スターバックス再生物語(ハワード・シュルツ) に学ぶ、道を見失った一流企業が輝きを取り戻すために必要なこと

4198631506 「スターバックス再生物語」は、スターバックスのCEOであるハワード・シュルツが書いた経営改革本です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本は、スターバックスの創業期の成功話を描いたものではなく、スターバックスが経営危機に陥り、その後いかに再生していったか、を描いている本です。
 正直、恥ずかしながらこの本を読むまで、スターバックスがリーマンショックの前後に経営的な危機にさらされていたなんてことは、全く知りませんでした。
 おそらく日本人の多くが知らない出来事なのではないでしょうか?
 ただ、この本を読むと、実はスターバックスが2007年~2008年にかけて、大きな経営危機に直面し、かなり大規模なリストラや改革を行い、現在の「スターバックス」になったことが良くわかります。
 
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 スターバックスと言えば、Facebookページのファンが2300万人を超えるなど、ソーシャルメディアを積極的に活用していることでも知られていますが、実はそういったスタイルに至ったのは、この経営危機が背景にあった、というのは私もこの本を読んで始めて知りました。
 その経営危機の最大の原因と考えられるのが、行きすぎた株主重視による短期的経営です。
 この本では、そんなスターバックスが、創業者であるハワード・シュルツのもと、どのようにもともとのスターバックスの理念を取り戻し、新しいスターバックスとして飛躍していくかを描いています。
 丁度この本を読んでいる際に、丸の内ブランドフォーラムで、日本企業が株主重視やグローバル会計の表面だけを真似してしまい、もともとの日本企業の強みを見失ってしまっているのではないかという議論をしたのですが、このスターバックスの話は、まさにそんな考えを裏付けてくれるケースと言えるような気がします。
 この本はスターバックスに興味がある人だけでなく、企業の理念やビジョンがどうあるべきか、成功していた企業が直面する成長の壁をどう乗り越えていくべきか、を悩んでいる方に非常に参考になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■2007年、スターバックスは道を見失った。成長に固執するあまり業務から目をそらし、中核となるものから離れてしまったのだ。
■2008年2月のある火曜日の午後、米国スターバックスは、国内にある7100店舗全部を一時的に閉鎖した。
■スターバックスは第三の場(サードプレイス) 
 自宅が人と人がふれあう第一の場で、職場を第二の場とするならば、カフェなどいわば公共の場所を、わたしは第三の場と呼んでいる。


■スターバックスのパートナーの務めは、お客さまの期待を超えるものを提供すること
■スターバックスは3つのグループによって構成されている
 パートナー、お客さま、そして株主だ。
 長期にわたって株主のための価値を確立するためには、まず最初に、パートナーとお客さまのための価値を創出しなければならない。
■復帰後、成功を収めたCEOの3つの資質
・現職のCEOの評価を損なうつもりはなく、不本意ながら復帰していること
・自分自身の評判を危うくしても、満たされないエゴの欲求を実現しようとしないこと
・前回築き上げたものが信仰の対象ではないのを理解していること
■世界は両手を泥だらけにするのを恐れない人のためのものです
■スターバックスの7つの大きな取組み
・コーヒーの権威としての地位を揺るぎないものにする
・パートナーとの絆を確立し、彼らに刺激を与える
・お客さまとの心の絆を取り戻す
・海外市場でのシェアを拡大する
・コーヒー豆の論理的調達や環境保全活動に率先して取り組む
・スターバックスに相応しい創造性に富んだ成長を達成するための基盤をつくる
・持続可能な経済モデルを提供する
■イノベーションとは、商品を見直すことではなく、関係を見直すことだと私は思っていた。だから、デルはアイデアストームによってお客さまの声を取り入れ、商品やサービスを改善している、というマイケルの言葉にうなずいた。
■スターバックスのデジタルチーム
 会社中から50人のパートナーをモデレーターとして選び、一週間に8時間ずつ、コーヒー、フード、会話といった得意分野を生かして、投稿に対応してもらう。
■お客さまはスターバックスを見捨てたのではなく、来る回数を減らしたのだ。
■スターバックスアイデア・ドットコム
 24時間のうちに、7000のアイデアが書き込まれた。
 公開から1週間で、10万人が投票し、2ヶ月で4万1000件のアイデアが寄せられた。
■スターバックスの店舗には、それぞれ指紋とも言える特徴がある
 カウンターのこちら側と向こう側、つまり、店に来るお客さまと店で働くパートナーが違うのである。
■わたしたちが目指したのはクールであることではない。絆をつくることだ。
■7月17日に閉鎖するすべての店舗を公表した。
 すると、皮肉なことに、予想外の事態が起こった。スターバックスは金のかかる贅沢だという世間の論調が変わり、お客さまや地域の人々が”わたしたちのスターバックスを救って欲しい”と訴えるようになったのである。
■スターバックスの大統領選CM
 たった1度だけ流した60秒のCMを、デジタルおよびソーシャルメディアの活動を利用して増幅させる。
 YouTubeでは41万9000回再生(選挙の日に4番目に多く見られた動画に)
 フェイスブックでは40万5000人が行くか多分行くをクリック
 ツイッターでは8秒間に1回、スターバックスのことがつぶやかれた
 7000万回のインプレッションをえた。
■ブランドスパークス
 利己的な売り込みをせず、文化や人道的な問題に絡めることができる機会を活用し、巧みで、意表をつくマーケティング手法
■最良のイノベーションは、存在することさえ認識する前からニーズを感じ取り、満たし、新しい考え方をつくること
■優れたリーダーには2つの関連する要素がある
・自分の組織が正しいことを目指しているという揺るぎなき自信
・人々を率いる能力
■イギリスでのスターバックス騒動で学んだこと
・二年前にリークされたメモと同じように、デジタル化時代には、情報は瞬時に広がり、制御できなくなる
・スターバックスは、消費者ブランドとして良くも悪くも、人々が語り、意見を聞きたい対象なのだということ
■わたしたちは伝統的な店を誇りに思っているし、長い間その伝統を守り続けてきた。しかし、そのためには常に”新鮮”であることを求められるのを忘れてはならない。(アルド・ロレンツィ)
■私は店員がお客さまのために体験と専門技術を捧げれば、店は存在する価値があると信じる。仕事に対する情熱を伝えることだ。(アルド・ロレンツィ)
■進退きわまって四方八方的だらけとなり、もう一刻も持ちこたえられないという気持ちになってからも、決してそこであきらめてはいけない。情勢が一変するのは、まさにそれからなのだ。
■スターバックスのユニークな成長モデル
・対面販売やウェブサイトを通してお客さまとの直接的で豊かな絆を築く
 ↓
・食料品店など商品を広く入手できるようにする
 ↓
・米国の3000の食料品店とのライセンス契約
 ↓
・世界に広がるスターバックスの店舗網

4198631506 スターバックス再生物語 つながりを育む経営
ハワード・シュルツ ジョアンヌ・ゴードン 月沢 李歌子
徳間書店 2011-04-19

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