記憶する道具 (美崎 薫)

4757103050 「記憶する道具」は、ライフログの第一人者と言うべき美崎 薫さんの書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 ライフログというキーワードは、最近よく使われることが増えているように思いますが、一方でその定義は曖昧なまま明確なイメージを持っている人は少ないように思います。
 この書籍では、自らの生活を淡々とライフログし続けている美崎さんならではの視点で、ライフログや記憶ということについて深く考察されていますので、ライフログの可能性を深く考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■なぜ「ライフログは○×です」といわないかといえば、ライフログにはいまのところ確たる定義はないし、定義によって限定されるものでもないからだ
■わたしは、コンピュータのストレージは、過去数百年にわたって紙が占めていた位置を超えて、より人間の記憶に近いツールになっていくだろうと考えている。


■「出てくる体験」
 追体験による発見の体験は、「セレンディピティ」とは違う
 「セレンディピティ」はめったに起きない特別な幸運のなにかだが、この体験はひんぱんに起きる
■死蔵するのはツールのデザインがだめだからだ。
 たくさんのものをたくさんに見せるようなツールではだめで、うまくシンプルに見せる必要があるのである。そこがツールのデザインである。
■ハイパーテキスト日記とカレンダー型写真情報提示システムで、毎日思いついたことをすべて叙述してから寝る→翌朝発想/啓示にあふれて目覚める
■記憶とは解釈のことである
 わたしの定義する記憶とは、体験あるいは記録を解釈する解釈の方法である。 
 通常記憶とは自分の内部にあるものを意味するようだが、記録と覚えていたものという意味での記憶との差が小さくなる。
 
■「記憶にございません」という言い回しも、言葉としての「記憶」のイメージを悪くしている。「記憶にございません」ってあなた。いずれ未来のデジタル記録の世界にそんなことありえないでしょう。
■日付を追って見ることのできる写真を中心とした全書類の一覧はフラッシュバックのきっかけとなる。
 写真によって得ることのできる鮮明な記憶はフラッシュバックのきっかけとなり、人為的に鮮烈な追体験を可能にする。
■人とコンピュータをわかつもの
・時間軸:時間の経過的には、わたしと、コンピュータの支援を受けたわたし、肉体を失って残っているコンピュータの順番に存在は変化する。
・空間軸:わたしを評価している第一人称はわたし自身である。第三人称が知人など。

4757103050 記憶する道具 -生活/人生ナビゲータとしてのライフログ・マシンの誕生
美崎 薫
エヌティティ出版 2011-04-12

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