N900iLで火がついたモバイル・セントレックスブームを考える

【緊急連載 モバイル・セントレックスの理想と現実】(1)PASSAGE DUPLE唯一の端末「N900iL」が抱える“秘密” : IT Pro ニュースを読んで。

 FOMA/無線LANデュアル端末であるN900iLの登場によりモバイル・セントレックスが注目を浴びているようです。

 モバイル・セントレックスとは携帯電話を会社の内線電話としても使うことができるIP電話システムのこと。
 N900iLは通常のFOMAでの携帯電話利用に加えて無線LAN経由で通話ができるためが、会社の中では無線LAN経由で内線電話として利用し、外に出たら普通の携帯電話として使うことができると言う仕組みが実現できます。

 同じような仕組み自体は、昔から構内PHSを使えば実現することができましたから、ある意味目新しいサービスではないのですが、NTTドコモのPHSサービス終了宣言も影響して、モバイル・セントレックスに注目が集まっているようです。

 特にNECのN900iLは2004年4月に発売されると発表された後に、遅れに遅れてようやく11月に発売されたという経緯もありましたから、期待が蓄積されていたのもあるかもしれません。

 IT Proでは5回にわたる連載特集が組まれているのですが、個人的に特に注目しているのが第2回で書かれている「N900iLを使った内線電話システムにも,多機能電話機と同じ機能が必要だろうか?」という点。

 現在でもほとんどの企業の机の上に置いてあるのは、ボタンがたくさん並んでいる多機能電話機でしょう。
 保留中の回線を取ったり、短縮ダイヤルの設定をしたり、多機能電話機では本当に様々な操作を実施することができますが、実は個人的にはほとんどその機能を活用している人を見たことがありません。

 そもそも携帯電話であれば、電話は本人にかかってきますから、他の人に電話を転送する必要はほとんどありません。
 電話帳も内蔵のものであったり、ブラウザ経由でオンラインの電話帳を活用したりすることができますから、固定で短縮ボタンを利用する必要もありません。
 記事で「ビジネススタイルさえ変われば,今までのPBXでできた機能の70から80%はいらなくなる」と発言されているのもうなづけます。

 正直「多機能電話機」とはいうものの、いまだに電話番号をいちいちダイヤルしなければいけない時点で、携帯電話よりはるかに「低機能電話」だったわけで。
 利用者の利便性を考えると、多機能電話機が置き換えられていくのも時間の問題と言うことでしょう。

 
 さらに4回目の記事によると、外線もかけられるN900iLの登場で、内線専用の携帯型IP電話機が苦戦しているという興味深い事態になっているようで、使い勝手や機能の面で洗練されてきた携帯電話の強さを感じます。

 今後は、スカイプのような無料ソフトフォンの無線LAN対応端末も出てきますし、PHSのウィルコムのような低料金の端末を会社の中でも外でも使うと言う使い方もあるでしょうから、企業内の無線内線端末と言う視点では当然競争が激しくなることが予想されます。

 ただ、やっぱり、外出先で安定して使える携帯電話のモバイル・セントレックスの優位性というのはしばらく続きそう・・・そんな風に感じたニュースでした。

存在感を増しつづけるGoogleに思うこと

我々はもはや単なるテクノロジー企業ではない~米Googleが自社を定義を読んで。

 Googleが、自社はもはやテクノロジー企業ではないと宣言したそうです。

 なんでも「我々はテクノロジー企業として始まり、ソフトウェア、テクノロジー、インターネット、広告、メディアが全て1つにまとまった会社へと進化した」ということだそうで、記事では特にメディアが加わった点に注目しています。

 実際、最近のGoogleのサービス展開の速さは目覚しいものがあります。
 まがいなりにも同じIT業界に生きている人間としては、「はたしてGoogleやそのライバル企業に自らの守備範囲を飲み込まれずに生きていけるのか」と正直考えずにはいられません。

 そんな中、はてなダイヤリーで復活した梅田さんの「英語で読むITトレンド」で、「次の10年」とグーグルの弱点を考えるという記事が投稿されています。

 
 現在のGoogleの勢いやポジションを考えると、とてもGoogleの弱点など想像もできない気もしますが、そう言われればGoogleが登場する前にMicrosoftの支配に対して同様のことを感じていたのも、また事実。

 梅田さんの「何年かに一度、ゼロから出発した会社が新しいパラダイムを引っさげ、その時代を支配する企業を倒す」という言葉を読んで、イーマーキュリーの笠原さんが「インターネットにある機会は全て利用し尽くされたと誰もが考えたときに、そもそものルールを変えてしまうような企業が登場する。」という元Yahoo!CEOのティム・クーグルの言葉を引用して社内の説得をしたという話を思い出しました。
 やはり重要なのは、そう信じることができるかと言うことでしょうか。
 

 丁度、noglogの「Googleの現状認識(10-kファイリングより)
」においても、「Yahoo!、Microsoftなどとの競争において、MicrosoftによるOSとのバンドリング、ポータルサービスのコンテンツ・ラインアップ、宣伝広告費の負担、などが脅威となり得る」とGoogleの今後の課題が取り上げられています。
 
 検索にしても、Adwordsのような広告サービスにしても、類似のサービスがYahoo!やMSNから出てきていますから、これまでのような独走は確かに難しくなってくるでしょうし、サービスの多様化によって、最近はその独特なブランドの良さにも微妙に変化が見られます。

 また、冷静に考えればそもそも日本では依然としてYahoo!が大きな影響力をもっていますし、Googleのアプローチが必ずしも全ての顧客をカバーできると言うものでもないでしょう。

 もちろん、だからといってGoogleの勢いが急に衰えるのは当面想像もできませんし、次にどうなるのかというのはまだほとんどイメージが湧かないのですが・・・

 改めて梅田さんの言葉を引用します。

「グーグルがあまりにも凄い達成をしてしまったので、萎える人は萎えてしまう。もうできることはないんじゃないの? 会社を創業したってグーグルに会社を買ってもらうのが関の山じゃないの? というふうに。けれどそんなふうに思うことは全くない。」

 そう信じることが、やはり大事ですね。

PodCastingは日本でもブレイクするか

ITmediaニュース:米国で勢いを増すPodCastingを読んで。

 正直、Podcastingについて本質をよく理解できていなかったのですが、アメリカでは確実にブームになってきているようですね。

 何でもMP3プレイヤーを所持しているのが全米で2200万人で。
 その3割にあたる600万人もの人がPodcastingを体験したことがあるというのです。

 ろくにPodcastingを使ったことが無い人間からすると、いくらなんでもそんなに高くは無いだろうと思ってしまいますが、この辺りは主な移動手段が自動車と言う米国ならではの面もあるのかもしれません。

 電車通勤の日本なら、電車の中で読書もできるし、PSPや携帯電話でゲームもできるというものですが、自動車での運転中にできることは音楽やラジオを聞くぐらい。アメリカはもともと音声系のコンテンツに対するニーズが高いような気もしてきます。 

 ちょっと振り返って調べて見ると、iPod情報局が「米国のニュースサイトなどでPodcasting(ポッドキャスティング)という言葉をよく見るようになった。」と取り上げているのが2004年10月。
 それから既に半年が経過しようとしていますから、600万人と言う数字もあながち外れてはいないのかもしれません。

 、Ad Innovatorでは、AutoblogのPodcastにVolvoがスポンサーとしてつくようになったというニュースが紹介されていましたし、メディア・パブによると、Podcastingの基礎技術をラジオ放送協会が購入するそうで、米国ではPodcastingをビジネスに生かすための様々な取り組みも始まっているようです。

 ここで個人的に気になるのは、Podcastingが日本でも米国と同様に普及するのかと言う点。
 改めてlivedoorのねとらじデジオを見てみると、想像以上に様々なコンテンツがあるのに驚きますが、米国ほどの波はまだ来ていないようにも見えます。

 ラジオNIKKEIが「日本の放送局ではじめてPodcastingに対応
していたらしいという記事も見つけましたが、こちらも本格的な展開はまだの模様です。

 ただ、考えて見るとBlogにしてもSNSにしても、あいかわらず日本は米国に比べて数年遅れでブームが来ます。
 ライブドアのニッポン放送買収の影響で、ネットとラジオやテレビの融合に関する議論も進んでいますから、今年はPodcastingのような音声コンテンツが日本で注目されてもおかしくはありませんね。

 もちろん生活におけるラジオの位置付けが米国と日本ではかなり異なりますから、同じ規模のブームが来るとはなかなか思えませんが・・・

ブログが人を転職させるのか、転職する人がブログを書くのか

100SHIKE:アルファブロガーは荒野を目指す、のかを読んで。

 なんでも「先日とある席で、とあるアルファブロガーが転職を考えているという話になり、そういやブロガーの転職って多くないか?と思ったので調べてみた。」とのこと。

 個人的にも同じような印象を受けていたのですが、実際に並べて見るとまた印象がさらに違いますね。
 数えて見ると全体の半分の方が経営者などの自分がトップの人で、ある意味社長ブログ。
 残りの半分の方のうち、さらに半分の方が転職経験者という結果です。

 100SHIKEでは「やっぱり外部に評価されると、内部とのギャップか人を外に引っ張るんだよな。」と結論付けているのもうなづけます。

 ちなみに、個人的な印象としては、ブログを書いている人が外に引っ張られると言うよりは、長期にわたってブログで情報発信をするような人と言うのは、もともと「そういう人種」なのでは、と思ったりもします。
 まぁ、鶏と卵論みたいな話ですが。

 関連して思い出したのが、R30::マーケティング社会時評で、書かれていた企業人の四分類

どんな事業でもその始まりから終わりまでに必要なタイプの人間とは、大きく分けて4種類だ。市場機会があると思われるところに危険を省みずパラシュート降下したり、暗闇に紛れて上陸作戦を敢行したりして橋頭堡を築く「コマンドー」、その地域に橋頭堡が築かれたら集団で上陸し、巧みな波状攻撃でもって戦力を面展開し占領する「歩兵」、そして占領された地域に入って統治し、その地域から上がる収益をなるべく豊かにする「警察」、最後に、侵攻に失敗したり撤退する時に、後ろから追ってくる敵をうまく手なずけて被害を最小限にとどめる「しんがり」だ。

 この分類を元に振り返ると、アルファブロガーに選ばれるような個人情報発信をする人って言うのは、そもそも「コマンドー」的な人が多いのではないかなぁと思ったりするのです。

 もちろん、こんなことは人によってケースバイケースですから、まとめて語るのは間違っているのでしょうが。
 「歩兵」的な人は集団行動ですから個人で情報発信をするのはあまり良しとされないでしょうし、「しんがり」的な人の仕事はあまり情報発信なんて必要なく、「警察」的な人はそもそもそういう行為を取り締まるのが仕事。
 
 そう考えると、個人情報発信が好きな人って言うのは、そもそも「コマンドー」的な人が多く、その結果、独立したり転職したりと言うケースが自然と多くなるのでは?・・・という感じもしてきます。

 もちろんブログのような個人情報発信の手段が、転職や独立に好影響を与えたり、有効なツールとして使えるのは明らかな事実。

 NDO::Weblogの伊藤さんは、以前講演で、「ブログのおかげで執筆や転職の機会に巡りあえた」というような話をされてましたし、ガ島通信さんのケースなんかは、まさにブログが転職のきっかけになっている印象があります。
 これまでは大企業の中にいる人が外の人に評価してもらう機会と言うのはなかなかありませんでしたが、ブログなんかで情報発信していると自然に外の世界の評価というのが分かってきますから、今後はそういう逸話がどんどん増えるんでしょうね。

 まぁ、あんまりこういう風に囃し立てると、「ブログを書くやつは転職予備軍だから気をつけろ」みたいに短絡的に捉える管理職の人も増えてしまいそうなのが、個人的には心配ですが、企業側もそういう人にどう社内で活躍してもらうかと言う視点が大事になってくる気がします。

日記系ブログとmixi日記の力関係はどうなるか?

spring_special: データで見るブログこの1年を読んで。

 先日紹介したテクノラティジャパンの面々が、Blogzineの一周年特別企画マガジンに登場しています。

 詳細はインタビュー記事をごらん頂くとして、興味深いのが、日米のブログ動向に関する数字の比較。
 もともと日本のインターネットユーザーの数は米国のおよそ半分なのですが、ブログ閲覧経験者は米国の4分の1。
 まだ社会認知度は米国の現状に比較すると半分というところで、この辺が日本のブログブームの現状と言うところでしょうか。

 もちろん、そうはいってもブログのアクティブユーザーが既に70万人を超えているそうで、このまま行けば2005年末には270万にも届くのでは?という大胆予想もされています。
 

(テクノラティの佐藤さんが作成した日本のブログに関するデータがこちら)

 ちなみに70万人と聞いて思い出したのが、SNSのトップをひた走るmixiのユーザー数。
 4月には50万人突破も視野に入ってきているそうで、こちらも綺麗な指数関数のグラフを描いて成長を続けています。
 おまけに、mixiの3日以内のログイン率は相変わらず70%をキープしているそうで、高いアクティブ率を誇ります。

 ここで個人的に気になっているのが、インタビュアーの方が「日本のブログを見ると、今は大きな影響を持つブログというより、日記系のものが目立ちますね」と表現している現在の日本のブログ事情と、mixi日記のような限定公開ができるSNS上の日記の関係です。 

 個人的にも、今後は「大きな影響をもつブログ」と「日記系のブログ」というのが、二つの大きなブログの流れになると思うのですが、気になるのははたして日記系のブログをネット上に公開する行為がどれだけ続くのか。

 
 あくまでアフィリエイトなどの副収入狙いであれば、日記系のブログでも人気ブログを狙うという手はもちろんありますが、もし数人の知り合いに対して公開したいだけなのであれば、mixi日記と言うのは結構現実的な選択肢です。
 実際、私の周りの知り合いも、ブログからmixi日記に流れた人が何人もいます。

 記事では、テクノラティの金井さんが「アメリカでは実名をブログに出すのが主流ですが、日本のネットでは元々匿名文化が育っています」と指摘していますが、最近mixi日記がネットで実名を公開する世界への扉を開いている印象も強く受けます。

 丁度米国では、「米AOL、10代の若者向けにプライバシー制御機能付きブログサービス」を開始するというニュースもありましたが、今後は「大きな影響をもつブログ」を目指したい人は公開のブログ、「日記系のブログ」で一部の人とコミュニケーションしたい人はmixi日記やAOLのような公開制限のできるブログ、という流れができてくるのかなぁと感じたりします。

 そういう意味では、一部のブログ事業者にとって、mixiのような閲覧者もログインして実名状態で利用するサービスは、かなり潜在的な脅威になってくるようにも思いますが、どうなんでしょう?
 まぁ、もちろんmixi日記も、結局利用者が増えてくるとオープンなネットと変わらない状況になってしまうのですが・・・

テクノラティのRSS検索が可視化するSMOの世界

β.: Emerging Technology研究会 3月例会を読んで。

 ET研究会でテクノラティジャパンの佐藤さんのプレゼンを聞く機会がありました。(当日の詳細は上記の伊藤さんのブログを読んでください。)

 実は、これまで、Googleのような検索サービスとテクノラティのようなRSS検索の違いをいまいち理解できていませんでした。
 ひとこと「検索」と言ってしまえば、RSSで配信されているブログのコンテンツも、結局はウェブサイトのページになっていたりするわけで、Googleに任せればいいような気がします。

 なんでテクノラティのようなRSSサーチが注目されているんだろう?というのが正直な感覚でした。

 しかし、いろいろ話を聞いていると、どうやらRSSサーチには様々な可能性がありそうだというのが分かってきました。
 しかも、まさに自分が興味の合った分野にピンポイントで。

 まず、個人的に受けた印象から言うと、RSSサーチの最大のメリットは、ブログを中心としたネット上の個人の意見をリアルタイムに検索できるところにあるようです。

 Googleのようなサイト検索では、基本的に検索の対象となるデータはクローラーなりスパイダーと呼ばれる自動ロボットにより集められます。
 データが集められるタイミングは巡回の時間次第なわけで、そのページがいつ作られたのかは判断の使用がありません。

 これがテクノラティのようなRSS検索においては、更新Pingをもとに新規に作成されたページを数分でインデックス化することができるそうです。
 そのため、終わったばかりのサッカーの試合の結果だとか、ライブドア・フジテレビ問題の、最新情報をブログ経由で入手することができます。

 さらに驚いたのは、この更新情報がちゃんと時系列でテクノラティに保持されていること。
 個別のテーマの記事が、どういう順番で掲載されていったのかを時系列で見ることができるわけです。
 しかも、テクノラティでは時系列だけでなく記事のリンク情報まで分析を行っているらしく、各ブログが誰の記事を読んでその記事を書いたのかという口コミの流れを可視化することができるのです。

 ここで、あらためて思い出したのが絵文録ことのはで松永さんが翻訳されていた「これからのオンラインビジネスのキーワードは、ブログとRSSを使ったSMO(社会的マーケティング最適化)」という記事です。
 
 SMOとは「Social Marketing Optimization」の略で、誤解を避けずに言ってしまえば、いかに口コミを誘発するかという従来の手法を、ブログ時代に向けて言い直した感じでしょうか。

 これまでの口コミと言うのは、基本的に地域のコミュニティや会社のオフィスなど、リアルな小さな単位の積み重ねでの口コミをイメージすることが多かったですが。
 個人がネット上で情報発信できるブログ時代においては、個人の口コミを誘発することで、いわゆる祭り的な爆発的な盛り上がりを作ることができるというイメージでしょうか。 

 テクノラティのデータを適切に用いれば、一つ一つのニュース単位で口コミの広がりを補足でき、個別のニュースにおけるハブとなる人のリストを抽出できるわけです。

 おそらく、ニッチな分野においては大手ニュースサイトよりもコミュニティへの伝播力の強いブログなり個人ウェブサイトというのが存在するはずで、そういった個人ウェブサイトに企業が広告の出向依頼を直接行う、という時代が来るのかも・・・

 そんな未来を感じてしまったテクノラティのプレゼンテーションでした。
 当日の資料の一部は、プレゼンターの佐藤さんのブログに掲載されていますので、是非参考にしてください。