「習慣で買う」のつくり方 (ニール・マーティン)

4903212319 「「習慣で買う」のつくり方」は、タイトル通り習慣で買うというリピーターの作り方について考察された書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、人間がいかに論理的に日々判断して行動している生き物ではなく、習慣に頼っているかという点を中心に、習慣を作るためのマーケティングのあり方について考察されています。
 ソーシャルメディアのツール選択においても、実は重要なのは論理的な機能差ではなく、日々の習慣の中心になるかというのが大きいのは実感値としてはありますが、いざ、具体的にここまで習慣の力を説明されると、なかなか考えさせられるところがあります。
 最新のマーケティング手法を勉強しすぎて頭でっかちになりがちな方には、原点に立ち返るという意味で参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■本来携帯電話業界は、既存顧客を長く維持すればするほど収益性が高まる。
 それなのに携帯電話業界は、既存の客よりも新規の客の方を第一に扱いがちだ。
■「満足」しても、リピーターになる率はたったの8パーセント
■無意識と顕在意識
 無意識=習慣脳は、生き抜くために必要なものとして生まれつき備わった武器だ。何かを日常的に繰り返し行ううちに、それは「習慣」となり、わざわざ意識しないでも自然にできるようになる。この仕組みのおかげで、進化の過程で後から備わった顕在意識=判断脳は、ほかの作業に集中することができる


■顧客を維持するために知っておくべきポイント
・企業は、顧客の言動ではなく行動に注視すること
・習慣脳と判断脳では鍛え方が異なる
・顧客が判断脳で考えていると、他の商品に乗り換えられやすい
・競合他社から顧客を奪うには、その顧客の習慣を壊さねばならない
■三つのデルタモーメント(新商品を試したくなるとき)
・バーゲンモード:お買い得品を求めるとき
・クチコミモード:見聞きした商品を試したくて店に出向くとき
・バリエーションモード:判断脳が新しい刺激を求めて買い物をするとき
■人間は、言葉で考えるのではない。まず頭にイメージを思い浮かべ、そのイメージを言語に置き換えるのだ。
■消費者が何も考えずに自然と選びたくなるようにすることこそ、マーケターの努めなのだ。
■マーケティング活動の成否は消費者のワーキングメモリで決まることも多い。消費者が何かで困っているときに、その解決策として、あなたの商品を思い出してもらえるだろうか?
■もう一つ忘れてはならないのが、ワーキングメモリで保持できる情報量は個人差が大きい、ということだ。これは、優秀な人が陥りやすい落とし穴だ。自分が覚えられるものは消費者も覚えられる、と想定したら大間違いである。
■「顧客を満足させることは基本的に意味のない行為であり、顧客満足度の測定や向上に時間をかけるのは無駄である」
■「企業がトレンドだと見なすものは、一過性であることが多いですね。新しいものを試してそれが習慣となるのは、たぶん、100に1つぐらいでしょう」(ハリー・バルザー)
■スターバックスの成功要因から、マーケティングの目標に掲げるべきもの、それは「これからは、顧客満足度ではなく顧客の習慣度を追求すべき」である。
■新商品を発表する前に答えを出しておかなければならないこと
・販売に結びつけるために、どんなことができるか?
・その商品に対して何らかの行動を起こした消費者には、どういうメリットがあるか?
・どんなイメージに狙いを定めるのが良いか?
・過去に例のない商品を発表する場合は、消費者が持つどんなイメージにはたらきかけるのがよいか?
■二つの習慣
・オートマチック習慣:判断脳が何度も遭遇して解決してきた問題を習慣脳にゆだね、自動的に選択するようになることで生まれる
・自分ルールによる習慣:問題を反射的に解決するための公式
■「広告業界は友達に自分の持ち物を見せるような感じでメッセージを伝えるのが最高の方法だと思う」
 「広告が謳う内容と実際の商品が一致しないことが多い。これは深刻な問題だ」
■オプラ・ウインフリーやタイレノールの製造元は、信用を失いかねない出来事が起こっても、それに誠実に向き合って対処したことで以前より評判が高まった。
■「クッキー」で強化を図るときは、行動が完了したときに与えないと意味がない。行動を起こさせたいあまりについ「クッキー」でつりたくなってしまうが、ビジネスではそれは賄賂になってしまう。「クッキー」を与えるのはあくまでも習慣を確立させるためだ。
■そもそも、賄賂は判断脳には効果があっても、習慣脳には意味をなさない。
■習慣になるまでに消費者が踏むステップ
・発見:どんな商品でも、見つけてもらわなくては始まらない
・購入:とりあえず買ってもらえれば第一関門は突破だが、それで安心してはいけない
・利用:買う習慣だけでなく、それを利用する習慣も身につけてもらう必要がある

4903212319 「習慣で買う」のつくり方
ニール・マーティン Neale Martin 花塚恵
海と月社 2011-12-13

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