「世代論のワナ」は、「「買う気」の法則」や、「電通とリクルート」などの著作を書かれている山本直人さんが書かれた書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本では、深く考えずに使われがちな世代論について山本さんならではの視点で冷静に解説されています。
世代論というのは、いろんなところで議論の火種になっていますが、この本を読むと実は世代論を軸に議論していること自体が議論がかみ合わない原因なのではないかと思えてきたりします。
一歩引いた視点で世代論について考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■若者の変化を批判的に論じる人やジャーナリズムが、どうにも二面的で、身勝手に感じられてきた
そもそも、ゲームもケータイも大人が考え出して若者に売り込んだものだ。それで若者に負の変化が起きたとしても、その原因は大人にある。
■実を言うと、今までの日本の世代論のほとんどは若者論だったのだ。10代後半から20代後半の間に何らかのレッテルを貼られていたのである。そして、そのレッテルは、彼らが社会人になると段々と剥がれていった。
ところが、近年になって若者以外の世代が、論じられるようになってきた。
■世代論=若者論ではなくなってきた。それは、大人が大人らしくなくなってしまったからともいえる。
■クルマ離れの虚実
・どうして新車が売れないのかというと、使用年数が伸びたのである。
・「クルマ不要エリア」に人が増えて、そのかなりの部分は若者だ。
・「カネがなくてクルマが買えない」のではなく、「クルマを買わなくても十分に豊か」な若者も存在するのだ。
■「若者のクルマ離れで事故も減って空気もきれいになりました」
そんな記事はできるわけがないだろう。読者も広告出稿元もそんな結論を求めていない。そこで「離れ」そのものにやんわりと矛先が向いていくわけだ。
このように、報道の記事が「広告化」する傾向は、経済後退とマス広告減少の中で目立つようになってきたと思う。
■近年の世代を巡る論議は、メディアによるバイアスが激しくなっている。マスメディアは、万人が参加して議論するメディアではなくなりつつあるのだ。
■「できる若手社員」に共通する家庭環境
親が束縛するわけでもなく、かといって放任するわけでもない。ただし本人の劣等感やコンプレックスになるような、ダメ出しはしていないのだ。
■共通して聞く言葉に「打たれ弱い」という言葉がある
ダメ出しをされた経験が少ないのだから、現場の適応で問題を起こしてしまうのである。
■ビジネスの現場でコミュニケーション能力の必要性はこれからも変わらないだろう。そうなれば、「ダメ出しされなかった若者」を現場で鍛えていくか、ダメ出しされた者に再度自信を与えてやることが大切になる。
■自信を持つ者は、他者を信頼する。それは、親子でも同じである。結果的に、目に見えない「自信の相続」が起きているのである。そして、「自信喪失の相続」も行われているのだ。
■ライブドアという踏み絵
「既存勢力を破壊することが、自分たちの未来にとってプラスなのか。それとも、今の社会の良さを継続しながら漸進的に変化するべきなのだろうか?」
■大家族的な組織というのは結構機能的なのである。
イメージとしては、10~15人程度。多くても30人くらいの集団が、タテ・ヨコ・ナナメの関係の中で働いているような状況だ。
世代論のワナ (新朝新書) 山本 直人 新潮社 2012-01-17 by G-Tools |