「インバウンド・マーケティング」は、Hubspot社のブライアン・ハリガン氏が書いたマーケティングコンセプトの書籍です。
半年前に友澤さんに勧められて読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
インバウンドマーケティングについては、丁度高広さんがアドタイで連載して話題になっていましたのでそちらを読んで頂く方が分かりやすいかもしれません。
・アメリカで注目を集めている”Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(1)
この書籍で語られているのは、従来のマーケティングをアウトバウンドの強制的なメッセージ配信と位置づけ、それに対してインバウンドにするべきだという定義。
個人的にこの本を読んでパッと思い出したのがセス・ゴーディンの「パーミッション・マーケティング」。
パーミッションマーケティングでは従来のマーケティングをインタラプションマーケティングと呼んでいたのと根本的な構造やメッセージは同じなんですが、パーミッション・マーケティングがメールマーケティングの時代のものだったため、許可を取った後には結局アウトバウンドなメッセージ配信という形になりがちだったのが、インバウンド・マーケティングにおいては検索やソーシャルメディアなど、10年前に出版されたパーミッション・マーケティング時代から進化した要素を丁寧に取り入れて、実践的な手法を展開しているのが特徴と言えると思います。
そういう意味では、ある意味インバウンドマーケティング的なアプローチの価値は、企業のビジネスブログを書いていた人たちなら必ず実感していたはずですし、テーマを絞ったブログを書いている人もこのコンセプトに近い考え方をしている人も多いと思います。そういう意味では、インバウンドマーケティングを読んで何を今更と思う方は意外に多いかもしれません。
ただ、ここまでそういった動画やブログのようなコンテンツ発信と、SEOやSMOを体系的にまとめていた本はあまりなかったと思いますし、何と言っても「インバウンドマーケティング」というフレーズでカテゴリを定義したのは非常に大きいと感じます。
高広さんがHubspotのツールを日本に持ってくるのもあり、今年は日本でもインバウンドマーケティングやHubspotが注目されそうですが、基本的なコンセプトを理解するために、原書であるこの本にあたっておくのは良いと思います。
ソーシャルメディア時代ならではのマーケティングの可能性を整理して考えたい方にも参考になる点が多い書籍だと思います。
「パーミッション・マーケティング」と「次世代コミュニケーションプランニング」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■結論を言おう。
今日の消費者は従来のアウトバウンド・マーケティングの強制的なメッセージに辟易しており、それを完全にブロックする技術に熟達しつつあるのだ。
■「あなたが伝えたいこと」ではなく、「人々があなたについて語っていること」が重要
ウェブサイトを「メガホン」とするのではなく、「ハブ」とするべきなのだ。
■ウェブサイトの現状把握
・ウェブサイトの現時点での登録者数
(RSS登録者とメルマガ登録者、ソーシャルメディアのフォロワー数)
・ウェブサイトへ外部からアクセスする際の入り口の数
(リンク数、検索経由のキーワード)
■突き抜け戦略
・市場の伝統的な境界線を踏み越え、代替のアイデアを発想する
・既存のルールが支配する市場の中でも、とにかく、何かしらの「世界一」を目指す
■突き抜けたコンテンツを作り上げるためのヒント
・ブログ:業界についての1ページ程度の記事
・白書:市場関係者向けのトレンド、新製品情報等についての5~7ページ程度の白書
・動画:業界についての2~3分程度の動画
・ウェビナー:業界でのトピックに関するオンライン・セミナー
・ポッドキャスト:ラジオ番組形式の、業界エキスパートへのインタビュー等の10~20分程度のプログラム
・ウェブキャスト:オンラインでのライブビデオショー等
■LinkedInでグループを立ち上げる
人々があなたのグループに参加すると、ユーザーのプロフィールにあなたのグループ用の小型ロゴが表示される
■ユーチューブを活用するための4つのアドバイス
・実験すること
・完璧を目指したり、磨きすぎないこと
・撮影機材に過剰投資しないこと
・投稿した動画にキャプションを入れたり、クリッカブルエリアを動画に追加し、動画同士をリンクさせる
■行動喚起モデル「VEPAの法則」
・Valuable
・Easy To Use
・Prominent
・Action Oriented
■ユーザーに有益なオファーを提供する
・ウェブ・セミナー
・白書、業界レポート
・電子ブック
・無料コンサルティング
・リサーチ・ペーパー
・無料クラス、デモ、無料トライアル
■ユーザー目線に立った入力フォームを作ろう
・入力フォームは短めに
・入力フォームは画面内に収まるように
・機密情報は書かせない
・シンプルに
・プライバシー・ポリシー
・自動返信機能
■見込客を4段階に分ける
・期待客:全ての見込み客発生源、キャンペーン等からえられる人達
・見込客:実際に1時間程度時間を割いても良いと思える人達
・機会客:より購買活動に近い人達。3ヶ月以内に購入してもらうために担当者がついている
・顧客::既に実際に購入した人達
■インバウンド・マーケティング志向の社員を教育するためのフレームワーク
・デジタル市民を採用せよ
・分析オタクを採用せよ
・ウェブでのリーチを広げるために採用せよ
・コンテンツ・クリエーターを採用せよ
■PR会社は二つのコアコンピタンスを有している
・彼らは紙の出版業界に膨大なコネを有している
・彼らはあなたの会社の新製品を、紙の出版業界の人たちがわかりやすい形に翻訳して伝えることに秀でている
■競合を見張るためのツール
・website.grader.com
・ソーシャル・ブックマーク・サイト
・インバウンド・リンク数
・twittergrader.com
・フェイスブックのファン数
・compete.com
・グーグルの検索
・blogsearch.google.com
インバウンド・マーケティング ブライアン・ハリガン ダーメッシュ・シャア 川北英貴 すばる舎 2011-01-21 by G-Tools |