なめらかな社会とその敵(鈴木健)

4326602473 「なめらかな社会とその敵」は、貨幣システムPICSYなどでも有名な鈴木健さんが書かれた書籍です。
 献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 なめらかな、というフレーズは以前はてなの近藤さんが確かなめらかな会社という講演をされていたことがあって、個人的にも非常に印象に残っているフレーズです。
 インターネット以前の現実社会と、これからの社会を表現する上で、なめらかという定義が出てくるわけですが、非常に哲学的でありつつ、ビジネスの世界にも関係している概念であると思います。
 現在起こっている社会の変化を俯瞰して考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
 「ヒトデはクモよりなぜ強い」や「フラット化する世界」と合わせて読むのもお勧めです。
 
【読書メモ】
■膜と核
 膜:現実社会はまだまだ資源の囲い込みに満ちあふれている
 核:現実社会では中央集権的な組織に満ちあふれている
■膜や核の構造は、世界に満ちあふれる複雑な相互作用のネットワークを背景に成立している
 生命と環境の分離不能な相互作用からさまざまな人工物が生まれてくる。人工物は生命と環境の相互作用のかたちを規定する
 社会制度もそうした人工物のひとつである


■伝播投資貨幣システム PICSY
 価値が伝搬するという興味深い性質を持った貨幣システム
■通常の決済貨幣システム SECSY
 人々は企業に投資するが、個人に投資することはほとんどない
■政治とは「敵と味方を区別すること」(カール・シュミット)
■ネットワーク型の投票システム 
 伝播委任投票システム
 自分の持つ1票を好きなように分割して投票できる
■秘密投票の歴史と思想
 現在の投票方法は、歴史的には決して当たり前ではない。
■マスメディアは、小自由度が大自由度を制御するという意味で「核」的で、同じ受信装置を持たねばならないという意味で「膜」的なメディアであるのに対して、インターネットは「網」的なメディアである。
■多くの日本人にとっては、政府とは責任を押しつけるべき対象の他人でしかない。
 市民革命を経てきた国々では、国民の意識は異なっている。リンカーンの有名な言葉にあるとおり、「私たちの政府なのだ」という自覚があるからだ。
■オライリーが提唱するガバメント2.0のもっとも重要な点は、政府は自発的な動きを活性化させるプラットフォームになるべきだという考え方である。

4326602473 なめらかな社会とその敵
鈴木 健
勁草書房 2013-01-28

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