「USERS 顧客主義の終演と企業の命運を左右する7つの戦略」は、ユーザーという存在について考察された書籍です。
献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本でテーマになっている「USERS(ユーザー)」は「デジタルメディアとテクノロジーを通じて企業と交流する人々」のこと。
表紙に書かれているCUSTOMERよりもUSERの方が大きな円というのが象徴ですが、従来、重要だと言われていた「CUSTOMER(顧客や購入者)」よりも、ユーザーの方が広い存在であり、購入者ばかりを見ていると大きなチャンスを逃すという警鐘をならしている本です。
実際問題、ソーシャルメディア以前に企業は自社の購入者以外の声を聞くことと言うのは非常に難しいのが実情でした。
商品を買ってくれさえすれば、顧客登録等を通じて何で買ってくれたのかを聞くことはできたかもしれませんが。
、買ってくれなかった人に何で買わないのかを聞くことが非常に難しかったわけで。
それがソーシャルメディアやビッグデータのような技術の進化により、購入者以外の人々、つまりユーザーの声を聞くことができるようになっているんだから、そちらに目を向けるべきだ、というわけです。
既存顧客を重視しすぎると破壊的イノベーションのジレンマにはまるというのが、イノベーションのジレンマで強調されていたポイントでしたが、この本で主張されて主張されているような購入者重視ではなくユーザー重視で広い目線から考えるというのが、イノベーションのジレンマにはまらないための一つの解になるのかなと思ったりします。
現在インターネットやソーシャルメディアによって引き起こされている企業と顧客、生活者の関係の変化を俯瞰的に考えてみたい方には参考になる点が多々ある本だと思います。
「グランズウェル」や「エフェクト」、「インテンション・エコノミー」などとあわせて読むのもお薦めです。
【読書メモ】
■新しい経済秩序の中で最も成功している企業は、デジタルなチャンネルを通じて関わる人々のニーズや関心を、常に最優先すると言うことだ。その人々とは「ユーザー」だ。
■この本におけるユーザーとは顧客、従業員、求職者、見込み客、パートナー、ブランドのファン、メディアのメンバー、インフルエンサーのことである。
要するに、デジタルメディアとテクノロジーを通じて企業と交流する人々を指す。
■ユーザーは、購入者よりも企業と密な関係を結び、影響をおよぼす場合がある。
購入者を喜ばせることばかり考えていると、思いがけない大儲けのチャンスを逃すことになるだろう。
■ユーザー中心の経営のトライアングル
・ユーザーの目的はユーザーのほしいもの
・企業の目的はユーザーに関する特定の目標
・技術上の実現可能性
■経営者に求められる資質は
・本当に大事なもの以外を切り捨てる勇気を持つ
・地道なプロセスを軽視しない
・専門分野以外の勉強を欠かさない
・実現可能なビジョンを持ち、それをきちんと伝えていく
■同心円系の組織体系
・デジタル・コア:ユーザー体験を設計する専門家、エンジニア、経営者
・コミュニケーター:デジタルコアを利用して情報を投稿する対象とするオーディエンスに語りかけ、外の世界とコミュニケーションをとる
・オーディエンス
■使い捨てテクノロジーの6つの特徴
・置き換え性
・制御可能な相互運用
・保守性
・更新可能性
・最終的なスケーラビリティ
・スピード
■社会的使命を実現する4つの手法
・意思決定サービスを作っている
・主に提供しているものを補完するサービスを開発している
・全く新しい提案をするためにアナログ製品とデジタルを組み合わせている
・差別化のためにデータを使っている
■「広告とは、粗悪な商品やサービスを持つことに対して支払うコストのことだ」(ジェフ・ベゾス)
■ユーティリティ・マーケティングは、広告と商品の中心に位置する
広告とは「人々に何かを伝える」ことだ。商品は「人々の役に立つ」ことだ。
ユーティリティ・マーケティングは便利な商品を提供することによって購買意欲を掻き立てる
■統合されたトラフィック・フレームワーク
・最新情報を教えて欲しい
→インボックス→目的地
・何かを見つけたい、または何かをしたい
→ネットワークフィルター→目的地
→目的地
■フィルタであることは、とてつもないマーケティングの機会を持つが、一方でフィルタになることはかなり難しい。
■ブランドは独自のインボックスを作成するべきではない。既存のインボックスは、完全にユーザーの生活に定着しており、それを変えさせることはほぼ不可能だ。
■マーケターができる最良のこと
・インボックスに現れること
・クチコミを急速に広めること
■TCPF
ユーザーはどこで買うかを決める際、下記の4つのバランスを考えている
・Trust 信用
・Convenient 利便性
・Price 価格
・Fun 楽しさ
■オンライン購入のためのステップ
・標準化
・単純化
・拡大化
■オンラインでの完全自動化された販売でもなく、リアルな場での対人販売でも無い場合、その成功のカギとなるのは、商品と購買プロセスについて明確で包括的な情報をオンラインで提供しながら、対人のやり取りの方法を標準化することだ。
USERS 顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略 アーロン・シャピロ 萩原 雅之 翔泳社 2013-09-03 by G-Tools |