アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実 (ジョン・スティール)

4478501831 「アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実」は、アカウント・プランニングについて考察されている書籍です。
 高広さんに薦められてかなり前に読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 アカウント・プランナーという言葉は、これまであまり深く考えずに使っていたのですが、この本を読むと実はアカウント・プランナーと言う言葉は広告業界の変化において非常に重要なキーワードであることが分かります。
 この本が出版されたのは2000年と、少し前の本にはなるのですが、インターネットの普及による広告業界のビジネスモデルの変化を考えるよりも前に、もっと根本的な広告業界が求められている変化の姿について考えてみたい方には参考になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■最高の、と同時に最も効果的な広告は、コミュニケーションと広告メッセージ開発プロセスの両面に消費者を参加させようとする
■広告には、取り込まなくてはならない重要な観点が三つある
・クライアントのビジネスという観点
・広告代理店のクリエイティブという観点
・広告のターゲット、つまり消費者の意見と偏見
■「私の作るものは広告そのものではない。広告を見たり聞いたり、読んだりした人の頭の中で起きるちょっとした反応こそが私の作品なのだ」(ジェフ・グッピー)
■「アカウント・プランニングは、消費者を広告制作のプロセスに巻き込む手法だ。本当に効くためには、広告は独特かつ適切でなければならない。プランニングは、そのどちらにも寄与するのだ」(クリス・カウプ)


■プランナーと営業の関係
 営業は商売上の視点を、プランナーは消費者の感覚をより多く持ち合わせている。だが、両者の間には重なる部分がかなり多い。
■営業が真の意味でプロジェクトを取り仕切っていれば、プランナーは必要なときにクライアントから距離を置く贅沢を許される。それは、バランスが取れて調整力に富んだ見方をするには絶対必要なことなのだ。
■プランナーとして欠かせない能力
・慎みと謙遜を併せもつこと。表向きには、存在さえもしないのである。
・会話において、話すよりも聞くほうに時間を費やすこと
・カメレオン的性質
・ちょっと変人でなければならない
■調査のサンプルは、一見したところ特定のターゲット層やグループを代表するように思われるかもしれないが、実際にはサンプル集団の中の部分集合でしかない。
 最悪の場合、慎重に選んだはずのサンプルなのに期待された代表制がまったくない集団になりかねないのである。
■「数字からひらめきを得ることはめったにない(絶対に、といいたいところだが)」(トム・ピーターズ)
■クライアントのためのグループ・インタビューでよくやるのが、対象者に絵を描かせること
・対象者をびびらせることができる
・だが、そのうち彼らは楽しみ始める
■良いブリーフは以下の三つの要件を満たさなければならない
・クリエイティブチームに対して現実的な広告の目標を与えること
・広告のターゲットについて明確なアウトラインを示すこと
・ターゲットに最も届きやすいメッセージの方向性を示すこと
■クリエイティブブリーフィングのポイント
・クライアントはクリエイティブブリーフィングに参加すべきではない
・消費者と無関係なものは、ブリーフにも無関係
・ブリーフは、商品を褒め称えるために書くのではない
・クリエイティブはブリーフをベースに広告を作る。ブリーフ通りにつくるのではない。・ブリーフは自分がどれだけ一生懸命仕事をしたかをひけらかすものではない
■グループ・インタビューから抽出した最も優れたアイデアは、他の人の発言に刺激されなかったら意味深い発言などしなかったであろう人々からのものである。
■グループ・インタビューの主な長所の一つとして、熟練した司会者の手にかかると、一対一インタビューよりも容易に高いエネルギー・レベルを創出し、維持できると言うことがある。
■「革新的に強みのある会社は、消費者はこれが欲しいものだというのを待ったりはしない」「大衆は何が可能かはわからない。だが、我々にはわかっている」(盛田昭夫)
■本書のポイント
・最高のアイデアはいくつもの異なる視点の組み合わせから出てくる
・業界の知恵は必ずしも、いつも賢いものとは限らない
・調査は白紙ではなく、仮説をもって着手すること
・ある商品やジャンルとの消費者のかかわりの真相を暴こうとするなら、調査は広告アイデア開発と同様に、クリエイティブで広い視野を備えたものでなければならない
・調査がうまくいくかどうかは、手法の洗練度や予算とは直接比例しない

4478501831 アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実
ジョン スティール Jon Steel
ダイヤモンド社 2000-06

by G-Tools