参入が遅れたはずのiTunesが結局日本でもリード役という事実

アップルの音楽配信サービスがついに開始–100万曲が1曲150円から – CNET Japanを読んで。

 ようやくiTunes Music Store(iTMS)が日本でもサービスインしましたね。

 米国でアップルがiTMSを1曲99セントでサービス開始して話題を呼んだのが2003年4月のこと。
 なんと日本は2年以上遅れての開始ということになります。

 インターネットの普及で日米の時差は薄まったというものの、やっぱりネットの新しいサービスはアメリカが先で、日本が数年遅れという流れはここでも変わらないようです。

 もちろんiTMSに関しては、昨年のうちにはサービス開始するのではと言われ続けてここまで伸びてきましたから、裏側ではいろんなやりとりがあったことが想像されます。

 個人的に何となく残念なのは、結局アップルが参入してこなければ、日本では100万曲の品揃えの音楽配信サービスも、150円という価格帯も実現されなかったという事実。

 iTMSの前にも、ソニーのレーベルゲートをはじめ多くの事業者が音楽配信サービスを手がけていたわけです。
 米国でのiTMSの成功も目の当たりにしつつ、圧倒的な品揃えと低価格と端末との連携の3点セットが鍵だというのが見えつつも、結局、日本の事業者はどこも実現できず、遅れに遅れたはずのiTMSの参入を後追いしてしまっているというのは実に残念です。

 まぁ、各事業者の声を聞いていると、どうも日本ではPC向けの音楽配信よりも携帯向けが儲かって仕方が無いという事情もあるようですから、仕方が無いのかなぁという感じもありますし。
 iPodのシェアが7割を超える米国と3割強の日本では、iTunesが市場に与えるインパクトの大きさも違うだろうと見る向きも多いようですが・・・

 ま、利用者としてはとりあえずiTMSが始まったのはようやくやってきたグッドニュース。
 まずは素直に喜ぶとしますか。

「優秀な人」は大企業で働くべきかベンチャーで働くべきか

[を] 大企業には優秀な人がたくさん埋もれているを読んで。

 典型的な大企業出身者の自分からすると、こういったタイトルの記事には深く考えるところが多くあります。

 特に日本においては、人材の流動性が米国に比べると低く、未だに優秀な人材が大企業に多く埋もれているというのは良く言われる話ですね。

 先日、この定説に関連して、isologueの磯崎さんが面白い記事を取り上げていました
 なんでも「イノベーションのジレンマ」で有名なクリステンセン教授に言わせると、この定説は文化の違いではないとのこと。

米国では人材の流動性が高く、優秀な人材が大企業だけでなくベンチャー企業にも行き渡る。それが米国のダイナミズムを生んでいる。しかし、日本はそうではない-。よく、そんなことが言われるでしょう。でも歴史を学んでください。米国の産業と経済が本格的に始動した1880年頃から1970年代まで、大多数の米国人は大企業で働いていたのです。誰もがゼネラル・エレクトリック(GE)やRCA、ゼネラル・モータース(GM)で働きたいと望みました。ベンチャー企業は少なく、ベンチャーキャピタルという産業も存在しませんでした。

 なるほど、そうやって言われてみると確かにそうです。
 もし歴史が繰り返すとするならば、日本でもこれから価値観の逆転がおこっても不思議ではないかもしれません。

 ところで、こういったことを書くと、自分が大企業からの転職組なだけに、ベンチャー至上主義のように勘違いされてしまいますが、個人的には大企業で優秀と評価されている人は必ずしも転職するべきだとは思いません。

 結局、仮にある大企業の中で優秀だと定義されたとしても、外に出て評価されるかどうかは別問題ですし、外で楽しく仕事ができるかどうかもわかりません。いわゆる大企業で必要とされる能力と、ベンチャーで必要とされる能力には大きな違いがあるようにも感じます。
 まぁ、結局「優秀」というのが何を指しているかによりますよね。
(個人的には、大企業に順応できなかった人のほうがベンチャーに向いているように思ってしまったり・・・)
 

 ちなみに、ちょうど先週末グロービスのキャリアセミナーにパネリストとして呼んでもらう機会がありましたが、そのときに参加者の質問を受けながら改めて感じたのが、「自分に最適なキャリアや仕事」というのを見つけることの難しさ。

 自分の転職人生なんて、正直挫折と失敗の連続だったりするわけで、偉そうにキャリアについて語れる立場ではないのですが、一つだけなんとなく分かってきたことがあります。

 それは「自分に最適なキャリアは自分で探す」しかないということです。
 

 自分も大企業で6年を過ごして、大きく勘違いしていたのは「自分の人生は人事部や上司がベストなものを選んでくれるだろう」という価値観。
 冒頭で紹介した、たつをさんの記事のように、実際には人事部も上司も、組織や自分のために社員の行く末を決めているわけで、必ずしも個人個人にとって最適なポジションを探しているわけではありませんし、一人ひとりを幸せにするためでもありません。 

 これはヘッドハンティング会社や人材バンクにしても一緒。
 もちろん彼らは転職のプロではありますが、個人個人にとってどんなキャリアが幸せかなんてことは、本当には分かりません。

 自分がどの仕事やポジションに向いていて、将来どういうキャリアをつんでいきたいかというのは、結局のところ自分で考えて、自分で掴み取っていくしかないんだなぁと思います。

 
 なんだか、まとまらないエントリーになってしまいましたが、何にしても自分の人生は一度きり。 
 後から後悔しないように楽しく生きていきたいものですね。

通信会社は最終的には3位までしか生き残れない?

KDDI、パワードコムを買収か – CNET Japanを読んで。

 パワードコムがKDDIに買収されるのではないかという話が流れているようですね。

 パワードコムといえば、最近はライブドアD-cubicのインフラ部分を担ったり、グループ会社のフュージョンがSkypeの転送サービスを発表したりと、ちょっと元気がよくなってきた印象があったのですが、やはり単独では厳しいという判断があるのでしょうか。

 ちなみに、パワードコムは現在固定通信で4位につけているはずですが、この4位というのが通信業界では結構鬼門です。

 NTTが民営化して、通信業界に参入した事業者として、日本テレコムとDDI(現KDDI)は知っている人も多いと思いますが、実は当時も4番手がいました。
 それが日本高速通信(TWJ)という通信会社。道路公団とトヨタが出資して結構注目されましたが、東名阪に注力するという戦略上のミスもあって先行するNTTと他の2社との競争に勝てず結局単独では立ち行かなくなったところをKDDに合併し、そのままDDIと合併するという末路をたどります。

 携帯電話事業においても、NTTドコモ、au、ボーダフォンの3強に比べて4番手のツーカーの影が薄かったのは皆さんご存知の通り。結局、紆余曲折の末、現在ではツーカーはKDDIグループに吸収合併されています。
(最近は高齢者向け端末で若干脚光を浴びてはいますが)

 
 現在の固定通信も、NTTグループ、ソフトバンクグループ、KDDIグループという順で、パワードコムはその次ですから、ある意味3位と4位の合併というのは当然の流れといえるかもしれません。

 改めて考えてみると、通信サービスってインフラ提供事業と考えてしまうと、そもそもサービスの差異化って難しいわけで、利用者からすると結局会社のブランドぐらいしか選択要因ってないのかもしれませんね。
 そうなると結局3社ぐらいしか記憶に残らないのかもしれません。

 事業を提供する側としても、設備投資を考えると規模が大きい方が当然有利なわけで、なんとなく通信事業で成功できるのは3社までという感じがしてきてします。
 

 そう考えると後発でいつのまにか2位に入ってきたソフトバンクは、やっぱり凄いとも思えますね。
 ただ、固定通信・移動通信ともに事業としてトップ3に入るNTTグループ、KDDIグループと異なり、ソフトバンクは移動通信が無いのが弱み。

 順当に考えるなら、ボーダフォンなりウィルコムなりを買収して、移動通信もトップ3入りを目指すべきとも思えますが・・・・

ライブドアD-cubicの採算分岐4万人は多いか少ないか

「4万ユーザーを獲得しなければ失敗」–ライブドアの公衆無線LANサービス – CNET Japanを読んで。

 野村総研がライブドアの公衆無線LANサービスD-cubicについて、設備投資の費用を回収するには、約4万ユーザーを獲得する必要があるという試算を発表したそうです。

 最近物議をかもしたHDDレコーダーのCM飛ばしの影響のレポートといい、最近の野村総研は何だか元気がいいですね、という話は置いておいて。

 実際問題、果たしてこの4万人という数字は、どれだけ達成が難しい数字なんでしょうか?

 何でも「公衆無線LANサービスの有料利用者数は2005年3月時点で約10万人」だそうで、その数字からすると4万人というのは全体の4割で高い数字にも感じられます。

 ただ、逆に市場全体として考えると「現在PHSのデータ通信加入数は200~250万件といい、これが潜在的な公衆無線LANユーザーの数」になるそうです。
 この数字からすると、4万人というのは全体の2%にしか過ぎませんからかなりリーズナブルな雰囲気はでてきますね。

 それにしても、個人的に改めて驚いたのは、公衆無線LANサービスの損益分岐点の低さ。
 Yahoo!BBが2001年にADSLサービスを、月額2280円という驚きの価格でサービス開始したときに、損益分岐点としてあげていたのが200~300万人。

 今回のライブドアのD-Cubicは、まぁ山手線内だけという違いはあるものの、その50分の1で良いという計算になります。
 通信事業の参入障壁もここまで下がってしまったか、と改めてしみじみと感じてしまいました。

 そもそも、D-cubicの年間の運営費が仮に野村総研の試算どおりだとすると、2億5000万円で済むわけです。

 ライブドアは例のニッポン放送関連で1000億円を越える資金を入手したと言われていますから、このままだったら赤字垂れ流しでも研究開発費や広告費と思えば、当分我慢できるのかもしれませんね。

LifeHacksとは、仕事をゲームに変える技術?

[を] LifeHacks EXPO に行きましたを読んで。

 先週末に、LifeHacks EXPOに行ってきました。

 Life Hacksとは、Hotwiredによると「これは効率よく仕事をこなし、高い生産性を上げ、人生のクオリティを向上させようとする取り組み」とのことで、誤解を恐れずに日本語で言ってしまうとまぁ仕事術ということになるんでしょうか。

 実は、イベント自体はリクナビ主催の「エンジニア適職フェア」なんで、明らかに自分は対象顧客じゃないんですが。
 Life Hacksについてはアカデメディアで紹介されてから、ずっと気になっていたので思わず黙って申込です。

 
 イベントの詳細については、上記のたつをさんのログや、LACRIMEさんのメモログOverlasting::Lifeの詳細メモを見ていただくとして。

 個人的に印象に残ったのは、パネリストの皆さんが実に楽しそうにプレゼンしていること。

 そもそもは会社の中での仕事のやり方をプレゼンしているわけで、普通ならもっと地味な感じになりそうなもんですが、お三方のプレゼンは実に魅力的です。
 まぁ、考えてみたら当たり前で、お三方は仕事自体を楽しんでやってるわけですよね。

 帰ってきてから、会場でもらったLife Hacksの小冊子を読んでいると、ますますその思いは強くなってきます。
 冊子の事例として取り上げられているどの会社も、実に楽しそう。自分のモチベーションを上げる仕組みや、仕事をシンプルにこなしていく仕組みを作ったり、社員のアイデアをくみ上げる仕組みを作ったり、果てはサイコロで給料を決める(!?)会社まで。
 まるで仕事の話というよりは新しいゲーム作りを見ているようです。

 改めて考えてみると、これまで、えてしてホワイトカラーの仕事というのは本人の才能や根性、モチベーションなんかに依存していて、ある意味管理が不可能で、それぞれの人の裁量に任せてしまっている印象があったわけですが。
 Life Hacksで紹介されている会社は、どこも「仕事」をいかにシステマチックにシンプルに処理していくかという技を磨いているように思えます。
 

 これって何かに似てるなぁと思って思い出したのが、これまで主に製造業を中心に行われてきた「カイゼン」や「ビジネスプロセスリエンジニアリング」の仕組み。

 例えば、はてなが実施している「あしか」と呼ばれる紙を使ったアナログなタスク管理システムなんかは、トヨタの看板方式をほうふつとさせますし、イーナチュラルの10分刻みの時間管理システムなんかも製造業の細かい作業時間管理をほうふつとさせます。

 ホワイトカラーの「仕事」を製造業の製品やパーツとして捕らえると、実は同じような試みができるということかもしれません

 実際、一度そういう風に自分たちの「仕事」を捉えてしまえば、全体の仕事を一度に対処不可能な複雑で大きな困難と捕らえずに、シンプルな作業の塊と捕らえてゲーム的に処理しやすくなるのかもしれませんね。
 

 もちろん、これまでも同様の仕組みや仕事術は、いろんな会社や個人ベースで実践されてきていたはずです。
 ただ、最近のブログを中心とした情報ネットワークが、他人の仕事術を簡単に共有することができる環境を作ってしまったので、ネットを通じてそういう手法が一気に共有できる環境が出来上がったというのが現状なんでしょうね。

 百式の田口さんが紹介していた「GTD(Get Things Done)」なんかは、米国でカルト的人気を呼んでいるという記事もありましたが、これから日本でもブームになりそうな予感がします。

テレビ広告で検索サービスを離陸させることはできるのか

Ask.jpの訪問者数が増加を続け月間100万人超に–ネットレイティングス調査 – CNET Japanを読んで。

 Ask.jpの利用者が月間100万人を越えたそうです。

 ちょうどmixiが「もうすぐ100万人」キャンペーンをやっていたところなので、もう100万人?と驚いてしまいましたが良く見るとAsk.jpは登録者ではなく月間利用者なんですね。

 Ask.jpといえば、2月にサービスを開始してから、宇宙戦争のテレビコマーシャルをはじめ、ネットマイルのキャンペーンなど、様々なプロモーションを打ってきてましたから、その辺が一定の効果を挙げたと言えば良いのでしょうか。

 テレビ広告を使った検索サービスのキャンペーンといえば、10億円を投じたGMOグループの9199.jpが記憶に新しいところですが、Alexaで9199.jpとAsk.jpのトラフィックを比較してみるとこんな感じです。

 9199.jpのトラフィックは11月ごろのスマップの稲垣のテレビCMを打っていた頃にピークをつけていますが、その後あっさりと下がってきているのが良く分かります。
 結局、広告で認知度を無理矢理上げても、利用者を定着させるほど特色のあるサービスではなかったということでしょう。
(まぁ、実際9199.jpは広告主側により過ぎている印象もありましたので、さもありなんという感じですが)
 
 
 その視点で、Ask.jpのトラフィックを見ると、9199.jpに比べれば比較的トラフィックを維持できている感じはあるものの、やはり右肩下がりになってきている印象もあります。
 
 ポイントは、プロモーションで集めてきた利用者が、その後定着しているのかどうかでしょうか。

 ネタフルのコグレさんが「開始直後は、ぼくもしばらくAsk.jpを使っていたんですけどね。いつの間にか、やはりGoogleに戻ってしまいました。」と書かれていますが、やっぱり検索のヘビーユーザーを今から移動させるのは難しい印象もありますので、当面はあまり検索を上手く使えていない利用者がターゲットになるような感じもします。
 
 そういう意味では、しばらくはそのターゲットに対するプロモーションはコストをかけて実施せざるを得ない感じもしますが・・・どうなんでしょう?

 まぁ、アスクジーブスはバックにIACがついていて資金力はありますし、もともと長期戦のはず。
 使い勝手も独自検索エンジンTeomaなどかなり考えて作られていることをCNETのイベントでもアピールされていましたから、上手く口コミがまわるようになればポジティブなサイクルがまわるようにはなるはずで、いろいろ展開のプランがあることと思いますので、注目したいところです。