ソーシャル・ネット経済圏 を読むと、日本のソーシャルメディア事業者が実はそれぞれ違うところを目指しているのが良くわかるかも。

4822248402 「ソーシャル・ネット経済圏」は、日経ビジネスと日経デジタルマーケティングの方々が、日本のソーシャルメディア業界について分析している書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、日経ビジネスと日経デジタルマーケティングという、プロの記者や編集者の方々が揃っている媒体ならではの視点で、主要なソーシャルメディア事業者の方々のインタビューや業界考察がまとめられています。
 特に、さすが日経BPによる取材というべきそうそうたる面々が並ぶインタビューでは、個別の事業者の方々のビジョンが実は結構異なっていることが見えてきますので、ソーシャルメディア業界の未来が気になる方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■「ミクシィの利用者は会社や大学などで現実につながっている人が多い。そうしたソーシャルグラフの価値を最大限に引き出すことが、これからの経営目標だ」(ミクシィ笠原社長)
■「ミクシィよりもソーシャル・ゲームのSNSの方が、会員同士の交流は圧倒的に活発。バーチャルの面が強かろうと、マーケティングの効果は大きい」(ある企業の担当者)
■グルーポン
 以前から共同購入によって価格を割り引くサービスは存在した。ただ、募集期間が1~2週間と長く、割引率もさほど高くなかったことから市場は広がらずじまい。その限界を突き破ったのが、圧倒的な”クチコミ増幅装置”ツイッターやフェイスブックなどソーシャルメディアの台頭である


■HotPepperの市場を食われる形になったリクルートは、ポンパレをオープンして自らこの市場に参戦。事業収入である店舗からの手数料率をゼロにする大盤振る舞いで、既存顧客のつなぎとめに躍起になっている。
■アップルはiPhoneを作る際に、日本市場を調査しているし、米デルは薄型パソコンを開発する際には、ソニーのそれを参考にしている。日本経済の最悪期は脱しました。機動性の高いネット業界は、経済成長の牽引役になる可能性があります。自らの強みを冷静に分析して、今こそ世界に打って出るべきです。(夏野剛氏)
■うちはそんな”超レッドオーシャン”には行きたくありません。米国の後追いをやっていても仕方がないし、技術ベースのサービスでなければ強くなれない。
 アメーバピコなどをやりながら気づいたのは、コンテンツや技術で勝負するようなサービスをつくっていかないと、大企業から芸能人から外国人まで、誰にでも使ってもらえるようなサービスにはならない。ツイッターのような広がりはない、ということです。(サイバーエージェント藤田氏)
■まず、はっきりさせたいのは僕らはコミュニケーションを加速させるために「ゲーム」を選んでいるだけだということです。いわゆるゲームが大好きという人たちを対象にしているわけではありません。(グリー田中氏)
■今後競争はますます厳しくなる。だからこそ今ゲームに集中する必要がある。
 1つはやはりモバイルへの対応だ。これからのソーシャル・ゲームの主戦場はスマートフォンになる時代が来る。
 もう1つは、モバイル対応を成功させるためにも、ゲーム開発ベンチャーを積極的に支援していくことだ。(DeNA南場氏)
■私たちは今後、こうしたSEOに加えてソーシャルグラフ最適化、SGOが重要になってくると思っています。
 SEOは比較的、テクニックに依存する部分もありました。ただ、SGOの時代に情報の流通の担い手は「人」です。ホンモノ、そして周囲に伝えたくなる情報をターゲットとなる人に提供していく必要があります。(ミクシィ笠原氏)
■実際の知り合いではない「バーチャルグラフ」は従来のコミュニティと大差ありません。新しくないんです。
 ただ、現実世界での関係を中心にソーシャルグラフを作った方が、コミュニケーションの汎用性は高くなります。(ミクシィ笠原氏)
■一番最初は2007年11月にネット上に作った「ポイント」というサービスが始まりです。これはある種、社会貢献的な取り組みで、寄附行為や何かのアクションなど、一定の人数が集まって、非営利的な取り組みを進めるプラットフォームでした。
 このサービスの中に、同士を集めてグループ購入する機能があり、それがシカゴで大ヒットしたというのがグルーポン誕生のきっかけになりました。(グルーポン アンドリュー・メイソン氏)
■客は、普通に日常にあるものじゃなくて、新しい体験を求めているんだと学びましたね。グルーポンサービスの力は、良いサービスを提供していても、埋れているものに対して、有効なプロモーション手段になるということです、情報を掘り起こせるんです。
■うちは従業員の半分の約1000人が日々、面白い案件の発掘に動いている。持ち込みにはほとんど頼りません。持ち込まれる案件8つのうち7つは断っている状態で、高いレベルを保つよう努力しています。
 今、米国でグルーポンの競合がたくさん出てきている理由の1つには、グルーポンに掲載してもらえない店舗が他社に殺到しているということがあります。今はグルーポンは3ヶ月待ちの状態になっている。
■日本は携帯電話でのソーシャル・ゲームのリーダー的な存在だ。海外では携帯電話でのソーシャル・ゲームの市場は存在しない。(プレイフィッシュ クリスチャン・セガストラーレ氏)
■ソーシャル・ゲームはゲームそのものを売っているわけではない。ユーザーに対し、経験を提供するものだ。
■ネット上で匿名と実名が共存している日本は非常にユニークな市場と言える。
 日本人はほかの国よりバーチャルなものを楽しむ国民性がある。本音と建前があって建前の比率が高いからだ。そこの市場性はいろんな形で残り続けるのではと見ている。(NHN Japan 森川氏)

4822248402 ソーシャル・ネット経済圏
日経ビジネス 日経デジタルマーケティング
日経BP社 2011-01-25

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