策を教えてくれとねだる。この現象こそ、クリエーティブとは正反対。ますますアイデアから遠ざかっていくのです。
恐ろしいことに、考えることをやめてしまった人たちが雨後のタケノコのように誕生してしまったのです。
マーケティングはつまらない? 関橋 英作 日経BP社 2010-06-24 by G-Tools |