ブログ誕生 総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア (スコット・ローゼンバーグ)

4757102860 「ブログ誕生」は、タイトル通り米国におけるブログの歴史について考察された書籍です。
 かなり前に献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 このブログ誕生に描かれているのは、米国におけるブログ的なウェブサイト誕生の背景から、普及期、そして現在に至るまでの数年の歴史です。
 MTのトロット夫妻の話はもちろん、Bloggrのエヴァンウィリアムズの苦労話から、ギズモードとエンガジェットのガジェットブログ対決話など、米国のブログを巡るサービス開発者やビジネスの裏側や奮闘話を赤裸々に抑えられています。
 日本から見ているとさぞかし壮大なビジョンを持って始めたのかと思いきや、意外に裏側はドタバタしてるんだなと思うと、少しほっとしたりします。
 日本のブログの黎明期も、こうやって一冊の書籍にまとまると、面白い歴史として振り返れたりするんですかね。
 ブログという歴史をあらためて俯瞰的に振り返ってみたい方には、刺激になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■911
 事件のニュースが行き渡ったあと、しばらくはインターネットの利用がむしろ落ちたという。それまで使っていなかった人々がインターネットを使い始めたわけでもないし、多くの人が他のメディアを捨ててオンラインに走る「転換点」となったわけでもない。
 しかし、このときウェブを利用した人々が大きな変化を感じたことは確かだ。
■ブートストラッピング(デイブ・ワイナー)
 未完成のプログラムを気にせずユーザーに提供してしまう
■デイブ・ワイナー 真実の語り部
 それが自身に課した役割で、ワイナーは笑みを浮かべて自分の役割を果たす。独りよがりなときもあり、そういうとき、激しいけんかがよく起きる。


■インターネットの環境危機(ジェイソン・カラカニス)
 インターネットでは、人気を博した新技術が「過剰マーケティング」とスパムにつぶされるというサイクルが繰り返されている
■ブログの普及から何かが生まれるとしても、人が心の狭さから解放され、不和のない世界が生まれることはありえない。
■初期のウェブロガーは、「フィルター」だと言われるようになった。
■ウォーブログ
 「ブログの立ち上げは、15年間も一緒にいた人々を「いい加減にしろ!」と怒鳴りつけるに等しいことでした」(マット・ウェルチ)
■ギズモードvsエンガジェット
 オーディオやビデオなどの支援武器を拡充しつつ、うわさの追求、新製品の紹介などさまざまな戦線でギズモードとエンガジェットが戦いを繰り広げた結果、ブログを書くという行為がかってないほど激しいものになった。
■テッククランチは、ブログ成功の典型的パターンを基本的に踏襲した
 狭い分野について次々と記事を投稿し、小さなスクープをものにする。違いは1点。彼はシリコンバレーで豪邸が集まるアサートンに家を借りていたが、そこに読者を集めてバーベキューパーティーを開いたのだ。
■排他的なアルファブロガーというのは空想の産物にすぎない
 べき乗則による分布には「不連続点」がない、「ここまでが粗野な大衆で、ここからがアルファブロガーだ」と言える明確な点など存在しないのだ
■ウェブの言葉で「ドゥースされた」とは、ブログが原因で職を失うことを意味する。
■ベテランブロガーは、初心者に「リアルであれ」とアドバイスすることが多い。
 ブログを書くとは、ありのままの姿で自分の人生を提示すること。あるいは、自分が世界をどう見ているのかを提示することだ
■編集者に与えられた特権が「この問題はここまでだ」と宣言する権利である。
 しかしブロガーは、そのような出動命令を聞く必要がない。
■「情熱をもったアマチュアは、惰性のプロフェッショナルよりまずまちがいなく上だ」(クリス・アンダーソン)
■ジャーナリズムの効用
・メディア企業が報酬を払わなくなれば、費用もかかれば政治的なリスクも大きい調査報道をする人がいなくなる
・オンラインニュースの増加と偏向性の高いブロゴスフィアの林立は、「こだま効果」ばかりになる
・大手メディアが倒れれば、国の文化が空中分解する、国をまとめる声がなくなる。
■「ひとつにまとまった国民の声の喪失」はとても嘆かわしいことに聞こえるが、ではそのような声がいつ存在したのかと考えてみると、米国の歴史においてごく短い期間しかなかったことがわかる。
■我々は、商業メディアの情報を受け身で消費するよりも、ずっと長い時間、電子メールやインスタントメッセージ、チャット、ブログ、フェイスブック型ネットワーキングなど、社会的な利用を行っている。
 つまり企業はテレビとの類似性を過大評価し、電話との類似性を過小評価してきたのだ。
■書くことで自分の考えを把握しようとする行為には、有益な副作用が伴うことがある。考えの変化がわかるのだ。
 ここ10年間のブログの歴史をみると、人々の考えが変化してゆく様をリアルタイムに追うことができる。

4757102860 ブログ誕生 ―総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア
スコット・ローゼンバーグ 井口 耕二
エヌティティ出版 2010-11-25

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