2012年のネット流行語大賞は、間違いなくヤフーの「爆速」であることを、ad:tech Tokyo 2012でまざまざと見せつけられた件について

 先日、「もはや、ソーシャルメディアとマスメディアを分けてマーケティングを考えること自体が間違っている、ということをad:tech Tokyoで考える。」という記事で、ad:tech Tokyo 2012で自分が担当したセッションについての感想を書いておきましたが、今日はad:tech Tokyo 2012最終日のクロージング・キーノートについてメモしておきたいと思います。
 今年のad:tech Tokyoの基調講演の締めを飾るのは、この方。
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 そうヤフーの宮坂社長です。
 海外のスピーカーが務めるのが当然と思われていたad:tech Tokyoのクロージングキーノートを、日本人がするという点だけでも注目度の高さがうかがえると思います。
 私自身も初回のad:tech Tokyoでこんなエントリーを書いて、ad:techにおける日本のネット企業の存在感の無さを嘆いていたので感慨もひとしおです。
ad:tech Tokyoで思う広告とか技術とか、いろんなものの境界線の無意味さ
 現在のヤフーの経営陣の刷新が発表されたのは今年の3月1日。
 それからまだ半年も経っていないわけですが、一年前と現在のヤフーは、もはや全くの別会社と言って良いほど雰囲気が変わった印象があります。
 私自身半年前にこんなブログを書いていましたが。
新生ヤフー経営陣には、とにかく何でも良いから日本のネットのドデカイ未来像を描いてもらいたいところ
 私なんかが偉そうに想像していた姿よりも、はるかに爆速でヤフーはそのイメージを変えてしまいました。
 そのあまりに速すぎる爆速な活動内容は、こちらにまとまっていますので見て頂ければと思います。
ヤフーの爆速が速すぎて見えなかったので調べてみた
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 まぁ、一つの会社の半年間の活動内容とは思えないほどまさに爆速です。


 ad:tech Tokyoの基調講演においても、その勢いはまざまざと現れており。
 プレゼンの最中にロート製薬さん、トヨタさん、サントリーさん、花王さん、と大手の広告主のインタビュー動画を差し込んでみたり、マーケティング部署の人事発表をしてみたり、とad:tech Tokyoの会場をまるでヤフーの会社説明会かのような雰囲気にしてしまいましたし。
 宮坂社長の明確なビジョンと気合いのこもったプレゼンには、個人的にも非常に刺激を受けました。
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 さらには、当日、長年批判の対象であった第三者配信拒否の姿勢を緩和し、メインサイトからでは無く動画サイトのGyaoからではありますが、MediaMind社と連携して第三者配信を可能にするなど、広告の分野においても変化を受け入れることを宣言し、大きな注目を集めたわけです。
ヤフー、米ネット広告大手と業務提携 – 認定第三者配信アドサーバーに採用
(ネット広告業界外の人には、ヤフーが第三者配信を採用するのがどれぐらい大きな出来事なのかなかなか伝わらないと思いますが、長らく待ち望んだ方々にとっては日本のネット広告における歴史的な出来事で、おそらくad:tech Tokyo 2012は、今後もこの発表が行われたイベントとして記録に残ることになるのでは無いかと思います。)
 実際問題、爆速というキーワードは、今年ヤフーの中だけで無く、ネット業界、広告業界でもかなり流行ったキーワードだと感じています。
 プレゼンのスライドに爆速というキーワードが使われているケースも多く見られるようになりました。
 爆速Tシャツを着てプレゼンする人も何度か見た記憶があります。
 特に個人的に驚いたのは、6月にインドネシアのスタートアップイベントに行ったときに、ジャカルタの空港でマリッサ・メイヤー率いるGoogleのエンジニア集団がヤフーの爆速Tシャツを来ていたこと。
 昔、マリッサ・メイヤーさんに、Googleの記者発表会でちょっとだけ話をさせて頂いたことがあったので顔を覚えていたのですが、ジャカルタ空港で私の前で入国審査をしていたので思わず話しかけたところ。
 なんでも日本でヤフーを訪問してからジャカルタ入りしたそうで、エンジニアの何人かがすっかり爆速Tシャツを気に入って日本から着てきていたようです。
(まぁ、その1ヶ月後には当のマリッサ・メイヤーのYahooのCEO就任が発表されて、さらにビックリするわけですが)
「グーグルの女王」マリッサ・メイヤー氏が語るグーグル検索の進化の方向性
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 いくら国が違うと言っても、一応ライバル企業であるはずのヤフーの爆速Tシャツをグーグルのエンジニアが着てるって、凄いことですよね。
 爆速は国境をも越えてしまうんだ、と感じてしまった瞬間でした。
 
 正直、昨年までの5年間のヤフーは、自らのサイト周辺の出来事以外は全く興味が無いかのように振る舞っていた印象があったため、ネット業界の片隅に生きる人間としては、寂しい思いとともに、すっかりヤフーが我々ベンチャー会社のライバルになりうると言う事実が頭の選択肢から消えていましたが。
 巨大なヤフーに、こんな生まれたばかりのベンチャーなみのスピード感で次々にサービスを展開されると、逆にちょっぴり恐怖感すら感じてしまいます。
 眠れる獅子を起こしてしまった、というのはこういうことを言うんでしょうか。
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 ただ、眠れる獅子であるヤフーが目覚めたと言うことは、日本のネット業界を代表する企業が目覚めてくれたと言うことであり、日本においてインターネットの可能性や価値を一段高見に上げてくれるべきリーダーが目覚めてくれたと言うことでもあります。
 
 現在の爆速の勢いそのままに、来年も今年まいた種が開花していくのを見ることになるのか、二年目のジンクスに陥るのかはもちろんこれからのヤフーの皆さんの頑張り次第になるんだと思いますが。
 これからのヤフーが日本のネット業界を爆速でリードし続けてくれるのを期待したいと思います。