ライブドア、新RSSリーダー「livedoor Reader」ベータ版を公開 – CNET Japanを読んで。
livedoorから新しいRSSリーダーがリリースされました。
最初ニュースを見たときは、あれ?ライブドアってBlogリーダーなかったっけ?とか思ってたんですが、どうやら完全にゼロから作り直した模様です。
宮川さんがブログでべたぼめしてたので、試しに使ってみたのですが、確かに凄いです。
デザインもお洒落な感じですし、操作性やレスポンスも良い感じ。
一通り欲しい機能は揃っていますし、レートを使ったフィードの段階評価やピンによるまとめ読み機能など、気合入ってます。
私は個人的に相変わらずBloglinesを使い続けているんですが、これは乗り換えを真剣に考えさせられる一品です。ただ、ライブドアはいつものIDを取り損なっているのが微妙なんですが。
(ちなみに、処理中のときに人のアイコンが走っていて、失敗するとorzっぽいアイコンになるあたりのセンスを見るかぎり、最近入った最速の人が関わっていそうな感じですがどうなんでしょう。)
ライブドアショック後、ひとしきりマスメディアから虚業だ何だとバッシングを受けていたライブドアではありますが、以前にITmediaで「こんな時だからこそ安定したサービスを」という記事でも描かれていたように、実は急増するトラフィックを淡々とこなしてきた技術者集団でもあります。
インスパイア系のサービスが多いイメージもありますが、livedoorフレパがGREEのユーザー数を超えたなんていう話があるのを見る限り、ライブドアショック後もあいかわらずlivedoorIDの登録数は伸びているようですから、今回のlivedoor Readerのような良いサービスを継続して生み出すことができて、USENとの良いコラボレーションができると、案外早くに輝きを取り戻すことができそうな気もしてきます。
お蔵入りになった球団名「ライブドアフェニックス」のごとく、新生ライブドアがライブドアショックから不死鳥のようによみがえることができるのか、注目したいところです。
カテゴリー: ネットコミュニケーションの視点
グーグルは、破壊者か、全能の神か
[R30]: 書評:「グーグル 既存のビジネスを破壊する」を読んで。
すでに、多くの濃いブロガーの間で書評と議論が展開されていますが、私も話題の「グーグル 既存のビジネスを破壊する」を発売前に読ませていただくことができましたので、自分なりの感想を書いておきたいと思います。
書籍についての具体的な書評は、冒頭のR30さんをはじめとする論客にお任せするとして。
個人的な率直な感想としては、この書籍「グーグル」は現在のGoogleの立ち位置を、自分の中で整理するのに非常に役に立つ本でした。
この数ヶ月、自分なりにずっと引っ掛かっていたのは、書籍の帯にも使われている「Google、破壊者か、全能の神か」というような議論。
昨年、自分でも「Googleはネット世界の創造神なのか破壊神なのか」とか「Googleが次に破壊する市場はどこか」とか、Googleの破壊を意識した記事を書いたことがあります。
Googleがあくまで一企業である以上、そういった神学論争的な議論をしても意味がないのは分かっているつもりではいるのですが、そういう議論をしたくなるのがGoogleという会社の特徴でもある気がします。
今回、佐々木さんの「グーグル」を読んで改めて思うのは、Googleを中心としたネット企業が巻き起こしている、富や情報や既得権の再配分の規模の大きさ。
既存の大手マスメディアから、駐車場やメッキ工場まで、これまでの価値感を逆さにしてしまうような規模で、これまでの「持てる者」からこれまでの「持たざる者」にパワーのシフトが起こっている感覚があります。
当然、そんな規模のパワーシフトは、持てる者であった既存事業者からすれば破壊にしか見えないわけですが、持たざる者だった小規模事業者や個人からすれば、新たなビジネスチャンスの創造と言えるわけで。
Googleを中心としたインターネットの未来についての議論が専門家の間で空回りしやすいのは、こういったパワーシフトのどこに自分がいるかで、それに対する視点が全く異なるからというのも大きい気がします。
まぁ、どうも達観している人からすると、この辺りのパワーシフトの議論というのは本来はインターネット自体がもたらす変化として10年前に議論されていたビジョンだったようですので、ようやく本格化したというところでしょうか。
そういう意味では、Googleもインターネット全体の中の一企業でしかないわけですが、そのインターネット時代の新しい価値感を体現する象徴として、Googleが実際の力よりも(期待と不安をこめて)大きく捉えられていて、神扱いされやすい感じもしないでもありません。(佐々木さんは司祭という表現をしていましたが、なるほどという感じです。)
ちなみに、そんなことを考えていて改めて気になるのは、今後Googleの立ち位置はどう変化するのかという点。
極端な例で例えてしまえば、躍進する過程のGoogleのポジションは、民衆から搾取することで大金を稼いでいた悪代官から富を奪い既存の秩序を破壊することで、民衆に富を還元している弱きを助け強きをくじくロビン・フッドやねずみ小僧のようなもんです。
そういう意味では、Googleが利用者から人気があって、既存事業者から煙たがられるのは当たり前かもしれません。
ただ、そのロビン・フッドが統治者の側になったときに、果たして民衆である利用者はどういう反応をするのかというのが個人的には気になります。
やれBMWやサイバーエージェントがGoogle八分にあったという話であれば、まだまだ強いもの叩きで盛り上がれるわけですが。
書籍に書かれていたような、Adsense狩りにあってアカウントを問答無用で抹消されたとか、自分のサイトが検索ロジックの変更で検索上位から消えてしまったとかいう話が頻発してくると、Googleに対する改革者としての期待が、統治者への不満や不信のようなものに変わってしまう可能性は十分あるわけで、改革者のポジションがいつのまにか統治者のポジションになってくることは十分考えられます。
その時に、Googleはどこまで今のビジョンやブランドや立ち位置のようなものを維持することができるのでしょうか?
まぁ、もちろんまだまだGoogleの「強い者叩き」の対象となる企業はたくさんありますから、まだまだしばらくはGoogleはロビン・フッドのポジションでいられるでしょうし、そもそも日本のインターネット市場の統治者はヤフーですから、また議論は全然別になってくるんだと思いますが。
なんにしても、ここ数年のGoogleやそのライバルたちの動向からは目が話せそうにありません。
それにしても、最近ブログで書きたいことはたくさんあるのに、持ち前の筆の遅さも手伝って、全ての話題に乗り遅れている感がある今日この頃です。
ということで、濃い書評を読みたい方はこちらをどうぞ。
・すべてを一度懐疑していく (404 Blog Not Found)
・書評「ウェブ進化論」と「グーグル Google」。そしてメディアビジネスの競争構造の変化。 (FIFTH EDITION)
・書評:「グーグル 既存のビジネスを破壊する」 (R30::マーケティング社会時評)
・「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」佐々木俊尚 (ガ島通信)
グーグルGoogle―既存のビジネスを破壊する 佐々木 俊尚 by G-Tools |
無線LAN共有サービスのFONがインフラただ乗り論に火をつけそう
ITmedia News:個人の無線LANを開放、世界中を“サービスエリア”に──「FON」が日本進出を読んで。
GoogleやSkypeが出資をしたというので話題になった無線LAN共有サービスのFONですが、4月11日に日本参入を発表しましたね。
Skypeは利用者のPCを活用することで、電話交換機網的なネットワークをインターネット上に形成し、無料の電話サービスを実現しましたが。
この無線LAN共有サービスのFONは利用者の無線LANをお互いに利用しあうことで、利用者が無料で利用できる面的な公衆無線LANサービスを実現することを目指しているサービスです。
無料の公衆無線LANサービスと言えば、バッファローが中心に取り組んでいるフリースポットというサービスがありましたが、フリースポットがどちらかというと店舗等の集客目的なのに対し、FONはあくまで利用者同士の協力によるオープンソース的なプロジェクトです。
何でも、昨年11月にスタートしてから、すでに144カ国に2万9000人が登録をしているとか。
まぁ、この数字だけ見ても果たして流行っているのかどうなのかはイマイチ判断できませんが、日本国内の登録者は46人との事なので、これから始まるというところでしょう。
(ちなみにフリースポットは、すでに3663拠点あるようです)
公衆無線LANサービスと言えば、ヤフーやライブドアがサービス展開をしているもののイマイチ盛り上がらない鬼っ子サービスと化していますが、FONの場合に気になるのはサービスが流行るかどうかということよりも、やはり「インフラただ乗り」問題の行方でしょう。
すでにUSENが展開する動画配信サービス「GyaO」やIP電話サービス「Skype」のトラフィック急増をきっかけに、通信会社の経営陣からよく発言されるようになっているインフラただ乗り論ですが。
このFONの場合は、通信会社からするとインフラ自体を勝手に共有されてしまうわけで、GyaoやSkypeのようなアプリケーションよりも、さらに神経を逆撫でされるモデルです。
もちろん、現状のFONのモデルはあくまで他人のアクセスポイントに無料で接続するには自分のアクセスポイントを無料で開放する必要があるので、FONのおかげで回線契約者やISP契約者が激減するという話では無いのですが、まぁやっぱり自分のインフラを勝手に共有されてしまうのは気に入らない話でしょう。
また、Rauru Blogによると、バックボーン網の負荷がより深刻な問題になるのではという懸念もあるようですし、そもそも、ISPの規約上、利用者は勝手に自分の回線を他人に提供してはいけないのではないかという話もあるようです。
まぁ、デジタルガレージの伊藤譲一さんなんかがバックアップして日本参入を発表しているぐらいですから、どこかのISPとある程度水面下で話がついているのかもしれませんが・・・
注目したいと思います。
YouTubeにみるチープレボリューションの凄さ
ハリウッドの注目を一身に集める「YouTube」とは – CNET Japanを読んで。
ビデオ共有サイトのYouTubeの勢いが凄いです。
まだ開設されてから一年ちょっとにもかかわらず、1日の視聴者数が3000万人というお化けサイトになっているそうです。
短期間で急激に利用者を増やしたサイトと言えば、日本では2年で300万人の利用者を獲得したmixiが代表ですが、AlexaでmixiとYoutubeのグラフを比べてみて更にびっくり。
mixiの急増すら比べ物にならない角度で突き抜けています。
もちろんグローバルに利用者がいるYouTubeと、日本だけのmixiを比較するのはあまり意味がないんですが、それにしても凄いですよね。
デジタルARENAで佐藤 信正さんがYouTubeについての詳細の記事を書かれていますが、まぁ何しろ動画が無料で掲載してあるというだけではなく、動画自体は利用者が自由に投稿できて、なつかしのアニメまで山のように揃ってるみたいですから、一日YouTubeで時間をつぶしている人もいるというのも理解できる充実度です。
それにしても、個人的に凄いと思うのが、これだけの利用者の増加をこなしているYouTubeの仕組み。
なんつったって動画ですよ。
ブログとかmixi日記のようなテキストレベルのコンテンツに比べて、はるかにサーバーにかかる負荷は高いはずです。
おまけに現在のところYouTubeは有料メニューもなく、広告すら貼っていない状態で知る限り収入は無いはずです。
会社概要をみるとPaypalによって創業され、VCの資本が結構入っているように見えますが、それにしてもこれだけのトラフィックの急増を、それほどトラブルなくさばいているんだからすごいです。
個人的には、動画だけは唯一P2P技術のような分散技術が重要になってくると思っていましたが、こうもあっさりとサーバーで提供されるとは、本当にびっくりです。
Napsterが話題になった1999年には、音楽の配信ですらNapsterの規模のものをサーバーで構築使用とすれば非常にお金がかかって割に合わないという話でしたが、YouTubeは動画ですからね。
この5~6年にいろんなもののコストが下がってきているということでしょうか。
もちろん、動画自体Flashを使うことで相当圧縮して小さいサイズにしているようですから、いわゆる普通の動画に比べたら負荷はかなり下がっているんでしょうが、それにしてもサーバーや回線にかかるコストはかなりのものがあるはずです。
でも、それをGoogleやYahoo!のような大手ネット企業ならまだしも、1年前には無名だったベンチャー企業が実現できてしまっているわけですから、梅田さんが言っていたチープレボリューションの恐ろしさを改めて感じます。
もちろん、動画の著作権がらみの問題はあいかわらずグレーのままではありますが、米国では、YouTube人気を受けて、似たようなサイトが次々に開設されているようですし、YouTubeが厳しくなれば他のサービスに移るだけでしょう。
今はまだ画質は悪いですが、この調子で技術が進歩すると個人やベンチャーレベルで、品質の良い動画共有サイトを作れてしまうのも、そう遠い先の話ではないような気がしてきます。
コンテンツ事業者の側も、ある程度の違法コピーは見込んだ形でビジネスモデルを組んでいかないといけなくなりそうですね。
まぁ、少なくとも今年は完全に日米共に動画配信元年ということになりそうです。
せっかく日本もブロードバンド大国なわけですから、この分野では日本発で世界で話題になるサービスに出てきて欲しいところですが・・・どうなんでしょう?
Winnyウィルス問題を、政府が本気で解決したいならできること
マスコミと情報収集家が悪化させる「Winny問題」:ITproを読んで。
ITProに、Winny問題がいかにマスコミの報道とそれによる野次馬の増加で悪いスパイラルになっているかという解説記事が掲載されていました。
実際、impressの記事によるとWinnyのノード数は12月に約30万ノードだったのが、3月10日には54万ノードにほぼ倍増しているそうで、一連の情報漏えい事件が利用者を増やす結果になっていることが見て取れます。
先日、「Winnyに関する議論が噛み合わない5つの理由」なんて記事を書きましたが、自分なりの問題解決策を書かずに投げっぱなしにしてしまったので、改めてWinnyウィルス問題を解決するための方法を自分なりに考えてみたいと思います。
ちなみに以下の案は、あくまで安部官房長官に「Winnyを使わないで」とテレビで発言させるぐらいなら、ここまでやればという趣旨の国家レベルでの強攻策案です、念のため。
先日の記事に書いた5つの論点は下記の通りです。
1.著作権問題 (コンテンツ事業者 vs Winny利用者)
2.インターネットただ乗り問題 (ISP vs Winny利用者)
3.ウィルス問題 (ウィルス開発者 vs Winny利用者)
4.情報漏えい問題 (システム担当者 vs Winny利用者)
5.ソフトウェア開発の責任問題 (警察 vs 開発者)
これだけ、問題がこじれると根本的に問題を解決するのは不可能に思えてきますが、シンプルに考えると解決策は簡単です。
国として「Winnyの利用を禁止する」
これだけです。
そもそも、Winny利用者が減れば、コンテンツ事業者もISPもシステム担当者も警察もハッピーなわけで、悲しがるのはウィルス開発者ぐらい。
議論軸は、5つあるものの、目下の国民にとっての深刻な問題というのはなんといっても情報漏えい問題です。
で、その対策も、利用者側ではなく根本的なレベルで実施します。
つまり、インターネット上でのWinnyトラフィックの遮断です。
ぷららが実施しようとしているようなISPレベルでのWinnyトラフィックの遮断を、全ISPが一斉に実施。
この手の対策は、利用者がアンチウィルスを入れるとか、セキュリティソフト会社がWinny特需と喜ぶような中途半端なものではだめです。
ITProの記事にも書かれているように「自分はそこそこスキルがあるからウイルスに感染することはない」と考えている人ほど危ない」わけで、利用者のリテラシーに頼っている限り、必ず誰かがウィルスにひっかかってしまいます。
ISPレベルで遮断してしまえば、誰もインターネット経由でWinnyが利用できなくなるわけですから、ウィルスも活躍の場を失い、情報漏えいしたファイルもこれ以上広がることはなくなります。
ただ、ここで当然問題になるのが「Winny利用者の権利」です。
そこで、「Winnyを改良し、情報漏えいを防ぐことも技術的には可能と主張」している金子氏に国策として改良版Winnyを開発し、配ってもらいます。
もちろん、改良版Winnyが現在のWinnyの変わりになるのが前提なので、ウィルス対策以外の変更はあえてしません。
とにかく暴露ウィルスによる情報漏えいを防ぐのが目的。
つまり、現状の適法なWinny利用者の皆さんに、改良版Winnyに移ってもらうわけです。
で、現在のWinnyの利用はとにかく完全禁止。
ISPによる完全遮断が難しいなら、YahooやGoogleに依頼して、旧Winnyに関する検索は全て強制的に改良版Winnyの国営サイトに誘導するようにしてしまえば似たような効果が得られます。
とにかくそこまで徹底的にやって、Winnyウィルスによる情報漏えい問題はとりあえず解決しましょう。
違法コピーは減らないかもしれませんが、なにしろ情報漏えい問題さえなければ、とりあえず防衛庁や企業の機密情報や私たちの個人情報が収集家の手に渡ることは減るでしょうから、一安心。
もちろんメールベースの暴露ウィルスの問題は残りますが、まぁそれはメールソフトにがんばってもらうとして。
あとは、のんびり著作権問題や開発者責任問題を、気の済むまで関係者の方々に議論してもらいましょう。
そんな無茶苦茶な、と思う人も多いと思いますが、書いてる本人は結構マジメです。
仮に、今回の問題がソフトウェアではなく、ロボットだったらと思って下さい。
利用者の見たい映画やテレビ番組を、利用者の好きなときに映し出してくれるテレビロボ。
著作権問題の観点から、コンテンツ事業者は大反対しているんですが、利用者には大人気で、大量に無料で配布されているテレビロボです。
で、このテレビロボの開発者のお茶ノ水博士が、著作権法違反幇助の罪で警察に逮捕されてしまったとしましょう。
テレビロボの改良自体は止まってしまったわけですが、これに目をつけたウィルス作者がテレビロボに感染するウィルスロボットを開発します。
このウィルスが厄介で、利用者のプライベートなことを他のテレビロボットにしゃべりまくる恐ろしい暴露ウィルスロボ。
防衛庁や電力会社の情報までテレビロボ経由で漏れてしまい、社会問題化しています。
この場合、果たしてこのロボットは放置されていて良いのでしょうか?
当然、政府はこのテレビロボを回収するための手を打つでしょうし、お茶ノ水博士に対策を指示するのではないでしょうか?
どうもソフトウェアの世界だからという理由で、問題が自己責任で放置されているような気がしてなりません。
もし、本当に暴露ウィルスによる情報漏えいが、安部官房長官にテレビで発言してもらわなければいけないぐらい深刻な問題だと思っているのであれば。
いたずらに報道を過熱させて野次馬を増やすだけの対策をするよりも、Winnyの利用禁止まで踏み込んだ根本的な対策をするべきなのではと思ってしまう今日この頃です。
まぁ、この記事は、エイプリルフール用に準備していたのが、思ったより面白くなかったので、マジメな感じにかき直してみたというのが正直なところではあるんですが。
Winnyに関する議論が噛み合わない5つの理由
情報非公開があだ?–トレンドマイクロもWinnyの餌食に – CNET Japanを読んで。
安部官房長官の「Winny使わないで」宣言以降、Winny問題は収束するどころかますます盛り上がりを見せていますね。
セキュリティソフト会社にWinny特需がみたいな話があるかと思ったら、アンチウィルスソフトのトレンドマイクロ自体がWinnyウィルスで情報漏えいしていたという話がでてきたり、JASDAQもだったという話がでてきたり、ぷららのWinny全規制に続いてNiftyもWinnyの規制を発表したりと、ここ数ヶ月Winny関連の記事は増える一方です。
もちろん、今発表されている情報漏えいは過去のものなので問題は収束しているという説もあるんですが、なぜ、これだけ大勢の人が問題だと思っているのに、開発者逮捕から2年も経過して一向にWinnyをめぐる議論は収束の気配を見せないのでしょうか。
個人的には、Winny問題が実に複数の議論軸を抱えてしまっている点が、大きな原因になっていると思っています。
Winnyが日本に投げかけている問題は、整理してみると下記のように5つもあります。
1.著作権問題
インターネットの普及と、コンテンツのデジタル化によって、無料での大量コピーが容易になってしまったというのが本質的な問題。
Winnyは、ファイルの自動キャッシュや匿名性の担保により、利用者が非常に手軽にコピーを入手する手段を提供しており、著作権をコアにしたビジネスを行っている人にとっては大問題。
2.インターネットただ乗り問題
インターネットの利用において、現在は利用者があまり利用しないということが前提の定額料金制が基本になっており、実質どれだけ利用しても最低料金のままで、使ったもの勝ちの状態というのが本質的な問題。
Winnyによって、利用者はブロードバンド回線さえあれば、無料で好きなだけ動画ファイルを入手することができてしまう。そのためにISPはバックボーンを圧迫されてビジネス的にも大問題。
3.ウィルス問題
人気のあるプラットフォームにおいては、そのプラットフォームを利用する悪質なウィルスが登場するというのが、本質的な問題。
Winnyが人気を集めたことで、Winnyはウィルス開発者のターゲットとなりやすくなり、しかも、ファイルが自動的にコピーされていくという性質とあいまって、ウィルスの効果が増幅されやすい。しかも話題になれば模倣犯も増えて、Winny利用者にとっては問題。
4.情報漏えい問題
情報のデジタル化によって、情報が紙時代よりも手軽にコピー、流出しやすくなっているというのが、本質的な問題。
ファイルをコピーするというソフトウェアであるWinnyにウィルスが流行してしまったことで、従業員が意識していなくても情報が漏洩しやすくなってしまったということで、システム管理者にとっては大問題。
5.ソフトウェア開発の責任問題
インターネットにより、個人でも大勢の人に利用される影響力の高いソフトウェアを手軽に提供することが可能になっているというのが、本質的な問題。
Winnyも、P2P技術を活用することで、ほとんど開発者がコストをかけずに利用者がファイル交換をできる仕組みを構築できてしまった。もちろんソフトウェアを開発したこと自体が問題なわけではないと思いますが、それで罪を問われてしまう可能性があるのであれば、開発者としては大問題。
まぁ、これだけ議論の軸があるんですから、Winny関連のメディアの報道や議論のポイントが拡散するのも良く分かりますね。
ある人が情報漏えいは自己責任だといえば、ある人は会社のパソコンを使うのが馬鹿だといい、ある人はコピー目的に使う人が悪いという話になれば、ある人はウィルス作者が悪いといい、ある人はメディアの報道が悪いといえば、ある人はソフトウェアとしては価値があるという感じで、議論が噛み合うわけがありません。
そもそも世界中のファイル交換ソフトが巻き起こした議論は、1の著作権問題ですが、ただこれだけの問題だったら、NapsterやGroksterのように事業者に対して訴訟をして事業を停止させれば良い話。
実際、日本でもファイルローグは訴訟によりサービス停止に追い込まれています。
また2のトラフィックの問題は、そもそもはISP側のビジネスモデルの問題です。
結局、Gyaoが人気が出て「ただ乗り問題」が話題になってしまったように、現在のバックボーン側のISPのビジネスモデルは、結局動画のような大容量コンテンツが頻繁に利用されると破綻するというのが現状。
まぁ、今回のぷららやNiftyのように制限をするというのが無難な対応に思われます。
3のウィルスの問題は、4の情報漏えい問題とセットになっている点が、問題を複雑にしていますが、普通に考えれば利用者の自己責任の問題です。
本来は、ウィルスの対象になっているソフトウェア自体を改善するとか、利用者が勉強してウィルスらしいファイルは開かないとか、利用者が仕事と私用のPCは分けるとか、そういう防衛策をしくのが当然の流れでしょう。
そうやって、一つ一つの問題を個別に見ると、それぞれに対する対応策は明確になるはずなのですが、Winnyの場合には全てが同時に発生しているのが最大の問題です。
そもそも、最初は1の著作権問題が最大の問題だったはずです。
Winny開発者が企業であれば、コンテンツ企業からの訴訟という形でGroksterと同じような民事の法廷闘争になったはずです。
ところが、Winnyが匿名の開発者によるソフトウェアだったため、民事の法廷闘争の道が閉ざされます。
そこで、警察が登場することになり、著作権法違反幇助という罪で開発者の金子氏が逮捕される形になり、5の開発者の責任問題が急浮上するわけですが、結果的にはここで問題は終わりませんでした。
当然、開発者の金子氏が逮捕される形になって、問題が一段落することを期待する人は多かったはずです。
なにしろコンテンツ事業者も、ISPも、システム管理者も、警察も、Winny利用者以外の誰もがWinnyの利用者が減ることを望んでいたはずで。
ただ、結局、開発者の逮捕にもかかわらず、Winnyの利用者が思ったよりも減らないという結果になります。
本来であれば、開発者が逮捕されたソフトウェアを、利用者が使い続けるのは実に不思議な話です。
海外の事例では、大抵訴訟に負けた事業者のファイル交換サービスは、サービスを停止されるなり、人気を失うなりして失速しています。
ところが、Winnyはピュア型のP2Pのサービスのため、サービスが止められないという要素も影響し、開発者の逮捕後も利用者は思ったより減りませんでした。
(一部のデータでは、その後増えたというデータもあったようです)
利用者が減らなかった理由がなぜなのか、本当のところは良く分かりませんが、Winnyによる情報漏えい事件があいつぎメディアで報道されたために、野次馬的にWinnyを利用する人が増えたという説もあります。
日本の法律では、ファイルを不特定多数へのコピー目的でアップロードするのは違法だけどダウンロードは合法というグレーな線引きが、利用者の違法コピーに対する問題意識をあいまいにしてしまったのではないかという説もあります。
(ちなみにフランスでは、アップロードもダウンロードも違法で罰金がかかるようです)
ソフトウェアの開発が停止しているのに、利用者が減らないなんて、改善を止めたらお客さんがすぐに離れてしまう世界で生きている人間からするとウラヤマシイ話ですが、結局、その利用者が減らなかった事実がWinny問題にややこしさを増すことになります。
利用者が減らないために、あいもかわらずISPはWinnyによるトラフィックに苦しみ、ウィルス開発者はWinnyをターゲットにしたウィルスを開発し、それによって情報漏えい事件が引き起こされ、それがメディアで報道され、野次馬がまたWinnyの利用者になる。
そんな余計な問題を誘発したスパイラルが続くことになってしまったわけですから、実に皮肉なことです。
ちなみに個人的には、Winnyの利用者が減らなかったのは、他に類似のサービスがあまり生まれなかったのも、結構要因として大きいのではないかと思っています。
もちろん、海外のサービスを含めWinny以外のファイル交換サービスというのは多々あるんですが、やはり日本では日本語のサービスでないと流行りません。
ところが、Winnyの際に「開発者自身が逮捕される」という開発者のリスクに注目が集まったために、日本ではその後ファイル交換サービス系の開発は一気に影を潜めるようになった印象が強くあります。
海外には山のように類似サービスがあり、人気の流行り廃りがあるのに、未だに日本では2年前に開発が止まったWinnyが注目されてるわけです。
あえて誤解を恐れずに、穿った見方をすると。
Winnyによる著作権問題を何とか沈静化させようと、開発者の逮捕に踏み切ったことが、結果的に類似日本語サービスの登場を阻み、それによってWinny自体を生き延びさせることになり、改善の止まったWinnyをインフラとしたWinnyウィルスによる情報漏えい事件が社会問題化するようになってしまった可能性があるわけです。
どうも最初の開発者逮捕という打ち手が、結果的にみると大きく裏目に出てしまったように感じてしまうのは、私だけでしょうか・・・
(もちろん、今になってそんなことを言っていても意味は無いんですが)
まぁ、安部官房長官の記者会見以降、一説によるとWinnyのトラフィックが3割とかいうレベルで減ったという噂もあるようですし、セキュリティソフト各社はいろんな対策は打ち出してきてますし、金子さん自身もオズテックという新しいファイル交換ソフトの開発に携わっていることを発表したりといろいろあるようですから、これで少しは問題解消に進展があるのかもしれませんが。
ダラダラ書いていたら、ちょっとあまりに長くなってしまったので、続きはまたの機会にしたいと思います。