「夜と霧」は、ユダヤ人精神分析学者であるヴィクトール・E・フランクルがみずからのナチス強制収容所体験をつづった書籍です。
先日紹介した「ハイ・コンセプト」で紹介されていたので買って読んでみました。
書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
ナチス強制収容所というと、さまざまな映画でも取り上げられている題材だけに、なんとなく理解したような気になっている世界なのですが、まぁ正直言ってこの本に書かれている世界はそんなもんじゃありません。
正直、数あるナチス強制収容所を描いた映画が、かえって強制収容所生活を美化する結果になってしまっているのではないかと思えてくるほど。
テーマ的には「世界でひとつだけの幸せ」と同様、ポジティブに考えることがいかに重要かという本なのですが、正直前半を読んでいる間は人間が人間にできることの惨さに、すっかり暗い気分になるはずです。
でも、そこで支えになるのがそんな状況でもポジティブに生き抜いた著者の「わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ」というメッセージ。
自分の置かれた環境への不満が爆発しそうだったり、自分が不幸になる運命だと思いこんでいるような人は、是非読むべき本だと思います。
【読書メモ】
■人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。
人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ。
■匿名で公表されたものは価値が劣る、名乗る勇気は認識の価値を高める、と自分に言い聞かせ、名前を出すことにした。
■わたしは事実のために、名前を消すことを断念した。そして自分をさらけ出す恥をのりこえ、勇気をふるって告白した。いわばわたし自身を売り渡したのだ。
■収容所生活が被収容者にもたらす精神病理学的症状に心理療法や精神衛生の立場から対処するには、強制収容所にいる人間に、そこが強制収容所であってもなお、なんとか未来に、未来の目的にふたたび目を向けさせることに意を用い、精神的に励ますことが有力な手立てとなる。
■わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ、ということを学び、絶望している人間に伝えねばならない。
■「あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない」
夜と霧 新版 池田 香代子 みすず書房 2002-11-06 by G-Tools |