ソーシャルエコノミー 和をしかける経済(阿久津聡 他)

4798128120 「ソーシャルエコノミー」は、日本ならではのソーシャルメディア活用のあり方について考察されている書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 ソーシャルメディアが日本でも話題になるようになり、様々な書籍が出版されるようになりましたが、その多くは海外事例を元にしているケースが多い中、このソーシャルエコノミーでは、副題に「和をしかける経済」と入っているように、日本ならではのソーシャルのあり方について考察されています。
 実際、米国と日本のソーシャルメディアの成功事例を比較すると、ソーシャルメディアの利用比率が違うこともありますが、TwitterやFacebookなどのグローバルに普及しているサービスの使われ方も、実は国によって明確に異なっています。昨日紹介した「オープン・サービス・イノベーション」と似たようなコンセプトも本書では出てくるのですが、あえて共創と漢字をあてているあたりは特に興味深いです。
 
 そういう意味で、米国の成功事例をそのまま真似するのではなく、日本ならではの活用方法を模索したいと思っている方には参考になる点がある本だと思います。
 「明日のコミュニケーション」や「使ってもらえる広告」と合わせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■和のソーシャルと洋のソーシャル
・和のソーシャル
 日常コミュニティの閉鎖性やしがらみにうんざりしながらも、ムラ的な絆を求め、コミュニティ内に和が醸成されるほど高まりあえる関係を好む。
 しがらみにもなりやすいものを、逆に共同体としてのエネルギーに変えていく。
・洋のソーシャル
 「個」のサバイバルゲームに近い。自分を強くし、生き残りやすくするために人間関係を活用する。目的直下型の構造を好む。
■「企画やプランニングで一番重要なのは、真っ先に自分がおもしろがれること」(秋元康)


■ソーシャルメディアとは、「自分発の人間関係の増幅装置」である。企業然とした無難な物言いだけでは、ソーシャルメディアのよさは発揮されない。求められるのは常に一人称的な「個」の気迫。公的情報発信を、わざわざソーシャルメディアでやる必要はない。
■ネットやソーシャルメディアを手に入れた私たちは、「応援する気持ち」を、なにかに結実させられたらという欲望を持つようになっている。
 その欲望の一つが「育て愛」だ。
「未完成なものを、より完全なものにするプロセスを味わいたい」という欲望の形だ。
■第五の経済の形は「共創費経済」となっていくだろう。
 「お互いがサービスしあうこと」を提供物とする経済だ。
■和の共創費は三つの要素から構成される
・共:「個」ではなく「和のある仲間」で楽しむという点
・創:与えられるものではなく、「和のある仲間」で、作り育てることを楽しむという点。
・費:「和のある仲間」と作り育て上げたものを消費するのも、自分たちであると言う点。
■コミュニティ作りのプロセス
・まず「共創のネタ」を放つ
 ↓
・「同好コミュニティ」活性化のため、「宴」を催し続ける
 ↓
・コミュニティに「和」が生まれたら、「祭りのハタ」を掲げ、「同好リーグ」化を導く。
 ↓
・祭りの後に「裾野ソサエティ」を広め、ソーシャルエコノミーの発動を促す。
■B-1グランプリは「富士宮やきそば的町おこし」に引き寄せられた互助会の共同PRイベントである
・B級グルメの祭典ではない
・飲食店だけでは参加できない
・順位を競うことが主目的ではない
■富士宮のやり方
・もともとその地域で親しまれていた地元食を「再発見」する
・地元食を通じて狙うべきは「町の活性化」であって、「地元食の活性化」ではない
・だから直接の利益享受者が牽引する形ではなく、町の有志が牽引する
■期待される効果
・もともと地元にあったものなので、皆が食べてきたという「共通体験」を持てる
・だいたい日常的なものだから、たいていの人が自分たちでもつくれる
・だいたい日常的なものだから、安くて何度でも食べたくなる
・地元の人が地元で消費するから、地元が潤う
・飲食業者だけでない、地元のみんなで応援するから、地元愛が高まる
■ソーシャルエコノミーへの動線
・共益のネタを準備し、投げかける
・共益のネタが共有され、同好コミュニティができはじめる
・同好コミュニティの共感を高めるため、宴を催し続ける
・宴が機能するほどに、人は輪になり、やがて和が生まれだす
・和のある同好コミュニティができたとき、祭りのハタを掲げる
・祭りのハタに刺激され、コミュニティがリーグ化しはじめる
・同好リーグが祭りを目指して共鳴し、拡大&高揚していく
・祭りの本番、ハタを取り合って、コミュニティ間の交流が最大化する
・祭りにより、各コミュニティの結束と同好リーグとしてコミュニティ同士の結束が高まる
・祭りの様子が、またネタとなり、新たな新参者を引き寄せる
・祭りの後、社会的にその同好コミュニティへの関与が高まり、裾野ソサエティが生まれる
・次回の祭りが予定されたとき、新参者がさらに増え始める
・上記が回り出すとソーシャルエコノミーが発動する
・全ての段階で、消費に代わる、和の共創費が生じていく

4798128120 ソーシャルエコノミー 和をしかける経済
阿久津 聡 谷内 宏行 金田 育子 鷲尾 恒平 野中 郁次郎
翔泳社 2012-09-19

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