「ソーシャルシフト」は、タイトル通りソーシャルメディアによって引き起こされるパラダイムシフトについて書かれた書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本では、斉藤さんならではの視点で米国や日本の事例を元に、ソーシャルメディアによる変化を考察されている上、日本の代表的なソーシャルメディア担当者のインタビューもありますので、ソーシャルメディアがもたらす変化について未来を見据えて考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■ソーシャルメディアは、情報洪水の中から人々が「知っておくべき情報」を浮かび上がらせるフィルターの役目をしているわけだ。
■九電やらせメール事件
生放送の前日6月25日、ソーシャルメディアはこの問題を見つけ出し、知る人ぞ知る情報として拡散していたのだ。元となったのはブログ記事による告発だ。
■United Breaks Guitars
ムービーはたちどころに視聴者の共感を得て1000万回以上も再生された。そして彼は有名ミュージシャンとなる。一方でユナイテッド航空の株式は、動画投稿後の3週間で10%も急落。
■製品関与マップ
1.高関与・感覚的
・高級嗜好品
・デザイン・ファッション性が重視される商品
2.低関与・感覚的
・コモディティ商品
・普段から気軽に利用する食品飲料など
3.高関与・論理的
・家電、精密機器
・生命、財産に関わる商品
4.低関与、論理的
・効用が重視される商品
■Who Loves a Honda
・着火装置はテレビCM
・CM時点では数百人にすぎなかった登録者が、番組が終わった頃には5万人に
・アンカー走者のFacebookアプリが1週間もかからず100万人まで集客
・参加者は500万人を超え、専用自社サイトも構築
■P&Gの自社コミュニティ
・Being Girl:少女を対象としたコミュニティで21カ国展開。彼女たちの生の会話をマイニング分析し、その深層心理を探求する。
・Pampers:幼児を持つ母親を対象としたコミュニティ。幼児から子育てに必要な情報や交流の場を提供。商品購入も可能。
・VocalPoint:30~49歳の母親層60万人コミュニティ。サンプル配布、新製品の事前テスト、クチコミ促進などに活用。
■利用者のソーシャルメディア発信を促進する仕組み作り
・コンテスト型
・共同購入型
・マーケットプレイス型
・セルフブランディング型
■ローソン内部において重要視している指標
・自社サイトへの流入数:バナー広告価値に換算すると4億円相当
・クーポン発行による店舗への来店数:ソーシャルメディアクーポンによる来店数は80万人。クーポン獲得者の60%強が実際に商品を引き換えている。チラシ配布に比較すると約1.5億円相当。
■末広氏のネガティブな発言へのアクティブサポート
・その発言をしている人のタイムラインを見て、たまたまネガティブな発言をしたのか、根っからネガティブな人なのかを確認
・たまたまネガティブな人には非公式リツイートで返信
・ネガティブな方には、メンションで返信。あまりにひどい場合は返信しない場合も。
■ソーシャルメディアというある種流行のテクノロジーに過剰な期待や依存をするべきではない。ソーシャルメディアではなく、その向こう側にいる生活者の声にフォーカスするべきだと口をそろえる。
■ブランドの哲学の構造化
・ミッション:そのブランドが何のために存在するのか「そのブランドの存在意義」であり、企業の持続可能性を決定づけるもの
・ビジョン:未来を作り出すもので、「企業にとって望ましい未来像」を描き出したもの
・コアバリュー:企業にとっての核心的な価値、「その企業は何を大切にしているか」をあらわすもの
■ソーシャルシフトの6つのステップ
・プロジェクトのコアをかたちづくる
・ブランドコンセプトを練り上げる
・すべての顧客接点を改善する
・オープンに対話できる場をつくる
・顧客の声を傾聴する仕組みを構築する
・社員の幸せと顧客の感動を尊ぶ社風を育む
■ソーシャルメディア活用計画書
・ソーシャルメディア活用基本方針-活用実態の把握、組織の活用目的の策定
・運用チームの組織化-関連部門への啓蒙、運用メンバー選抜と組織的な支援施策
・社員・関係者の注意事項-新入社員・一般社員・管理職・業務委託者のリスク管理
・ポリシーの策定-既存規約との整合性を確保しつつガイドライン体系を策定
・関係者の教育・浸透計画-教育内容および実施要領の計画
・予算と体制-運営人件費も含めた年間予算や運用体制
ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと 斉藤 徹 日本経済新聞出版社 2011-11-11 by G-Tools |