オープン・サービス・イノベーション(ヘンリー・チェスブロウ)を読むと、インターネット時代ならではのオープン・イノベーションの生み出し方のヒントが得られると思います。

4484121131 「オープン・サービス・イノベーション」は、「オープン・イノベーション」の第一人者であるヘンリー・チェスブロウが書いた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 「オープン・イノベーション」という言葉は日本でも最近徐々に耳にする機会が増えてきましたが、自社だけで新しい技術やアイデアを生み出そうとするクローズド・イノベーションに対して、他社や外部が持つ技術やアイデアを組み合わせてイノベーションを生み出そうとする、文字通りオープンなイノベーションを目指す取り組みです。
 この書籍ではそのオープン・イノベーションの視点に加え、ビジネスを製品ではなくサービスの視点で考えるというコンセプトを組み合わせ、「オープン・サービス・イノベーション」というコンセプトが提唱されています。
 技術の進化やインターネットの普及により、実は自社内だけで閉じてイノベーションを起こそうと取り組むよりも、オープンに外部と連携した方が効率が良くなっているというのはこれまでにも良く言われてきた話ではありますが、いざ自社でそれに取り組もうと考えると、成功している企業であればあるほど、さまざまなイノベーションのジレンマに直面することになります。
 ただ、もし自社だけで引き起こすイノベーションでは時代についていけないのであれば、早急にモデルを変えなければいけないのも事実。
 そんなイノベーションについての課題を強く感じている方には参考になる点が多々ある本だと思います。
 「イノベーションのジレンマ」や「「経験経済」、「メディチ・インパクト (フランス・ヨハンソン)」とあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■コモディティ・トラップ
・製品やビジネスのプロセスに関する知識や知見が普及した
・製造が低賃金の地域に移っている
・新製品への引き継ぎ前に製品寿命が尽きてしまう
■オープン・サービス・イノベーションのフレームワーク
・コモディティ・トラップが進行する世界で差別化を維持するため、ビジネスをオープン・サービスのビジネスと位置づける
・顧客の価値ある体験を創出するために、顧客をイノベーションの共創に引き入れる。
・オープン・イノベーションを利用し、イノベーションのコスト、リスク、時間を減らす。
・オープン・サービス・イノベーションを伴うビジネスモデルに変換し、イノベーションによって利益が得られるようにする。


■オープン・サービス・イノベーションのコンセプトマップ
・ビジネスをサービスとして考える
 情報源の活用
 サービス・バリュー・チェーン
 カスタム化 対 標準化
 製品プラットフォーム
 サービスプラットフォーム
・共創
 顧客の暗黙知
 体験のポイント
 知識の優位性
 顧客もイノベートする
・オープン・イノベーション
 規模の経済性
 範囲の経済性
 参加の拡大
 知識の統合
 支えとなる企業・組織・個人のエコシステム
・ビジネスモデルの変換
 ビジネスモデル活動の一貫性
 ビジネスモデルの慣性
 新たな収益モデル
 フロントエンド/バックエンド組織
 プラットフォームのビジネスモデル
■サービスのカスタム化とサービス提供の経済効率との矛盾をうまく解決できるよう組織構造を刷新。組織を顧客に対応するフロントエンドのユニットに分割し、バックエンドでプロセスを標準化できるようにリンク
・フロントエンドの顧客対応ユニットでは、顧客各自にカスタム化されたソリューションを開発、パッケージし、提供する
・バックエンドの役割は、コストをかけずに個々の顧客のために再構成できる標準サービスを提供する。
■購入者がお金を払う価値があると思うのは製品ではなく、製品が与える効用だ
■サービス・ブループリント(メアリー・ジョー・ビトナー)
 体験ポイントを確認、デザイン、改善するのに役立つ可視化のツール
 顧客がサービスを受ける過程で体験しなければならないステップのプロセスズから始まり、体験ポイントに隠れたさまざまな要素も描かれる。
 顧客が目にする文書や物品、顧客と直に接する従業員、プロセスをサポオーとする裏方の従業員、プロセスを円滑にするサポート体制などが含まれる。
■アクション・バイアス(行動によって物事を成し遂げようとする姿勢)
 状況を分析するよりも、潜在的な可能性を明らかにする新情報を生み出す行動に出る。
■市場調査手法の問題
・顧客は普段の状態や消費行動とはかけ離れた状況で調査される
・顧客が別のことをしている最中に電話やコンピュータで調査される
・顧客が話し合いのためフォーカスグループの会場に連れて行かれる
・サポートラインに電話をかけてきた顧客は、自分の作業を中断している状況にある
■文化人類学的な行動の観点から、調査環境ではなく現実的な環境にいる顧客を観察する
■オンラインでの顧客観察の利点
・顧客が調査する側ではなく自分の環境にいる
・解釈が入ることなく、顧客の言葉で語られる体験が集められること
・早い段階で長所も短所も見つけられること
■ボーモル病(ウィリアム・ボーモル)
 生産性を向上させてきた効率的な分野が経済活動全体の中で小さくなり、効率的でなかった分野が経済活動の主体となること
■マイケル・ポーターのポジショニング・アプローチから資源ベース論への戦略論の移り変わり
・企業の内部要因が生み出す収益性の格差に対するアプローチが十分ではない
・戦略は体系的に計画されない(ヘンリー・ミンツバーグ)
■オープン・イノベーション
 企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること
・社内全てが優秀な人材である必要はない
・外部の研究開発によっても大きな価値が創造できる
・必ずしも基礎から研究開発を行う必要はない
・優れたビジネスモデルを構築する方が、製品をマーケットに最初に出すよりも重要である
・社内と社外のアイデアを最も有効に活用できた者が勝つ
■オープン・イノベーションの三つの型
・アウトサイドイン型:技術や知識の外部調達を通じ、自社の知識基盤を拡張していく
・インサイドアウト型:自社の技術や知識を市場に投入し、知財を販売やライセンス提供する
・連結型

4484121131 オープン・サービス・イノベーション 生活者視点から、成長と競争力のあるビジネスを創造する
ヘンリー・チェスブロウ 博報堂大学 ヒューマンセンタード・オープンイノベーションラボ
阪急コミュニケーションズ 2012-10-20

by G-Tools