私たちは、インターネットに恩返しをする責任があるということ。

 「突き抜けろ!限界論 OBIIミーティング」を開催しますを読んで。
 今日開催されるOBIIのイベントでパネラーをさせていただくことになったのですが、おそらくメンツ的にそんなに話す時間はないと思うので、個人的な思いをブログに書いておこうと思います。
(本当は前回の記事のすぐ後に書く予定だったのが、ノロウィルスあけでインフルエンザにかかってしまい、ダメダメな12月を過ごしてしまったというのが実際のところですが)
 先日のRTCカンファレンスでパネラーをさせていただいた時にも、ちょろっと話しましたが、私が今の仕事に携わるようになった上で、忘れられない言葉があります。
「私たちはインターネットからたくさんの物を得ているんだから、
 インターネットに何かを還元する責任があると思うんですよ。」
 日本技芸の御手洗さんに言われた言葉です。
 RTCカンファレンスでもつい喋ってしまって、kwmrさんにもブログに書かれてしまったし、もう時効だと思われるのでこのブログにも書いてしまいますが、その言葉を言われた当時、私はAMNに入ることを断り続けていました。
 5年近く務めているアリエルに対して強い恩義を感じているのもありましたし。
 自分がAMNで何ができるのか自信がないというのもありました。
 もっと適任な人がほかにいると思っていましたし。
 とにかく自分以外にいい人を見つけてくれればと思っていました。
 
 ただ、御手洗さんにその言葉を言われる前後の議論で身にしみたのが。
 実は、私はそういったことを言い訳にして、単に逃げていただけだったのではないかということ。


 ブログを書くようになって。
 FPNの運営をするようになって。
 アルファブロガー投票企画をするようになって。
 ブログウォッチにのめりこむようになって。
 ブログ関連のイベントをいろいろやってみるようになって。
 私自身の人生は大きく変わりました。 
 ブログのおかげで、それまでには考えられないほど執筆や講演活動を依頼されるようになりましたし、書籍を執筆したり、テレビに出させていただくこともありました。
 本業の認知度向上にも非常に良い効果がありましたし、何より一人ぼっちで壁にぶつかっていたころに比べて、はるかにいろんな出会いが増え、ネットワークが段違いに広がり、考え方も視野も大きくかわりました。
 でも、御手洗さんに言われて気がついたのですが。
 私は、そのインターネットやブログから得られたメリットを、ただ自分のために使っているだけで、それをインターネットやブログコミュニティに還元しようとは全くしていませんでした。
 もちろん、当時私はアリエル・ネットワークの1社員だったわけで、アリエルの事業を立ち上げるのが最大の責務であり、インターネットの未来をどうこうとかいうのが仕事でなかったという現実はあります。
 でも、同時にブログによって人生を救われた一人のブロガーとして、インターネットやブログから大きなものを得ていたわけですが、それをインターネットに返すという考え方は、全くと言っていいほどありませんでした。
 そもそも、そんなこと自分にはできないと思っていましたし、自分がやることではないと思っていましたし。
 Yahoo!やGoogle、その他大勢のインターネット事業者が頑張ってくれればいいんだと思っていたのです。
 
 そんな私の思考回路が如実に反映されていたのが、アルファブロガー投票企画です。
 最初にノリで投票企画を実施してみて。
 思った以上に注目されてうまくいったので調子に乗って自分がやってみたかった座談会や書籍化やイベントを次々に実施してみて。
 私はそこで満足してしまい、同時にアルファブロガー投票企画が自分にとって手に負えないものになってしまったと感じるようになります。
 Heartlogicの小林さんにも指摘されてしまいましたが、私はアルファブロガー投票企画を形上継続はしたものの、アルファブロガーという言葉自体にかける思いや背景を知ってもらおうと努力することは、自ら諦めて放棄してしまっていたのです。
 
 私は、インターネットやブログに、これだけいろんなものを与えてもらったのに、それにタダ乗りしているだけだったわけです。
 
 そう思って周りを改めて振り返ると。
 当時、すでに周りの人たちは、それぞれ自分なりの方法で、皆さん、何かしら行動をとられています。
 百式の田口さんは、100SHIKI PR Boardをはじめ、さまざまな方法でブログを盛り上げる方法を探っていましたし。
 梅田さんはウェブ進化論などの書籍を通じて、インターネットの可能性を幅広い層に伝え始めていましたし。
 コグレさんやいしたにさんも、「クチコミの技術」を通じて企業の人にブログの可能性を伝える活動を始めていましたし。
 アルファブロガー・アワードを続けるように清田さんに説得された時にも「責任」ということを言われました。
 
 当時の私は、それは彼らだからできる活動であって自分には関係がない話だと割り切ってしまっていたのですが。
 でも、それは、自分で自分に限界を作っている行為。
 自分はインターネットを消費する側の人間であって、インターネットを支えている側の人間ではないと、自分で勝手に線引きをしていたわけです。
 
 実際にはインターネットって、私たち一人の声や思いや、行動で形作られているわけで、ブログを書いている一人として、それを理解したつもりになっていたのに。
 やっぱりまだまだ心の底では、昔の癖で、インターネットを変えられるのは一部の特権階級的な人たち、自分はそれを使う人、と線引きをしてしまっていたわけです。
 本当は、自分みたいな5年前に全くインターネット業界に知り合いがいなかった人間でも、ブログを通じてアルファブロガー投票企画のようないろんな意味で議論を呼ぶような企画を実施してしまうことができてしまう時代なわけで。
 「インターネットは個人の思い付きが、ついうっかり影響力を持つ奇跡のツール」で、実は、一人一人が自分のできることの限界を忘れて、いろんなことに挑戦してみると、意外に実現できてしまったりする時代だったりするわけで。 
 それを最も実感していた人間の一人のはずなのに、自ら線引きをしてしまっていたのは、いま振り返ると恥ずかしい限りです。
 そんな私が偉そうに書けることではないのですが。
 これって、私だけでなく、意外に多くの人に当てはまる話だったりするのでは、と思ったりします。
 インターネット上の問題だとか課題だとか、ついどこかで他人や事業者任せにしてしまってませんでしょうか?
 「○○すべきだ」と思っても、実際に行動したり、言葉にするのはちゅうちょしてしまったりしていませんでしょうか?
 まぁ、とはいえ、では自分がこの半年、心を入れ替えてインターネットやブログをめぐる環境を変えようと動いてみて、何かかえられたのか?と言われると、実施できたことはまだまだ本当にたいしたことではないのも事実なのですが。
 でも、やっぱりインターネットを作っているのは、インターネットを利用している私たち自身なわけで。
 他人事のように議論するのではなく。
 誰かがやってくれればいいのにと、他力本願になるのではなく。
 それを皆でどうやって越えていけばいいのか、それを皆で考え、そして考えるだけでなく、小さなレベルでも実際に行動に移していくことが大事なんじゃないかなーと思います。
 なんだか相変わらずまとまらないエントリーになってしまいましたが、OBIIのセッションでここまで自分語りをする時間はないと思われるので、あとから「あー徳力はこういうことを言いたかったのか」と思っていただければ幸いです。
 ということで、自分が決意を忘れないようにするための自分語りのエントリーはこのあたりで終わりにして。
 来年は、前向きなブログにしたいと思います。
 皆さん、今年も本当にお世話になりました。 
 来年は、今度こそ有言実行の年にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

“私たちは、インターネットに恩返しをする責任があるということ。” への2件のフィードバック

  1. わたしがAMNを通じて挑戦していきたいこと

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