携帯電話業界という定義の終わりの始まり

[R30]: ソフトバンク×ボーダフォン関連まとめを読んで。
 ソフトバンクのボーダフォン買収をめぐって、様々な議論が始まっています。
 ソフトバンクが日本テレコムを買収したときから、一部の人の間ではそのうちボーダフォンもソフトバンクに買収されるんじゃないのという憶測が流れていましたから、まぁ想定の範囲内と言えば想定の範囲内なんですが、実際に決まるとやはりインパクトは相当大きいですね。
 私自身も、昔「通信会社は最終的には3位までしか生き残れない?」なんて記事を書いたときにソフトバンクは「ボーダフォンなりウィルコムなりを買収して、移動通信もトップ3入りを目指すべき」とかって無責任に書いてたんですが、今回の買収決定には素直にびっくりです。
 また、あらためて買収劇を巡るブロガーの皆さんの反応を読んで回ると、さらに考えさせられるものがあります。
 ボーダフォン自体は、Jフォン時代の写メールは脚光を浴びたものの、最近はすっかり安売り携帯になりかけていたわけで、「そんな負け組を買収したところで何ができるのか」ということを言うことはできます。
 ただ、ソフトバンクのこれまでの通信産業参入のステップを振り返ると、今回の買収がそれにとどまらないのは火を見るより明らかでしょう。
 ヤフーBBでADSLに参入したときも、業界の度肝を抜く低価格で参入し、ISP業界を仰天させたのに始まり。
 BBフォンでは利用者間無料や全国統一料金を当然のように打ち出して、利用者にとっての長距離電話事業者の存在意義を消してしまい。
 日本テレコム買収後には、固定電話の基本料金という聖域部分にまで参入を表明して、既存通信事業者の度肝を抜きました。
 今回のボーダフォン買収をきっかけに、ソフトバンクが携帯電話業界に置いても同様のアプローチに出ることはほぼ間違いないでしょう。
 R30さんなんかは「SBが引き金を引く、携帯電話業界の「大殺界」」と表現していますが、そうなる可能性は十分あります。
 
 通信会社の視点からすると、そんな誰も儲からない戦略なんてなんでわざわざとるんだという話ですが、やはりそうやって個別の事業単位で収支を考えてしまう時点で、規制産業に慣れてしまっているということなんでしょう。
 思い返せば、ヤフーBBが始まったときにも、ソフトバンクの超低価格戦略に対して「すぐにガス欠するよ」とうそぶく通信事業者は少なくなかったのを記憶しています。
 結局、ARPUをベースに事業を考えていると、通信事業自体での利幅を無駄になくしてしまう低価格戦略というのは、論理的に考えればどう見ても異常にしか見えないわけです。
 ただ、多くのブログで書かれているように、一歩引いてみると、ソフトバンクの戦略は実にシンプルです。
 
 通信事業自体で仮に利益が出なかったとしても、Yahoo!を中心としたポータルの広告やコンテンツで利益が出ればよいわけで。
 消費者一人ひとりからもらうお金のARPUで考えているから、どうしても個別の事業の収支に目が行きがちですが、グループ全体の収益性で考えればありなわけです。
 これって、まさにGoogleがAdsenseを中心とした広告費による収益を元に、周辺のサービスを無料で提供しまくっているのと同じ構図。
 渡辺さんが書いているように「Yahoo! JAPANのGoogle化」というのが、しっくり来ます。
 改めて考えると、これまでの携帯電話業界というのは激しい競争をしているようでいて、結局同じ考え方の同じビジネスモデルの既存3事業者(+ウィルコム)の戦いだったわけで、携帯向けコンテンツ産業なんてのもその定義の中で成り立っていた産業。
 ソフトバンクという業界の異端児のボーダフォン買収によって、業界の壁が取り払われてしまった今、今後の携帯電話業界という定義があいまいになってくるのは間違いなさそうです。
 おまけに、今後はFMCとかトリプルプレイとかソフトフォンとか、技術的には業界の壁が更に無くなっていくのが明らかなわけで。
 現在の既存企業はどのようにこの変化を捉えるべきなのか。
 あらためて、御手洗さんの「競争のフェーズは完全にシフトした」という話を思い出しながら、はたして通信企業とは何かネット企業とは何なのかというのを考えずにはいられません。

コトラーのマーケティング思考法 (フィリップ・コトラー)

コトラーのマーケティング思考法 昨年、タカヒロさんに読んだ方が良いよと教えられて読んだ本です。
 コトラーと言えば、まさにマーケティングの権化みたいな人ですが、この人の凄いのはやはり時代に合わせて理論をちゃんと進化させてくるところですね。
 大昔にマーケティング・マネジメントを買った時にはその分厚さに圧倒されましたが、この本は内容もコンパクトで読みやすいです。
 
 どうしてもいわゆる「マーケティング」というとこの本の中で定義されているバーティカル・マーケティング的なコンセプトになってしまいがちですが、この本で書かれているラテラル・マーケティング的なアプローチの重要性が上がってきていることを痛感します。
 個人的な印象としてはブルーオーシャン戦略と似たようなコンセプトを感じましたが、そういう時代になってきているということかもしれません。
 マーケティング関係の仕事をしている人にはお勧めです。

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なぜソフトバンクはdigg型ではなくオーマイニュース型を選んだのか?

韓国「オーマイニュース」にソフトバンクが出資–3月には日本法人も設立 – CNET Japanを読んで。
 ちょっと前の記事になりますが、韓国の参加型ニュースサイトとして有名な「Ohmynews(オーマイニュース)」にソフトバンクが出資して話題になりましたね。
 
 3月に設立されるオーマイニュース・インターナショナルという日本法人にいきなり6億円以上出資するというのも驚きですが、本体に出資しつつ日本法人を設立するという手法は、インターネットブーム前のYahoo!への出資を彷彿とさせますから、いろんなことを想像してしまいます。
 個人的にも、1年半前FPNニュースコミュニティを手探りで始めた頃にオーマイニュースの存在を知り、非常に影響を受けたのもあり、いろいろと調べた経緯があります。
 なにしろ韓国でのオーマイニュースの盛り上がりは非常に大きなものがあり、いろんなところで取り上げられていましたし。
 ただ、いろいろ調べた結果、日本ではオーマイニュースのようなものは投稿型のニュースサイトはブレイクしないのではないか、という結論に至ったのも事実です。
 時事通信の湯川さんもブログにかかれていますが、オーマイニュースの成功は、その当時の韓国で変革を求める人々のエネルギーが大いに蓄積していて、保守的な既存メディアに変わる存在としてオーマイニュースがそのエネルギーのはけ口になったという政治的な背景をなくしては語れません。
 日本では、なんだかんだ言って既存メディアにも様々な立場のメディアがありますし、2ちゃんねるのようなオーマイニュースとは違う形での消費者参加型メディアも存在しましたし。
 最近は、ブログなりmixi日記のようなもので、個人個人が自分のサイトで書くという行為の方が広がっていますから、そういう意味でも勝負ありと言う印象があります。
 (逆にオーマイニュースの人気が高い韓国では、ブログはそれほど人気がないんだとか。アバター型SNSのCyworldの影響も大きいのかもしれませんが)
 ただ、ヤフーもグループに存在するソフトバンクがてこ入れするとなると、ちょっと話は変わってきますね。はたしてどういうビジネス展開になるのか興味津々です。
 ちなみに、個人的に気になったのは、diggのようなコミュニティ型ニュースサイトが注目を集めている中で、あえてソフトバンクが旧式のモデルにも見える投稿型ニュースサイトに出資したという事実。
 Web2.0の視点から考えれば、今クールなのは当然diggのようなコミュニティの集団によって編集がなされるニュースサイトの方でしょう。
 特にベンチャー企業や個人にとっては、diggのような仕組みの方が数人のエンジニアで手軽に開発できる上、コンテンツは他のサイトやブログのものを無料で流用する形ですからリスクも低く簡単に始められます。
 実際、diggは数人で始めたにもかかわらず1年であっという間にSlashdotに迫る人気サイトに成長しました。
 日本でも、はてなブックマークのポータルが同じようなポジションにあるかもしれません。 
 ただ、この手のサービスはあくまでコンテンツのフィルターを行っているだけで、実際の記事コンテンツを作り出したり保有しているわけではありません。
 もちろん、人気が出ればフィルター部分のページビューは稼げますから、diggやはてなブックマークのように、フィルター部分やコメント部分にGoogle Adsenseを貼り付けて広告収入を得るようなビジネスはできますが、肝心の記事コンテンツを流用したビジネスや、記事の広告や記事を読んだ後に発生する行為から収入を得ることは難しいわけです。 
 当然、それが良いとか悪いとかいう話ではありません。
 ただ、この場合、既存メディアはdiggやはてなブックマークに編集部分は取られても、最終的な記事へのトラフィックは得られるというのが重要なポイントです。
 今回のソフトバンクのオーマイニュースへの投資は、それとは逆に記事というコンテンツ自体を生み出す仕組みに投資したといえるわけで、そういう意味ではおおげさに言えば既存メディアとバッティングする存在に投資しているように見えてきてしまいます。
 湯川さんのブログでは、今回のオーマイニュースへの投資は、ソフトバンクの「2010年の、世界中のインターネットニュース・インフラ「情報ハブ」の地位の確立」という目標への第一歩に過ぎないという見方も紹介されていたりして、そういえば、孫さんは以前日本のメディアを買収しようとして断念した歴史があったなぁーとかいろんなことを考えてしまったりします。 
(ライブドアのPJニュースの後から満を持して本命登場という意味では、球団買収のときのライブドア落選→ソフトバンクのダイエー買収ともかぶったりしますが)
 とりあえず湯川さんがソフトバンクに取材に行かれるようですから、インタビュー記事を楽しみに待ちたいです。

mixi日記に慣れたら、ブログにも挑戦してみて欲しいと思う

 先日から、自分なりの「ブログのススメ」をまとめ始めていますが、「ブログを多くの人に読んでもらえる方が良いとは限らない」という記事に対して、鋭い指摘を頂いたので、ちょっと寄り道をしようと思います。
 まず、ekkenさんには「多くの人が読むことも、頭に入れておこう」というトラックバック、Doraさんには「コミュニケーションを主とするなら、ブログよりまずSNSをやってみるのがいいのかも」というコメントを頂きました。
 お二人の言うことは至極ごもっとも。
 これから書こうと思っていたことを先に書かれてしまったので、話をはしょると。
 ekkenさんの言うように、「ブログに書く」ということは、ターゲットを絞って書いたとしてもそれ以外の人に読まれるリスクがあります。
 それを意識せずにネット上に本音やプライバシーをさらしてしまって、炎上したり痛い目にあった事例は後を絶ちませんし、最近はテレビや雑誌でも「ブログの危うさ」みたいな話が増えつつあります。
 そういう意味では、Doraさんの言うようにmixi日記のようなアクセス制限のかけられるSNSで始めた方が安全ですし、なにより、知り合いとのコミュニケーションを目的にネット日記をやるなら、そもそもmixi日記の方が向いてます。
 以前、みたいもん!のいしたにさんがmixi日記を道場と表現していましたが、そういうことで良いんだと思います。
 普通の人はmixi日記から始める方が無難だと思いますし、私もそちらを勧めます。
 ただ、個人的には、それでもやっぱり一度ブログに挑戦してみて欲しいなーと思います。
 「ブログは自分のために書くべきだ」とか「ブログを多くの人に読んでもらえる方が良いとは限らない」とか、ちょっとブログに否定的な感じで書き始めてしまったので、勘違いされた人もいるかもしれませんが。
 私が強調したかったのは、むやみに多くの読者に読まれるブログを目指したり、アクセス数を増やしたりする必要はないんじゃないかという点です。
 当然、新しいブログの書き始めは読んでくれる人も少ないでしょうし、コメントやトラックバックのような目に見えるリアクションも少ないですから、テンションを維持するのも結構大変です。
 ブログを書けばすぐに多くの人が読みにくるもんだと思っていると、思いのほか誰にも読んでもらえないという事実とのギャップに落胆して、すぐにブログをやめてしまう人も多いみたいです。(くどいようですが、実際、私も2回挫折しました(汗))
 また、読者数を増やすことが目的化して、やたらとスパムトラックバックとかに走る誘惑に駆られてしまうのも寂しいですから、やっぱり最初は読者も増えないことを前提に、自分のためにブログは始めるべきじゃないかと思うわけです。
 でも、その分、ブログを続けていると、いろんなことが楽になったり、良いことがあったりします。
 
 昨日、ちょうどブログブームの火付け役でもあるシックスアパートさんのイベントに参加させてもらって改めて思いましたが。
 ブログは人によって書いている目的も違えば、それによって得られる結果も実に多様です。
 例えば、ブログを書いている目的が、知的生産のツールだったり、コミュニケーションのツールだったり、パーソナルメディアのツールだったり、仕事だったり、趣味だったりと、人によって多彩なら。
 それによって得られる結果も、自分が少し賢くなることだったり、友達との会話が楽になることだったり、アフィリエイトの収入だったり、他のブロガーとの出会いだったり、執筆依頼だったり、ヘッドハンティングだったり、炎上だったりと、実に多彩。
 でも、これってある程度ブログを継続して書かないと、実感できないことでもあるのが難しいところです。
 なかなか、言葉だけでは説明できないわけで。
 まぁ、とにかく、せっかくこんな面白いツールが無料で利用できるわけですから、是非もっと多くの人に試してみてもらいたいと思うわけです。

ブログでトラックバックの方法を練習するために

 この記事は、All Aboutのトラックバック記事の関係で作成しました。
 ブログは書いているけど、まだトラックバックを送ったことが無いという人に、手軽に練習をしてもらうために作成した記事です。
 実は私も始めてブログからトラックバックを送ったときに、やり方が良く分からなくて5回ぐらい同じ事を繰り返してしまい、相手に慌ててお詫びのメールをしたという恥ずかしい過去があります。
 この記事については遠慮は要りませんので、気が済むまでトラックバックの練習をしてみてください。
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日経新聞にインタビュー記事が掲載されました。

 3月1日付けの日経新聞夕刊に、ソフトフォン、Skype関連でインタビューをうけた記事が掲載されました。
 想像以上に大きく写真が掲載されていたのもあって、久しぶりの友達や先輩からいろいろメールを頂いて恐縮しています。
 やはり、日経新聞の影響力って大きいんだなーと、改めて実感していたりします。
 日経新聞 3月1日 夕刊
 インターネット情報スクエア vol76
 「インターネットで電話が進化する」 
 アリエル・ネットワーク プロダクトマネジメント室 マネージャ 徳力基彦