> 「デジタルネイティブが世界を変える」は、「ウィキノミクス」の著者でもあるドン・タプスコット氏が書かれた書籍です。
昨年買って読んでいたのですが読書メモを書いてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本で描かれているのは、デジタルネイティブと呼ばれるネット世代の可能性と未来です。
日本において同じようなことが議論されないのは、残念ながら日本では少子高齢化でいわゆるネット世代のボリュームが少ない上に、PCを飛び越してケータイ世代になってしまい、この本で描かれているような形での変化をたどっていないことも大きそうですが。
ネット世代が中心になった未来について考察してみたい方には、参考になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■既得権者は変化を拒絶する
ニュートン物理学の擁護者が、アインシュタインの一般相対性原理に反論したように、従来型メディアのリーダーは、新しいメディアに対して何らかの懐疑心を示すことが通常だ。例えば、過去に映画や印刷メディアはテレビに対して明らかな不快感を示していた。
■四つの世代(アメリカ)
・ベビーブーム世代(1946年~1964年生まれ)
・ジェネレーションX(1965年~1976年生まれ)
・ネット世代(1977年~1997年生まれ) ジェネレーションY、ミレニアル世代
・次世代(1998年以降生まれ) ジェネレーションZ
■ネット世代の八つの行動基準
・何をする場合でも自由を好む。
・カスタマイズ、パーソナライズを好む
・情報の調査に長けている
・商品を購入したり、就職先を決めたりする際に、企業の誠実性とオープン性を求める
・職場、学校、そして、社会生活において、娯楽を求める
・コラボレーションとリレーションの世代である
・スピードを求めている
・イノベーターである
■企業の62%が応募者のソーシャルネットワークへの投稿をチェックすると述べており、四分の一の企業がその結果として候補者を却下したと述べている。(英国の調査)
■ゲームをすることで、視界中でより多くのものを認識でき、視覚的情報の処理速度を向上できる(ショーン・グリーン、ダフネ・バベリエ教授)
■対話型のデジタル環境で暮らすことで、テレビをただ見ているだけの人よりも優秀な頭脳が得られるという確定的結論がいずれは出るだろう
■「我々の学習モデルは”グーテンベルク以前”です。印刷テクノロジーすら学習パラダイムに取り込まれていないのです。」(ジェフリー・バニスター)
■教育者は、教師がすべての学生に対して同じ講義をするという旧来のシステムを捨てなければならない。
・教師は単に講義を行うのではなく、教壇から降りて、学生の声を聞き、対話しなければならない。
・学生が、教師が提供する情報を記憶するだけではなく、自分自身で情報を発見し、発見と批判的思考のプロセスを学べるようにしなければならない
・学生たちと学校内外の人々とのコラボレーションを推進しなければならない。
・教育のスタイルを個々の学生のスタイルに合わせて、カスタマイズしなければならない。
■ネット世代は「マーケティングの四つのP」を陳腐化させている
■マーケティングのABCDEルール
・好きな場所(Anyplace)
・ブランド(Brand)
・コミュニケーション(Communication)
・発見(Discovery)
・体験(Experience)
■Nフルエンスネットワーク
ネットワークでインフルエンスを与える今日のコミュニケーションネットワーク
■ブランドを進める可能性が7ポイント上がるごとに、成長が1%増加する。
悪いクチコミ情報を2ポイント下げることでも、同じ1%の成長が得られる。
(ポール・マースデン教授)
■コンシューマー2.0
・顧客を指図できると考えてはならない。顧客を自社に積極的に関与させよう。
・製品やサービスを作り出すと考えてはいけない。顧客体験を作り出すと考えるべきだ。・放送メディアの広告費を大幅に削減しよう。
・Nフルエンスネットワークに参入する戦略を立案しよう。
・自社のブランドを再考せよ。
・誠実性の要素を企業DNAとマーケティングキャンペーンに組み込もう。
・マーケティングキャンペーンの中心にネット世代を置こう。
■ベビーブーム世代:家の中では支配され、家の外では自由
ネット世代:家の外の自由はなくなった
■ヘリコプターペアレント
まるでホバリングするヘリコプターのように成人したはずの子供の上空にとどまり、教師や雇用主に干渉してくるベビーブーム世代
■子供たちとの安全に関するルール
・子供たちはインターネット上の不適切な場所に行ってはいけない。
・そのかわりに親は子供たちの仮想世界へのアクセスを制限したりしない
■「自分の子供が勝手に親のクレジットカードを使って金を盗んでしまうなら、それ自体が大きな問題です。解決策はソフトではないでしょう。」
■ハビタットジャム
カナダ政府はIBMと組み、都市の環境対策をテーマに三日間のオンライン討論を実施した。この討論には158カ国から3万9千名が参加した。
■オンラインでのいじめ行為は永久に証拠が残る。そして、その証拠は検索可能だ。
オンラインでいじめを行っても逃げ通すことがきわめて困難になっている。
■年長の世代にとって残された大きな疑問は、自分たちがネット世代と友好的に権力を共有できるのか、それとも、新世代が旧世代から権力を奪い取ることになるのかという点である。
■おそらく日本における唯一の相違点は、北米のネット世代が人口統計的に最多数を占める年齢層になっており、消費市場や有権者の中で大きな勢力となりつつあるのに対して、少子高齢化が進む日本ではそのような状況になっていないという点だろう。
デジタルネイティブが世界を変える ドン・タプスコット 栗原 潔 翔泳社 2009-05-14 by G-Tools |