フューチャリスト宣言は、梅田さんと茂木さんの対談から生まれた書籍です。
光栄にも献本をいただいたので、遅ればせながら読書メモをしておきます。
個人的には、この本も含め、梅田さんの最近の3つの本についてそれぞれ似ているようで大きく違う印象を抱いています。
「ウェブ進化論」が主にエスタブリッシュ側の人に対して、Web2.0とグーグルというキーワードを元にネットの可能性を示したのに対し、「ウェブ人間論」はウェブ進化論を読んだだけではまだ腹に落ちていない人々に、平野さんと言う対談相手をもって読者の疑問に答えている本のような印象を受けました。
そういう意味では今回のフューチャリスト宣言は、フューチャリスト同盟となる若い世代に対する応援歌という感じではないでしょうか。
梅田さんと茂木さんという二人のフューチャリストの対談だけに、書籍のそこここに、現在の遅々として変化が進まないように見える日本に対する「怒り」のような発言や、これから来る未来への「期待」のような発言が出てきて、あらためてインターネットの可能性を感じると共に、変化と言うのがそんなに簡単におこるものではないことも考えさせられます。
この本は、是非これからの世代である20代、いや、10代の人たちに読んで欲しい本かもしれません。
ちなみに、個人的に印象に残ったのは茂木さんの「これからの時代における個人と組織の関係は、所属というメタファーではなくてアフィリエイト(連携)というメタファーでとらえるべきだと思っています。」という発言。
たしかに、現在のインターネットの可能性をどうとらえるかと言うのは、この自分を組織に所属しているだけの人間ととらえるか、インターネット上で他の人と縦横無尽に連携できる人間ととらえるかで大きく変わってくる気がしています。
そこの視点の変換が、案外フューチャリストになるための最初の一歩になるのかもしれません。
そんな中、自分たち一人一人にできることは何なのか、改めて考えさせられる一冊でした。
【読書メモ】
■茂:「あなたは原稿料をもらって原稿を書き、本にする人でしょ。それなのに、なぜあれだけ膨大な文章を無料で公開しているのですか」(中略)ブログってアクセスに関しては他のメディアと遜色ないし、何より自分で編集ができる。著者と編集者を兼ねられる。要するに媒体を自分で持てるという快感があります。
■梅:いまのメディア世界の人たちを中心として、「不特定多数の人々が自由に情報発信できるなんてとんでもない。いままでの仕組みのなかで選ばれた人が情報を選別して民に知らしめるべきなんだ。(中略)」という世界観を持っている人は、エリート社会に多いのです。
■梅:(日本の電気産業は)インターネットが出てきた瞬間に、インターネットの性質と言うのは極めて破壊的、アナーキーなので、そこに踏み込めなくなった。(中略)
壊して何かをやろう、あるいは壊して新しいものを創造しようということとインターネットの性質はイコールなんです。
■茂:インターネットというメディアが生まれて、それに人間の脳が、そしてメンタリティが追いついていくのには、意外とタイムラグがある。
■茂:ユーチューブにテレビ番組のビデオ映像が上がるのは著作権侵害だ、と言うけれど、著作権とかゴチャゴチャ言う前に、自分たちのつくったコンテンツを二度と見られないような状態のまま放置するな、と僕は思う。
■梅:検索エンジンを通して未知との出会いがあるのか、それともないのかというところに、SNSとブログの決定的な違いがあると思う。
■梅:「僕は正しい意見というのは誤解の総体だと思っています。誤解がたくさん集まれば、本当に正しい理解がそこに立ち上がるんですよ」(村上春樹 柴田元幸著「翻訳教室」)
■梅:ネットは絶対に有料にしちゃいけないんです。(中略)一方、リアルと言うのは不自由だからこそ、お金使って自由を求めます。だから永久にリアルの世界でお金が圧倒的に回る。この二つの世界での生計の立て方とか、それから知的満足のしかたとか、いろいろ組み合わせて戦略的に考えていく必要があります。
■茂:これからの時代における個人と組織の関係は、所属というメタファーではなくてアフィリエイト(連携)というメタファーでとらえるべきだと思っています。(中略)僕はいろいろな人に「これからは個人の信用はネットで保証すれば良い。誰が最初にそれに気づくか。それに気づいた人がこれからは輝くよ」と言っています。
■茂:本と言うのはリアル世界だけの存在だと思われがちだけども、ネットの海、情報の海に、空から降りてくるときに、錨をおろすリファレンス・ポイントになるんですね。
■茂:ネットは人間の「学ぶ喜び」を深め、加速する。
【目次】
第1章 黒船がやってきた!
第2章 クオリアとグーグル
第3章 フューチャリスト同盟だ!
第4章 ネットの側に賭ける
梅田望夫特別授業「もうひとつの地球」
茂木健一郎特別授業「脳と仕事力」
フューチャリスト宣言 梅田 望夫 茂木 健一郎 by G-Tools |