「ネット「光の道」革命」は、Ustream配信で話題になった孫さんと佐々木俊尚さんの光の道対談を書籍化した本です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
Ustreamの対談が一冊の本になるほど内容が濃かったというのも、今から考えると面白いところですが、本の形式になると対談では聞き流していたことがしっかり読み込めるというのも新しい発見でした。
光の道自身の議論もそうですが、動画配信と書籍化の組み合わせについて考えたい方にも参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■正直なところ、マスコミの影響もかなり大きい。新聞やテレビは「ネットは誹謗中傷ばかり」「使えない人はどうするんだ」とITに対してどうでもいい批判を年がら年中繰り返している。
■なぜそんなことになっているのか。答えは明白だ。日本には既得権益がいっぱいあって、ITが普及するとそういう既得権益はみんな中抜きされてしまう。具体的に言えば、医師会とか教科書業界とかそういうあたりだ。もちろん、マスコミも。
■光の道という言葉は、民主党の原口総務大臣(当時)が2010年3月に打ち出した新たなビジョンの名称だ。ひとことでいえば、光の道というのは「ブロードバンドを2015年までに全世帯に普及させる」という構想だ。
■孫さんの訴えのポイントは、以下の5点だった
・ADSLのようなメタル回線ではなく、光ファイバーを全世帯に普及させる
・光ファイバーの料金を、現行のメタル回線と同じ月額1400円で。
・このプランは、いっさい税金を投入しないで実現できる。
・そのためにブロードバンド回線を維持する専門の会社を立ち上げる。
・光の道を実現することで電子カルテや電子教科書も普及し、これは日本の構造改革へとつながり、国際競争力を取り戻すことが可能になる。
■(佐々木俊尚さんの)反論のポイントは以下の三点。
・日本のブロードバンド基盤はとっくに世界最高水準に達している。今更ブロードバンド普及を政府のIT戦略の主軸に据えるべきではない。
・しかしブロードバンドの契約数は伸びず、利用・活用も進んでいない。これはブロードバンドの基盤が未整備だからじゃなくて、生活に直結した使いやすいサービスができあがっていないからだ。
・最優先すべきは、ネットが国民生活の社会基盤となっていくような政策を推進することだ。
■「すべての学生に電子教科書を無料で配っても、費用は3600億円。八ッ場ダム一個分にも及ばない。ダム一個なくても国は死なないけど、子供たちが高度な教育を受けられないとしたら、国の将来が危うい」(孫正義)
■「いま浮上しているのがソーシャルデバイド。日本人の多くが、人と人とがつながるインターネット最大のメリットを使いこなせていない。それをどうソーシャルの圏域に引き込むか、有効な手立てを考えるべきです。」(佐々木俊尚)
■ソフトバンクは”モンゴル帝国軍”だ
チンギス・ハンは「攻める時は自分で考えよ。それができない者は死ぬべし」と言った。どうすれば敵に打ち勝てるのかを、兵士一人ひとりが考えなければならないということだ。
■ガラパゴスだったら、まだその中で独自に進化しているだけいいけれど、いまの日本の閉塞的な状況を見ていると、いつか”ガダルカナル化”するんじゃないかと、つまり絶滅に向かっているような気がしてしようがない。
決闘 ネット「光の道」革命 (文春新書) 孫 正義vs佐々木 俊尚 文藝春秋 2010-10-19 by G-Tools |