アドボカシーマーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 (グレン・アーバン)

4901234951 「アドボカシーマーケティング」は、2006年に出版された書籍です。
 「アンバサダーマーケティング」の原著であるBrand Advocatesを佐藤達郎さんに紹介頂いた時に合わせて紹介されて読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本で取り上げられている「アドボカシー」は、Brand Advocatesで出てくる「アドボカシー」ともまた意味が違っています。
 Brand Advocates的なアドボカシーは、「アンバサダー」とか「アドボケーツ」と呼ばれるような企業を支援してくれる顧客を増やしていくイメージですが、こちらのアドボカシーは企業側が顧客を支援することを意味しています。
 ちなみにこの書籍の原題は「Don’t Just Relate ADVOCATE!」
 直訳すると、「関係を作るだけじゃなくて、支援しろ!」ですかね。
 このあたりの英語の定義を日本語で説明するのはなかなかに難しいですが、この本のアドボカシーマーケティングは、正直マーケティングと訳した方が近い感覚かもしれません。
 ちょっと古い本ではありますが、最近マーケティング業界でもよく話題に出てくる「Authenticity」につながる話もありますので、マーケティングの根本的な変化を俯瞰して考えたい方には参考になる点がある本だと思います。
 「Authenticity」をテーマにした本である「ほんもの」や、「マーケティング3.0」と合わせて読むのもお勧めです。
 
【読書メモ】
■アドボカシーマーケティングの「アドボカシー」とは「支援」「擁護」「代弁」などの意味を持つ。顧客との長期的な信頼関係を築くため、顧客を支援する。
■パラダイムシフト
・懐疑心の高まり
・政府による規制
・メディアパワーの低下
・過剰供給、コモディティ化、飽和
・裏切り行為に対する「罰」
■三つのマーケティング戦略
・プッシュ・プル戦略:無防備な顧客に情報や製品を押し付ける
・リレーションシップ戦略:顧客との長期的な関係を築くことによってCRMの理想を追求する
・アドボカシー戦略:顧客や見込み客に対して、あらゆる情報を包み隠さず提供する


■アドボカシー・ピラミッド
・アドボカシー(顧客支援)
・リレーションシップ・マーケティング
・TQM:顧客満足
■アドボカシー戦略のポイント
・企業ではなく親友のようなアドバイス
・競合他社との率直な比較
・宣伝やプロモーションにかかるコストの削減
■アドボカシー戦略の効果
・顧客獲得コストの削減
・利益率の向上
・成長
・長期的な競争優位
■プッシュ・プル戦略とアドボカシー戦略のバランス
・プッシュプル戦略:アドボカシー戦略
・差異のない製品・サービス:高品質
・売り手優位:知識の豊富な買い手
・取引優先:高価で複雑な製品
・短期的な成果の追求:長期的視野
■アドボカシー戦略のルール
・顧客を支援せよ
・優良製品へ重点的に投資せよ
・価値を創造せよ
・顧客とともに製品を作れ
・完全に実行せよ
・顧客にとって優良企業であれ
・顧客との長期的な信頼関係を測定せよ
■戦略の構成要素
・透明性
・製品・サービスの質
・インセンティブ
・顧客とのパートナーシップ
・顧客との共同開発
・製品比較やアドバイス
・サプライチェーン
・アドボカシーの浸透
■アドボカシーの実践によって最も大きなメリットを受ける業界
・製品が複雑
・製品に対する顧客の関与が深い
・顧客が間違った製品を選んだ場合の損害リスクが高い
・入手可能な製品の種類が多い
・情報量が多い
■顧客ニーズを知るための「傾聴」
■アドバイザーシステム
・トラックタウンと呼ばれるアドバイザーシステムのバーチャル・エンジニア(GM)
 製品の製品の重要性・必要性、好みをもとに、それぞれのトラックについて、顧客へ質問を投げかける。そして、利用価値を計算し、その顧客にとって利用価値の最も高いトラックを勧める。
■リード・ユーザー分析
 先端技術を使いこなすユーザーは、ワークショップに参加し、自分なりの解決策を用いることで、主要市場に対するアイデアの発展に力を貸す
■アドボカシー戦略の評価指標
・顧客内シェア(個々の顧客のニーズに対するあなたの企業のシェア)
・リピート購買率
・リピート購買における平均マージン
・クロスセリング率
・売上に占める新製品の割合
・自社への信頼と顧客満足度に関する調査結果

4901234951 アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 (ウォートン経営戦略シリーズ)
グレン・アーバン スカイライトコンサルティング
英治出版 2006-11-14

by G-Tools