グリーン革命 (トーマス・フリードマン)

4532314410 「グリーン革命」は、「フラット化する世界」の著者としても有名なトーマス・フリードマンが、環境関連問題の課題や事業の可能性について考察した書籍です。
 フラット化する世界に非常に大きな影響を受けたこともあり、こちらの本も買って読んでいたのですが読書メモを書いてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 我々は環境問題をどちらかというと、経済やビジネスの足かせとなる義務や責任として考えがちですが、実は環境問題に真剣に取り組むことで、ビジネスにおける競争優位も確立することができる、というのがこの本で提示されている視点です。
 
 この書籍自体は米国に対するメッセージが中心になっているのですが、逆に日本が成功事例として紹介されており、日本人にとっては日本ならではの事業の可能性として、一つの光明を見いだすことができる本と言えるのではないかと思います。
  
 先日の「コカ・コーラ上海ツアーでも感じましたが、この書籍で書かれているように日本が環境問題に対する最先端の事例であり続ければ、当然中国は日本の最新技術を売り込む非常に有望な市場となるわけで、あらためて日本の地理的優位性を感じてしまったりもします。
 昨今続く暗いニュースや政治的混乱から、日本の未来を悲観的に感じてしまっている方に、是非読んで欲しい本です。
【読書メモ】
■「グリーンとは、電力を生み出す単なる新方式ではない。グリーンとは国力を生み出す新方式なのです。」(カーネギー財団 デビッド・ロスコフ)
■温暖化、フラット化、人口過密化する世界で急激に深刻化している5つの重要な問題
・供給が細りつつあるエネルギーや天然資源への需要の増大
・産油国と石油独裁者への莫大な富の集中
・破壊的な天候異変
・電力を持つものと持たざるものを二分して起きているエネルギー貧困
・動植物が記録的な速さで絶滅し、生物多様性の破壊が急速に進んでいること
■「サウジアラビアとリビアは、テロとの戦いにおいてアメリカに全面的に協力する同盟国と見なされているが、昨年自爆テロその他の攻撃を行うためにイラクに来た外国人勢力の60%が、両国の出身者だった」(ニューヨーク・タイムズ)


■石油政治の第一法則
 国民のエネルギーや想像力や起業家精神を引き出さなくても、地面に穴を掘るだけで政府が歳入を増やすことができる国では、自由は狭められ、教育予算は不足し、人間の発展が疎外される。
■地球惑乱(ハンター・ロビンス)
 地球の平均気温の上昇は、じっさいのところ、ありとあらゆる異常な気象現象の引き金になる
■「所有権の総コスト」のつけを払わなければならない
・エネルギーの需要と供給、石油独裁主義、気候変動、エネルギー貧困、生物多様性の喪失については、ティッピングポイントをすでに超えている
・こうした物事のつけが、目に見え、算定でき、査定でき、逃れられなくなっている
 
■「経済を生かし、成長させるには、消費する必要があります。しかし、私たちは、消費を増やすとともに、保護も増やすことができます。」(グレン・ブリケット)
■エネルギー・インターネット
 IT革命とET(エネルギー技術)革命が合体し、一つのシステムになる
■エネルギー需要の曲線の頂上と谷間をならすことで、エネルギー効率を高め、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの利用を増やして、いまよりも少ない発電所で、もっと成長できる
■原油価格をあまり急激に上げないように
 西側の政府と市場がそれに対応して、風力、太陽熱その他の再生可能エネルギーの大規模なイノベーションが引き起こされるのを恐れたからだ。(サウジアラビアの石油相 シャイフ・アハメド・ヤマニ)
■バブルは金を浪費し、悲劇も引き起こすが、そのいっぽうで、すさまじい勢いでイノベーションを促進し、つぎの大きな好景気、バブル、破産という流れをこしらえる配線や配管の資金源になる
■政府は、税と教育を通じて、何百万にんもに禁煙や過度の飲酒をやめるよう呼びかけている。経済が炭素を吸い、ガソリンをがぶ飲みするのをやめるように、おなじことをやる必要がある
■わかりやすい価格シグナルと、わかりやすい規制は、つねにイノベーションを生みやすい環境を醸成する
■ほとんどの専門家が、日本は地球上でもっともエネルギー効率のいい先進国だという。 日本の人口と経済はいずれもアメリカの40%だが、パリに本部を置く国際エネルギー機関(IEA)によれば、日本のエネルギー消費はアメリカの25%以下である。
 日本がこれほど節約にこだわるのは、資源に乏しく、エネルギーの大部分を変動の激しい中東から輸入しているという意識が強いからだ。
■アメリカがクリーンパワー問題でリーダーシップをとれば、中国は追随しなければならないと考える。
■私たちの親が、「もっとも偉大な世代」だったとするなら、私たちは「再生世代(リ・ジェネレーション)」になる必要がある (マイケル・デル)

4532314410 グリーン革命(上)
伏見 威蕃
日本経済新聞出版社 2009-03-20

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