「リーダーの値打ち」は、「ネットビジネスの終わり」や、「情報革命バブルの崩壊」などの書籍でも知られる切込隊長こと山本一郎さんが書かれた書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
副題に「日本ではなぜバカだけが出世するのか?」とあるように、この本では、ブログでも数々への日本企業に舌鋒するどい批判を展開している山本さんならではの視点で、日本のリーダーについての考察が展開されています。
海外のリーダー論については、私もいろんな本を読んできましたが、日本の企業はどちらかというと海外のような超トップダウンのスタイルが合わない感覚をずっと持ってきましたので、この本で展開されているリーダー観には同意できる点が多々あります。
かといって、我々の世代は、いつまでも日本人だから、というのを言い訳にしているわけにもいきませんから、この本から日本のリーダーのだめな点を確認し、日本ならではのベストな組織の形というのを考えていかなければいけないんだろうなぁと強く思います。
自分の会社で上司や経営者が上手く機能していないと日々嘆いている方には、参考になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■太平洋戦争での敗戦の研究
・取り組もうとしている戦略の目的が不明確でわかりにくい場合が多くあります。
・通常は陸軍と海軍が独立した作戦を利宇案していました
・最高作戦立案組織が戦場となっている現場の状況を知らず、また知ろうともせずに机上の作戦を立てるため、現実には不可能な作戦が多くありました。
・先制攻撃、白兵決戦、艦隊決戦という日本が戦術・作戦の基本とした日露戦争の基本戦術が通用しなくなっていることを戦訓として学ぶ機会があったにもかかわらず、そこから脱却することができませんでした。
・立案した作戦がシナリオ通りに進展しなかったり、仮に失敗した場合の計画が全くない状態でありました。
■この本のテーマ
・どうして、こんなに馬鹿な人間が組織のリーダーになっているのだろう?
・私たちはこんなに頑張っているのに、なぜ成果に結びつかないんだろう?
■本来のトップというのは、目的を設定し、そこに参画している人たちに対してその目的の達成に参画してもらうことが主たる任務です。
■なぜ、日本の組織ではビジョンを浸透させられないのか。
直接の理由は、会社の資本に関係がありますが、我が国では創業であれ大企業の年次計画であれ、全体の経営ビジョンから落とし込まれた実施計画や事業計画があまり重視されず、貫徹されない傾向にあります。
■日本の組織モデルで言いますと、「優秀なミドル」とか「万能な現場担当者」などがヒット商品を生み出す原動力となり、組織の将来像を作り上げているケースが極めて多く、むしろ経営陣の役割として下から上がってくる提案を合理的、効果的に汲み取り、組織としてその実現ができるように仕向けてやるというようなアプローチを取る経営態度でいることが多くなります。
■ピーターの法則
組織において有能な個人は出世して、階層を一段ずつ上がっていく。そして、彼は、自分がもはや有能でないレベルに達すると、それ以上は出世できない。したがって、組織の中のポストは次第に、無能な人間によってすべて埋まっていく。だから大きな組織は、たいてい全体として無能になっていくのだ
■ピーターの法則を打ち破るためには、一人一人が考えて判断する、組織でいいますとそれぞれの人が能力に見合った地位につくことが非常に重要になってきます。
■「日本のリーダーにはビジョンがない」という批判は、すなわち日本の社会なり経済なり事業にとってお荷物とされる人たちが切り捨てられるだけの精神的なタフネスや、失脚しないだけの盤石な支持基盤を持たないということを意味します。
■実際には人材を判断する材料として、その組織の意思決定者が組織全体を統括し、掌握するためにやりやすい人材を脇に置こうとする傾向は多かれ少なかれ発生し、これをぬぐい去れないこともまた多くあるため、結果として実績に基づかない恣意的人事が組織の変化への対応力を殺ぎ、競争に対して劣後になっていってしまうのです。
■日本人は、どうしても前任者のやってきたことを否定するとなると、前任者の人格までもが否定されてしまうというふうに思われがちです。
■効率だけ考えればオフィスで特定の場所を与えるのではなくフリーアクセスにすることも考えるべきなのですが、案件一個一個の重要度が増すごとに「ひとつの場所にスペシャリストが定常的にそこにいて働いている」という状態が、結果としてミスが少なくクリエイティブの面でも成果が出しやすいという結論になりました。
■地方経済の荒廃のそもそもの起点こそ高度成長という、日本を一時は成功に導いたはずのシステムでした。
繁栄に酔いしれた日本人が、まさかその繁栄のためのシステムそのものの制度疲労が原因で、抜き差しならない衰退の坂を下ることになろうとは考えもしなかったろうと思います。
■良いモノを作れば必ず売れる、という極端なモノ作り信仰が、ある種の機能至上主義的なプロセスを経て「コストを安く何でも盛り込んでおけば自動的に売れていくに違いない」という精神論を生む構造です。
■「ジャパンファースト」作戦は、制作企画から投入まで、ほぼすべて日本の業者が振り出しとなり、リリースまでは最初から最後まで日本の業界構造の中で行います。
■ソーシャルゲームの勃興によって、安い単価でちょっとした時間を楽しく遊べればいいという方向への市場環境の変化が、誰の目にも明らかになってきた
■社会学者の宮台真司氏は、一連の東日本大震災の事後処理過程を評して「人に任せて文句を言う」風土があると喝破しました。
■日本人の仕事観の特徴
人に率いられたときに最大の効果を出すための研鑽はまじめに取り組むのに、人を率いている場合にどのようなことを考え、何に気を回したら良いのかというマネジメントに関わる部分がごっそり抜け落ちてしまう
■自分と向きあい、弱点も希望もさらけ出して考えていくことは、社会の変化を知るためのレーダーやソナーとなり、また部下が持つ悩みを察知するツールとなり得ます。
リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか? (アスキー新書) 山本一郎 アスキー・メディアワークス 2011-12-10 by G-Tools |