「ゲーミフィケーション」は、タイトル通り最近話題のフレーズである「ゲーミフィケーション」について書かれた書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本では、ゲーミフィケーションというフレーズを流行語としてではなく、一つの可能性として冷静に分析されています。
オバマが大統領選挙の時に構築したマイバラクオバマとハワードディーンのゲームの比較や、ディズニーの社内表彰制度とフェイスブックの類似の社内システムの比較など、実に幅広い視点でまとめられているのが大きな特徴と言えるでしょう。
日本においては、「ゲーム」という言葉はテレビゲームのことを指すとイメージしている方が多いため、ゲーミフィケーションというと、ソーシャルゲームが流行っているのと重なって、企業がソーシャルゲームを作ることと勘違いされている方も意外に多いようですが、実際にはゲーミフィケーションとは「ゲーム化」のことで、それ以上でもそれ以下でもありません。
一方で、実はこの「ゲーム化」ということには実に大きな可能性が秘められているというのが、最近のゲーミフィケーションの盛り上がりの背景にあると言うのは決して忘れてはいけないポイントでしょう。
退屈な作業や、モチベーションを保てない行為においても、ゲーミフィケーション的な要素が組み合わさることで、楽しくなる可能性があります。
個人的な象徴としてあげたいのは、インサイトやプリウスなどのハイブリッドカーのエコドライブランキング。
本来ドライブのランキングと言えば、目的地に着くまでの時間を競うのが当たり前で、ゆっくり走るのはかっこわるい行為だったと思いますが、燃費を競うという仕組みを作ったことで燃費を良くするために「ゆっくり」走ることがかっこよくなり、自慢できる行為になるわけです。
昨今のゲーミフィケーションブームを冷ややかにみている方には、是非この本を読んで頂くと、自分なりのゲーミフィケーションの活かし方が見つかるのではないかと思います。
個人的には「オバマのつくり方」も合わせて読むのをオススメします。
【読書メモ】
■流行語としての「ゲーミフィケーション」という言葉に踊らされる必要は無い。何なら、ゲーミフィケーションという言葉は使わなくてもいい。
■2015年までにイノベーションを司る組織の半数以上が、そのプロセスにゲーム的な要素を取り入れ、2014年までにグローバル企業2000社のうち70%以上がマーケティングと顧客の維持のため、少なくともひとつ以上のゲーム化されたアプリケーションを持つ事になるだろう。(ガートナー)
■マイバラクオバマ・ドットコム
まずは、登録。そして、個人情報の入力。そして、友達を誘う電子メールを送信する。
こうした誰でも簡単にできる事を少しずつ続けていくと、マイバラクオバマ・ドットコムのなかでのレベルが上昇していく。
■ハワード・ディーンのゲームはあくまで「コンピュータ・ゲーム」だった。与えられたゲームを遊ぶ事が主眼だった。しかし、マイバラクオバマ・ドットコムにおける「ゲーム」は選挙活動の中にゲームが入り込むことで、支持者個々人が持続的に選挙活動に取り組むことを可能にする「ゲーム」だったのだ。
■現在、ゲーミフィケーションがこれほど話題になっている大きな理由は、こうした顧客に製品やサービスを繰り返し利用してもらい、関係性を維持することに大きく貢献する可能性が見えたからだ。
■ゲーミフィケーションとは、外発的動機付けとの境界線的な要素を求めるうちに、内発的動機付けを駆動させるメカニズム
・外発的動機付け:報酬や罰を理由に動機づけられること
・内発的動機付け:外部からの報酬や罰によってではなく、自ら活動それ時代に動機づけられること
■ゲーミフィケーションとその周辺
・シリアスゲーム=ゲームそのものの開発
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・The Gamification=ゲームのノウハウの活用(コンピュータを介しているもの)
ナイキプラス、フォースクエア
・非ネット系ゲーミフィケーション的事例
スタンプラリー、スターバックスのポイントカード
・準ゲーミフィケーション的事例
一般的なポイント制、ラジオ体操のハンコ、歩数計
・ハマる現象のもろもろ=形式化されていないゲーム的な現象
■プログラム言語をゲームのように学ぶ-コーデカデミー
■幹部が現場ですばらしい仕事をしているキャストを見かけた場合、幹部は同じ部門でなくても、そのキャストに自ら署名を入れて、ファイブスターカードと呼ばれるカードをキャストに渡す(ディズニー)
■キャストに問題のある行動を発見した場合も、「後になってからメールで忠告する」などという方式は最悪だとされ、客のいないタイミングでなるべくすぐに忠告するようにするという(ディズニー)
■特にいいことをしているスタッフがいれば、そこに「サンクス」のバッジを送る事ができるようになっている(フェイスブックの社内システム「リップル」)
■たのしみの順序を作るための「アンロック」と「レベルデザイン」
・アンロック:ゲームをプレイする中でできることが少しずつ増えていく手法
かけられた鍵のすべてを解錠して機能が全部使えるようになるころには、プレイヤーはそのゲームがどのようなたのしみの幅を持つものかを学んでいる
・レベルデザイン:ゲームにおけるマップのデザインを通じてプレイヤーに暗黙のうちに意図した行動を行ってもらうための一群の手法
プレイヤーは単にマップのなかを走り回っているだけで、知らず知らずのうちにゲームの遊び方を身につけていく
■ゲームデザインの手法
・ほどよい挑戦の感覚を作る仕組み
・アンロック
・レベルデザイン
・難易度の自動調整
・フィードバックをより強く演出する仕組み
・フィードバックを短くする
・フィードバックの明示化
・錯覚的演出
・フィードバックのバリエーション
・緩急効果
・音楽や映像のバリエーションの追加
・イベントの開催
・メカニクスの調整
・「ズル」の応用
・「ズル」の阻止
■ゲーミフィケーションの問題
・設計者の驕り-そのゲームはだれに取って楽しいゲームなのか
・プライバシー-パブリックとプライベートの境界線はどこにあるのか
・ズル-プレイヤーと設計者の目的のズレ
ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える 井上 明人 NHK出版 2012-01-25 by G-Tools |