「教えて!カンヌ国際広告祭」は、カンヌ国際広告際の日本代表審査員も務めたことのある佐藤達郎さんがカンヌ国際広告祭について考察されている書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
ちょうど先日カンヌ国際広告祭のタイトルからついに「広告」が外れるというニュースがありましたが、この本ではカンヌ国際広告祭の本質や裏側が赤裸々に描かれており、カンヌがどのようなものを目指しているイベントなのかが良く分かります。
広告の未来に興味が有る方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■カンヌのグランプリ受賞作品は、その先見性ゆえに、批判にさらされることも多い。しかし、数年もすれば、グランプリ受賞作品の持つ方向へ、広告界は確実に動いていく。
■1本見終わるたびに3秒で採点、遅れるとVote Please
■「グランプリは、世界のクリエイターへのメッセージになるものだと思う。だから、何らかの意味で新しい方向性を示すものであるべきだ。」
■シンプル・メッセージ&リッチ・コンテンツの法則
この時代に本当に効率的にブランドのコミュニケーションを行うためには、メッセージはシンプルに徹し、その伝え方には「これでもか」と工夫を凝らすこと。
■「ナニコレ?のちナルホド!」これこそが、欧米式テレビCMの基本とも言える。
■名だたるブランドは、機能的差別化ポイントを伝える”小さな差別化”ではなく、考え方や態度を表明してパーソナリティを確立し、ファンを増やそうとする”大きな差別化”に力を入れている
■カンヌに触れることで、興味は急速にデジタルやクロスメディアへとシフトした。
カンヌに触れると、広告人は、もうトラディショナルではいられなくなる。
■ブランデッド・コンテンツ
その表現行為自体が、コンテンツとしての魅力を持ち、なおかつブランドのメッセージをドライブする役割を果たしているもの
今までの広告クリエイティブの「生活者にいかに効果的にメッセージを”伝えるか”」という視点自体も、問い直される必要がある。
■ブランデッド・コンテンツでは「メッセージが明示的に伝わらない=広告らしくない」ことが、プラスのキーワードとなる
■広告は告白型から、関係構築型へ
■市場環境の変化
・現代はどの商品もあまり違わないと人々が思っている時代
・機能の複雑化
・これは便利!と思うポイントが人によって違ってきている
(ベネフィットの細分化)
■サーチする生活者たちにBRAND WILLを見つけてもらう
■非広告型広告(広告というカタチを辞めた広告たち)
「広告らしい形をしていないこと」こそが、いまや積極的な意味を持つのではないか
■「人々は、広告主が製品について、うるさくしつこく説明することに、ウンザリしている。彼らは、エンタテインされたいんだ」(キャドバリー・デイリーミルクチョコレート 戦略ディレクターのグリーン)
■非広告型広告のポイント
・従来の広告らしくないこと=非広告型
・意図が簡単にはわからないこと
・わざと隙をつくること
■非広告型広告の類型
・第1類型 オンエアできるという意味での広告としての外形は維持しつつ、表現方法をできうる限り”従来型”から遠く話す方法 (キャドバリーのゴリラ)
・第2類型 バイラル・フィルム型、マスメディアのオンエアはしない(マーク・エコー Still Free)
・第3類型 セル型、(バーガーキング 自らの広告をキャンペーンに起用している王様のキャラクターを使ったゲームを開発)
・第4類型 ブランデッド・ユーティリティ型 対象となる商品のもともとの機能を超えて、広告車が必要とするものを提供していく(ナイキプラス)
・第5類型 公共型 (タップ・ウォーター)
教えて! カンヌ国際広告祭 広告というカタチを辞めた広告たち (アスキー新書) 佐藤達郎 アスキー・メディアワークス 2010-11-09 by G-Tools |