次世代マーケティングリサーチ(萩原雅之) を読むと、ソーシャルメディアの普及によってリサーチの定義も大きな変化を求められているのが分ります。

4797361913 「次世代マーケティングリサーチ」は、SurveyMLの管理人としても知られるマーケティングリサーチャーの萩原雅之さんの書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、マーケティングリサーチを長らく見つめてこられた萩原さんならではの視点で、副題にあるように「Asking(質問する)」から「Listening(傾聴する)」に大きく変わろうとしているリサーチのあり方について考察されています。
 Listen(傾聴)というフレーズは、「グランズウェル (シャーリーン・リー)」の登場と共に日本でも徐々に注目されるようになってきましたが、実はこのキーワードにこそソーシャルメディアならではの最大の可能性が眠っているように感じます。
 
 当然、広告やマーケティングもサポートもソーシャルメディアのListen(傾聴)によって変化するわけですが、その中でも、リサーチという業界は、まさにListenが可能になったことによって直接的に変化を求められている業界と言っても良いのかもしれません。
 リサーチという行為が、特殊なリサーチ業界の人ためだけの仕事だと思っている方には、ヒントになる点があると思うので、是非読んで欲しい一冊です。
【読書メモ】
■戦争型競争から恋愛型競争へ
 マーケット全体における「市場シェア」よりも消費者個人個人の「心理シェア」を高めることが必要
■消費者インサイトの定義(P&Gジャパン桐山氏)
・データでは見えてこない真実
・心の奥深くに存在する感情やニーズ
・ビジネスを成長させる可能性を秘めているもの


■グランズウェル
「人々がテクノロジーを使って自分が必要としているものを企業などの伝統的組織ではなく、お互いから調達するようになっている社会現象」
■リサーチャーのステップ
・蓄積されたデータから仮説を立て検証する
・ひとりの消費者をリアルに思い浮かべる
・同じ対象を継続的に追いかけて変化を知る
・ストリーミングや動画のようにデータを扱う
・事実で語らせる実験的な手法を取り入れる
・つながりをデータの解釈に活用する
■オンラインリサーチ・コミュニティのかたち
・企業名で運用する誰でも参加できるコミュニティ (Branded×Open)
・企業名で運用する招待者のみのコミュニティ (Branded×Closed)
・複数企業が利用する招待型コミュニティ (Independent×Closed)
・複数企業が利用する自由参加型コミュニティ (Independent×Open)
■WE Research
・みんなで収集する (Mass Anthropology)
・みんなで観察する (Mass Ethnography)
・みんなで予測する (Mass Prediction)
・みんなで創作する (Mass Creativity)
■ソーシャルメディアリスニングをすべき6つの理由
・ブランドポジショニングの把握
 →ブランドが象徴しているものを知る
・ブランドモニタリング
 →バズの変化を捉える
・リスニング&アスキング
 →コストを抑えながらリサーチの精度を高める
・インフルエンサーの特定
 →インフルエンサーを特定する
・スレットトラッキング
 →広報上の危機に対応する
・バズからのアイディア抽出
 →新しい製品やマーケティングのアイディアを得る
■リスニングにおける基本的な考え方
・アカウント情報の扱い
・販売活動との分離
・対等性への配慮
■Google Lab Public Data Explorer
 データを動的なグラフィックにできるソフトウェア

4797361913 次世代マーケティングリサーチ
萩原 雅之
ソフトバンククリエイティブ 2011-03-03

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