大ヒットの方程式 (吉田就彦、石井晃 他)

4887598467 「大ヒットの方程式」は、ヒットコンテンツ研究所の社長をされている吉田就彦さんが書かれた書籍です。
 副題に「ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する」と書かれているのにもひかれて買ってみたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 
 この書籍で展開されているのは、ブログの書き込み数を分析することによって、映画のヒット状況がわかるという理論。単純にこうやって書くと伝わりづらいかもしれませんが、実際にこの書籍の中でデータとグラフで語られる具体的な理論はかなり衝撃的です。
 もちろん、この本で語られているほど綺麗にグラフに出てくるのは、映画のように公開数日に話題がピークになるタイプの製品やサービスに限られているかもしれませんが、このあたりは分析対象がブログからツイッターに推移することで適用範囲も広がりそうな予感がします。
 個人的にも、ソーシャルメディアの最大の価値は傾聴にあると考えてきましたが、その傾聴がヒット予測にもつながりうるというのがこの書籍が提示している可能性です。
 
 ソーシャルメディアの企業のマーケティングへの活用を考えている方にとっては、必読書の一つになりそうな本です。
【読書メモ】
■メディアの職場の3K 「カン」「経験」「根性」
■だんご3兄弟 ヒットのポイント
・イントラネットの存在 
 1日のうちに20件を超える情報がイントラネットを駆け巡りました。
・メディアの力
 NHKのコンテンツがすごい点は、すべての民放放送局が社会現象として扱うことに躊躇しないということ
・ネットを使ったクチコミの力
 だんご3兄弟の情報がネット上をかけめぐっていた割には、すべてが検索に引っかからないという情報の非対称性をロボット検索の存在の有無が生んでしまい、そのことがさらにまた情報の非対称性を助長
■正確に何日で減衰するかを測るには、その特定の話題が、そのときだけの話題でないといけない


■今日では人の噂、というか、ブログ書き込みは2日程度で減衰している
■人々の心に長く残る広告・宣伝を狙うなら、1つ1つは1日か2日で効果が消えてしまうので、時系列的にどのように広告・宣伝を続けていくかが宣伝戦略上重要ということになります。
■人々の購買意欲に影響を与える3つの要素
・広告・宣伝・報道の効果
・クチコミの効果(直接コミュニケーション)
・街中の噂(間接コミュニケーション)
■間接コミュニケーションの部分は、現実のヒット現象を説明するうえで、非常に大きな役割を演じています。 
 特に映画の超大ヒットなどを見ると、間接コミュニケーションが決定的な役割を果たしていて、場合によっては従来から「クチコミ」と言われている部分の効果はそれほど大きくない例もあります。
■裁判員について書かれたブログは、通知が届いた約34万人の0.3%
■大ヒットした映画の観客動員数の総数に対してその映画についてのブログ書き込み数の合計は、0.1%程度。
 映画や新製品の話題などなら、1,000人に1人書けば、多い方と考えれば良さそうです。
■公開後もそうですが、特に公開前でもGRPの値の時間的変化とブログ書き込み数は比例していませんから、広告を強く出せば出すほど消費者はそれに反応する、という単純なマーケティングの考え方が間違いであることは明らかです。(パイレーツ・カリビアンの事例)
■日本人が書くブログは直接的な感想や意見が本当に少ない。
 日本人に染み付いた性なのでしょうか、良い悪いをはっきりさせずに曖昧な表現が多いのが特徴です。
■「賛否の分かれる作品はヒットする」
 ・ヒットの結果として多くの人が観るので意見も賛否が分かれやすいのか
 ・そもそも賛否が分かれる作品のため自分の目で確かめたくて結果的にヒットに繋がるのか
■(主なタイトル25作品に関するブログの記事の)平均で73%が好意的な書き込みになっている。
■キーグラフ (東京大学の大澤幸生教授が開発したアルゴリズム)
 語句と語句のつながりを簡単に視覚化し、その全体的な構図から意見の概要や趣旨をあぶり出すことができます。
■デジタルインパクトの変遷とコミュニケーション革命
・アナログ時代
・1995年 ネット時代(WEB1.0)
・2005年 ブログ時代(WEB2.0)
・2011年 マスコミ再構築時代
・2013年 コミュマス時代
■これまでもクチコミは最大のマーケティング・ツールであり、いかにクチコミを起こすかがすべてのマーケティングの目的と言っても過言ではありません。
■その分かれ目に最大の力を発揮するのがCGMなのです。CGMはそのクチコミそのものであり、その波及効果をダイレクトに把握することができるものが、インターネットによるクチコミを可視化できるブログなのです。
■ヒットの数理モデル分析、ヒットの話題共鳴分析のマーケティング利用法
・ヒットの数理モデル分析で類似成功ケースを分析
・成功させたいイベントをシミュレーション
・日々の変化を追って傾向をつかむ
・マーケティング施策の効果検証
・マーケティング施策を柔軟に投入
・話題を切らさないマーケティング施策が重要
・結果をノウハウ化
■アメリカのある映画の事例でも、Twitter上のツイートの内容により公開の次の日の観客動員が40%にまで異例に落ち込むという非常に速いクチコミスピードの事例がありました。
■それらの現象は、単にマーケティングの問題ではなく、まさに中身=コンテンツの問題なのです。

4887598467 大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する
吉田 就彦 石井 晃 新垣 久史
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2010-09-15

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