GrooveのトップがMicrosoftのCTOになるということの意味

ロータスノーツの生みの親、マイクロソフトCTOに就任へ – CNET Japanを読んで。

 MicrosoftがGrooveに出資して以降、いつかGrooveがMicrosoftに取り込まれていくだろうと言うのは多くの人の見方でしたが、思ったよりも早く買収される形になりましたね。

 ビル・ゲイツがロータス・ノーツの生みの親であるRay Ozzieを高く買っていると言うのは昔からの噂でしたが、記事にも「長年、Rayと、彼が率いるチームを迎え入れたいと考えてきた。今回、その願いが実現することになり、とても嬉しく思っている」とビル・ゲイツの発言が紹介されており、三顧の礼で迎え入れたとでも言うべきところでしょうか。

 ちなみに「マイクロソフトCTOの就任」という見出しが躍っているため、おどろきのコメントをされている方が多いようですが、ちょっと細かく見ると事情は複雑です。

 まず、マイクロソフトのテクノロジーのトップは実質ビル・ゲイツですから、マイクロソフトのCTOがいわゆる普通の会社のCTOとは格が違うのは明らか。
 おまけにマイクロソフトにはすでにCTOがいます。
 しかも二人も。(Craig MundieDavid Vaskevitch

 まぁ巨大な会社だから役員が多いのは当然なのですが、要はCTOというのは「最高」技術責任者ではなく、技術執行役員の一人ぐらいの位置付けということになります。
 記事にも書いてあるように、「Ozzieは以前CNET News.comとのインタビューのなかで、独立を保ち株式公開にこぎ着けることが同社の当初からの意向だ」と述べており、今回の買収は明らかに当初のプランからは外れています。
 まぁ、いろいろな取引があったことは想像されますが、過去にMicrosoftが追加出資を決めた後にLotus1-2-3の生みの親にあたるMitchell Kaporが退任したなんて事もありましたから、今回Ray Ozzieがマイクロソフトの政治の中でどういう地位を占められるのかも注目したいところです。

 
 ちなみに、これでますます数が少なくなってしまったP2P業界の企業に生きる人間としての最大の興味は、今後GrooveのP2Pならではのコラボレーション機能がMicrosoftのOffice製品やOSとどのように生かされていくのか。
 
 Ray OzzieがMicrosoftの社内政治に直面するのと同様に、Grooveの技術も今後既存のMicrosoftの技術やロードマップとのすり合わせの苦しみに直面するであろうことは容易に想像がつきます。

 Forrester Researchアナリストのみたてでは、次期バージョンにはもう間に合わなさそうな雰囲気ですが・・・どうなるんでしょう?

アラートとカスタマイズ化で、Googleニュースいよいよ本領発揮

もう1つの日本語新サービス「Googleアラート」–検索結果をメールでお知らせ – CNET Japanを読んで。

 ここのところ、Googleの新サービス発表が相次ぎましたね。
 一番分かりやすく話題を呼んでいるのは、検索キーワードを入力中に表示してくれるGoogleサジェストでしょうが、個人的に非常に注目しているのはGoogleアラートと、昨日発表されたGoogleニュースのカスタマイズ機能

 Googleアラートは事前に登録しておいたキーワードに関するニュースや検索結果の変動をメールで通知してくれるサービスで、Googleニュースのカスタマイズ機能は、Googleニュースの配置自体を自分の好きなように変更することができるサービス。
 特にカスタマイズ機能は、分野の位置を変更出来るだけでなく登録したキーワードに関する記事も表示できるきめ細かさ。しかもドラッグで設定できるから簡単。

 まぁ、百聞は一見にしかず、Going My Wayのkengoさんが分かりやすい動画を掲載されているので見てください。

 Googleニュースは、登場後かなり話題になったものの、多くの人が「面白いけど飽きた」と言っていましたね。
 これまでのGoogleニュースは、多くのニュースを寄せ集めて表示しているだけで、結局のところ自動化されているだけのニュースポータルでしたから、利用者からすれば編集者が編集しているかコンピュータが編集しているかの違いだけ。
 興味分野が合わない人からすれば、ただ記事が多いだけのサイトにしか過ぎなかったわけですから、まぁ当然と言えるでしょう。

 それがGoogleアラートとカスタマイズ機能によって、Googleニュースは「企業から提供されるニュースサイト」から「自分で作れる自分のためのニュースサイト」に変貌します。
 Googleが自分のためだけに、自分専用のニュースポータルとメールマガジンを毎日どころか24時間作りつづけてくれるわけです。

 つまり、ニュースポータルの主導権が、提供する企業から個人に変わります。
 こんなこと、人間の手作業でできるわけはありませんから、このサービスはまさにGoogleならでは。
 いよいよというかようやくというか、Googleニュースの本領発揮と言うところでしょう。
 

 これまで私はGoogleニュースでP2Pとか特定のキーワードをブックマークして、検索結果ページを毎日見に行っていましたが、その必要も無くなりそうです。
(個人的には、その結果をRSSで配信してもらえるとなお良いのですが、まぁRSSリーダーの普及率の低さを考えると、メールでやるのが現実的なんでしょうね。)

 
 さて、これで気になるのが既存のメディアとGoogleニュースの力関係。
 最近、一時Googleニュース掲載を拒んでいたメディアが、Googleニュースに登場するようになっているそうです。
(噂によると、何でも自社サイトにAdsenseの広告を特別料金で掲載できるという条件と、バーターでOKになったとかならないとか・・・)

 そういう意味ではGoogleニュースを見ていれば、ほとんどのサイトの記事を読めると言う下地は整っていると言えます。
 はたして、これでどれだけの人がGoogleニュースを利用するようになるのか・・・?
 注目したいです。

ブログ事業は、まったく儲からない?

ヒット中の「ブログ」、いかにお金を生むビジネスに結びつけるかが最大の課題 / デジタルARENAを読んで。

 日経パソコンに、現在のブログの事業環境がわかりやすくまとめてありました。

 1月末にYahoo!ブログが無料で2GBを売り物にして参入したことによって、それに対抗したgooブログの無料3GB、有料1TB(!)化など、いよいよブログ事業も体力勝負に入ってきたようです。

 まぁ、普通にテキストで書いていてGBを超えられる人なんていないので明らかに行き過ぎとは思うんですが。
 やはりユーザーが大きい数字が好きなのはデジカメも、ADSLも、ブログも一緒のようで、事業者の間ではどこまで追従するべきか、かなり議論を呼んでいるようです。

 
 以前、ブログ戦国時代という記事で、「最近のブログ事業者の乱立を見ていると、個人的にはISP事業の黎明期とだぶってしまいます。」と書いたことがありますが、無料サービスがメインという意味では明らかにISP事業よりも厳しい事業環境になりつつある気がします。 

 結局、通信事業者やポータル事業者のような体力のある事業者のうち誰かが、自社サービスの利用者向けの「囲い込み」という名目で、無料で質の高いサービスを提供しつづければ、その他の事業者に収入が入る見込みはかなり低くなります。
 ヤフーやgooブログを提供するNTTレゾナントからすれば、ブログへの設備投資はたいしたこと無いわけで、ブログ専業の事業者はきめ細かいサービスやニッチなサービスで対抗しない限り、無料サービスの体力勝負に挑む意味は無いでしょう。

 最終的には、ブログサービスは過去に流行った無料ホームページサービスやホスティングサービスと同様、結局あんまり儲からない事業だったね。という結論になりそうです。

 もちろん誰も儲からないわけではなく、儲かる事業者は存在します。
 その代表格がシックス・アパートやドリコムのようなブログサービスを事業者に売っている会社。

 まぁ、オフィスの2003年問題みたいに、オフィスビルをたてまくればオフィスビルのオーナーは賃料が値下がりして困るけれども、建設業者はとりあえず建ててくれれば儲かる、というのと同じ構造といえるかもしれませんね。
 そういう意味では無料でブログを利用できる私たちこそが最大の受益者ということでしょう。
 

 ちなみに、そんな中、気になったのはYahoo!有料会員が500万IDを突破したという記事です。
 年3500円程度のサービスですが、500万IDということはそれだけで年150億円以上の収入になり、さらにこの人たちはYahoo!オークションなどネットサービスのヘビーユーザーと見ることができます。

 つまり、ヤフーは有料会員限定で質の高いブログサービスを提供する素地があるわけで、収入がまわるブログサービスと言う意味では、やっぱりブログもヤフーの一人がちになるのかも?と思ってしまったりします。

 まぁ、そうはいってもブログブーム自体が、実質どれほど書き手が増えているのかも個人的には疑問がありますし、もう主な書き手はサービス移動が面倒なレベルにあるかもしれませんから、そう簡単にはいかないかもしれませんが・・・

NTT西日本のパケットゼロで、固定と携帯の境界が消える?

ブロードバンド回線と赤外線通信で携帯電話のパケット通信料が無料に – CNET Japanを読んで。

 NTT西日本がやってくれましたね。

 このニュースはちょっと通信に詳しくない人からすると分かりづらいニュースかもしれません。
 簡単に説明すると、今回のこの「パケットゼロ」というサービスは、移動通信事業者の専用端末であった携帯電話を、PCやPDAと同じように通信回線を選択できる端末にしてしまうものです。
 
 現在、家やホットスポットで無線LAN経由で定額ブロードバンドが利用できるように、携帯電話も赤外線経由でブロードバンド回線を利用できるようにするサービスですから、定義としてはあくまで携帯電話という端末が固定通信を利用しているだけ。
 だからNTT西日本という地域通信会社がサービスをできるわけですが、利用者の視点から見ると単純にパケット代が安くなる可能性があるサービスになるわけで、固定通信と移動通信の境界を更にあいまいにする大きな一歩と言えると思います。

 個人的に注目したのは、サービス提供事業者の中に「ビー・ユー・ジー」の名前があったこと。
 ビー・ユー・ジーには、過去にNTTがISDNの普及に苦心する中、NTTと組んで低価格ISDNルータのMN128を開発し、ISDNの急速な普及に貢献した歴史があります。

 今回のパケットゼロステーション開発にあたっても、その頃のヒューマンネットワークが貢献しているのは創造に難くありませんね。

 ちなみに、このパケットゼロは当然NTTドコモの収益を下げてしまう可能性のあるサービスの開始ですから、NTTグループ全体で見るとビジネスの価値は微妙。
 今回のNTT西日本のサービス開始までには相当な激しい議論があったことが容易に想像できます。 
 
 ただ、固定通信事業者からすると、自宅に電話回線を引かずに携帯電話で済ませてしまう人が増加していることが増加していることや、自宅のインターネット回線を定額PHSで代用している人がいることを考えれば、固定通信と移動通信の戦いは既に始まっている戦い。
 規制にしばられて攻められっぱなしの中、ようやく見つけた突破口という感じもあります。

 もちろん、赤外線と言う指向性の強い形態で、このサービスがブレイクするのかどうかは実際の利用シーンとの組み合わせ如何でしょう。注目したいところです。
 

 それにしてもNTT西日本は、先日も定額制のビデオ・オンデマンドサービスを開始するなど、最近かなり前向きなチャレンジをしている印象が強いですね。
 NTT西日本は、東日本に比べると経営的に難しい位置にあると言われ続けていますが、その難局こそがこのチャレンジのエネルギーになっているということなのでしょうか。

ハワード・ストリンガーCEOはソニーの新たな時代を作れるか?

ソニー出井氏、「ちょっと寂しい気もする」–代表交代の会見にて – CNET Japanを読んで。

 会社ですからいつか経営陣交代するものですが、さすがに今回の人事には驚きましたね。

 このタイミングというのもそうですが、なんといっても誰もが驚きなのは、ソニーのトップにいよいよ日本人以外の人間がつくことでしょう。
 アメリカ人がソニーをアメリカの会社と思っている、というのが良く聞く笑い話でしたが、これでソニーも名実ともに真のグローバル企業の仲間入りと言う感じでしょうか。

 日本人としては少し寂しい気もしますが、まぁグローバルカンパニーという視点で考えると、逆に遅かったぐらいの人事なのかもしれません。

 今回の人事が自発的なものなのか、委員会の圧力によるものなのかは良く分かりませんが。
 出井さんが14人抜きで社長に選ばれたときも、海外のメディアで「Idei Who?」という見出しがあったという逸話があったように、このタイミングでこういう人事を発表してくるところがいかにもソニーらしいと言えるのかもしれません。
livedoorコンピュータの記事によると、なんとハワード・ストリンガー氏はナイトの爵位も持ってるそうですが・・・)

 ちなみに個人的に注目したのは、プレステ成功の立役者だった久夛良木さんが、社長になるどころかソニーの取締役からも外されたこと。

 一部では次期社長の呼び声も高かった久夛良木氏ですが、いくら今回社長になれなかったといってもまだ50代。
 本来なら退任させられる年ではありませんよね。

 今後は、「ゲームビジネスグループ担当COOとしてゲームビジネスを統括し、新たにグループ役員に就任する予定」だそうですが、その前はセミコンダクタからホームエレクトロニクスまで中核事業を幅広く担当していたことを考えると、印象としては完全に「久夛良木外し」。なんとなく出井、安藤両氏に道連れで退任させられた感じを受けます。

 まぁPSXも中途半端でしたし、PSPでもいろいろありましたから、久夛良木さんにとっては人事のタイミングが悪かったと言うのもあるのかもしれませんが、これで久夛良木さんも元のゲームの世界に逆戻り。
 プレステシリーズ自体も、今後はゲームを中心にしたフィールドに回帰するのでしょうか?

 もちろん、果たして今回の人事でソニーが復活を遂げることができるのかどうかは、これまた未知数。
 CEOのハワード・ストリンガー氏がコンテンツ畑で、社長の中鉢良治氏がエレクトロニクス事業の生え抜きと、見た目のバランスは良さそうに見えますが、はたしてそのバランスに意味があるのかどうかは微妙です。
 
 出井さんいわく「久夛良木氏と中鉢氏を比較することはできないが、中鉢氏はよく周囲の声を聞いたうえで適切な時期に適切な決断ができる人物だ。」とのことだそうですが、R30::マーケティング社会時評では中鉢氏の社長就任は「エレキ出身の人を誰か上に置かなければならないという政治的妥協の産物ではないのか?だとすると今後も厳しいなあ。」と厳しい指摘がされています。

 ハワード・ストリンガーCEOにしても、経営陣のほとんどはいまだ日本人なわけで、いくらグローバル企業のソニーとはいえ、いろいろと障害もあることでしょう。
 コンテンツ事業の中心は現在は米国ですから、活動拠点の問題なんかもでてきそうです。
 
 今回の人事が後から振り返って、さすがソニーの人事は違うと言われる出来事の一つとなるのかどうか、注目したいと思います。

検索会議2005に垣間見るヤフーのオープン戦略の行方

Passion For The Future: 検索会議2005:YAHOO!をいじりまわすのが今年のトレンドに?を読んで。

 土曜日に開催された検索会議2005に参加してきました。

 今回は前回の音楽会議に続いての、アカデメディア第二回にあたるのですが、一日に三部構成でしかも参加無料。
 スポンサーのヤフーさんの力の入れようが伝わってきます。

 私は営業系の人間にもかかわらず、第三部のエンジニア編に参加させてもらいました。
 何でかと言うと、最近のヤフーの戦略が気になってるから。
 何しろ講演されたのはYahoo!本社のJeremy Zawodny氏とyongdong wang氏。こんな機会めったにあるもんじゃありません。
 

 とりあえず、検索会議の当日の様子はたつをの ChangeLogや、見事に個人賞を獲得したtryingを見ていただくとして。

 個人的に特に印象に残ったのは、ヤフーの方々の意外なほどオープンな雰囲気。

 これまでのヤフーはどちらかというと、GoogleやAmazon、ブログ系のサービスなどに比較すると開発者にオープンではなかったような印象があるんですが、今回の検索会議では逆の印象。

 橋本さんが「最近のYAHOO!の動きで注目しているのは、YAHOO!検索をユーザが改造できるYAHOO!WebServiceの公開や、YAHOO!DevelopersNetwork運営など、技術コミュニティに積極的に”いじらせる”オープン戦略です」と書かれているように、戦略的にも最近のヤフーは少し雰囲気が変わってきたように感じていましたが、二人のプレゼンからも非常にオープン志向なのが伝わってきました。
(ただ単に私が知らなかっただけなのか、今回のプレゼンターのお二人のキャラクターなのかはわかりませんが)

 橋本さんが「ここにきてYAHOO!はまず検索技術をオープンに使えるようにしましたが、今後、他のY!サービスにも広げていくのではないかという予感が今日の講演にはありました」と書いているのもうなずけるほどです。

 エンジニアの視点で、やはりブランドイメージが良いのはGoogleだと思いますが、Googleに比較するとYahoo!の技術レベルや開発チームと言うのは、その市場での存在感と比較すると、これまで意外なほど扱いが少なかったということができるかもしれません。
 それを、3月1日に発表されたヤフーAPIの公開をきっかけにして、そんなエンジニアに対する存在感を増し、Googleに負けないヤフーを中心としたエンジニアコミュニティを形成しようとする意気込みが強くあるようにも感じました。

 上場後のGoogleはCNETで「グーグルのAutoLink機能ははたして「邪悪」なのか」なんて記事を書かれるぐらい、良すぎたブランドの反動がでつつあるみたいですから、タイミングとしても良いのかもしれません。

 インターネットの主導権争いは、これからますます激しさを増すのでしょうね。 
(それにしても、おみやげの豪華さにはほんとに驚き・・・)