「クラウドソーシング」は、ワイアードのエディターのジェフ・ハウ氏が書かれたクラウドソーシング考察の書籍です。
献本を頂いていたのですが書評を書けていなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
昨日の日経ビジネスオンラインのコラムにも書きましたが、クラウドソーシング的な取り組みはこれまであまり日本では機能していなかった印象がありますが、今回の震災で少し雰囲気が変わってきた気がします。
昔同名の「クラウドソーシング (バリー・リバートほか)」という書籍も紹介しましたが、あちらの本が事例集的な位置づけだったのに対し、こちらの書籍はクラウドソーシング現象自体の考察本という位置づけです。
これからの日本におけるクラウドソーシングの可能性を真剣に考えたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■クラウドソーシングは、産業時代を席巻していた流れ作業方式をよしとする思想、フォーディズムの対極にあると言える。
■クラウドソーシングでは、参加者は金銭をおもな動機とせず、余った時間を提供することだ。彼らは、余剰能力、すなわち「スペアサイクル」を提供し、自分の好きなことに没頭するのである。
■クラウドソーシングが生まれる豊かな土壌を作ったのは、四つの進歩である。
・アマチュア層が増加したこと
・新しい生産方式が登場したこと
・インターネットと安価なツールが普及したこと
・オンラインコミュニティの進化
■「われわれのコンテンツは、プロの手になるジャーナリズムと、アマチュアの貢献とを混ぜあわせたものでなければならない」(ガネット)
■「昔は”市民ジャーナリストになろう”と書かれていたんです。クリックする人はいませんでした。そこで、”あなたの記事を送ろう”にしましたが、反応がない。”発表しよう”にすると、どういうわけか魔法のように効きました」
■コミュニティはもともと私利私欲と相互利益から生まれたものだった。
■クラウドソーシングには、おもに三つのタイプがある
・予測市場、情報市場
・問題解決ネットワーク、クラウドキャスティング・ネットワーク
・アイデアジャム
■「われわれが学んだのは、協力者に何かをしてもらう場合、指示をもっとずっと明確にする必要があるということだ。」
■クラウドソーシングを用いたジャーナリズムのための決まりごと
・分業を正しく行う
・一般の人々に参加を呼びかける前に、彼らの動機を理解しておく
■1対10対89の法則
サイトを訪れる100人のうち1人はじっさいに何かを作り出し、10人はその作品に投票し、あとの89人はその作品を消費するだけである
■一般の人々が「共同でコンテンツの価値を判断する」場合、これまでは冷静で、経験豊かな一握りのジャーナリストの手にあった力、すなわち編集上の重大な決断を下す力が、一般の人々に手渡されることになるのだ。
■レコード産業では、焦土作戦がじつによく機能している。しかし、ゲーム産業は収益を30%以上も伸ばしているのに、レコード産業は壊滅的な売り上げ低下に悩まされている。
■クラウドソーシングの10のルール
・正しい方式を選ぶ
・正しい群衆を選ぶ
・正しい動機を与える
・早まってリストラをしてはいけない
・ものいわぬ群衆、あるいは慈悲深い独裁者の原則
・ことを単純にし、小さく分ける
・スタージョンの法則を忘れない
・スタージョンの法則を逆手にとって、10%の存在を忘れない
・コミュニティはつねに正しい
・自分のために群衆に何ができるかではなく、群衆のために自分に何ができるかを問う
クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす (ハヤカワ新書juice) ジェフ ハウ Jeff Howe 早川書房 2009-05 by G-Tools |