アップルのバズマーケティングの凄さ

「ビデオiPodか、それとも?」–アップルの「発表」にさまざまな憶測 – CNET Japanを読んで。

 10月12日に、またまたアップルが何かしら大きな発表をするようです。

 9月7日のイベントの時には「Here we go again(またその時が来た)」だった招待状のメッセージ、今回報道陣あてに送られた招待状には「one more thing(あともう1つ)」と書かれているそうで。

 なんでもiPod情報局によると、この招待状にある「One more thing…」というのは「アップルコンピュータCEOのスティーブ・ジョブズ氏が新製品を発表するときのお決まりの文句だ」そうです。
 しかも招待状の画像は思わせぶりな赤いカーテン、これは気になってたまりませんね。

 すっかりブログ界は、この話題で盛り上がっているようで、「さっそく何千人ものブロガーがさまざまな可能性に言及している」模様。
 しかも、新型iPod説から、実は意表をついてMacじゃないかという話もあれば、ついには、「携帯電話のカメラで隠し撮りしたという「設定」」のビデオiPodの画像が流出していたり、BBCがフライングでアップルが10月12日にビデオiPodを発表するというニュースを流したとか、マスメディアも巻き込んでの憶測合戦が始まっています。
 

 それにしても、このアップルのバズマーケティング手法の上手さは本当に憎らしいほどですね。
 マスメディアを通じて発表するだけであれば、こんな回りくどいことをする必要はないんですが、事前にこういう噂を流すことによって、発表以前にも噂話によって世間の注目を発表に集め、発表と同時に口コミのエネルギーをさらに爆発させる。

 もちろん、そこで発表する製品の魅力が無ければ、二度と通用しない手法になるわけでしょうけど。
 アップルはこれまでのところ毎回期待を裏切らないどころか、たびたび期待を超える発表を続けてきていますから、非常に良いポジティブな口コミのサイクルが回り続けている感じですね。

 個人的には、これだけ口コミがまわってればテレビコマーシャル打たなくても良いんじゃないの?とか思っちゃったりもするんですが、アップルはテレビコマーシャルもまためちゃめちゃ上手いですからねー。
 本当にアップルのマーケティング担当者の爪の垢を煎じて飲みたいところです。

 そういえば、さすがに今度はソニーの同日発表は無いんでしょうか。

Microsoft vs GoogleSun ?

グーグルとサンが提携へ–StarOfficeなどのウェブアプリ化を検討か – CNET Japanを読んで。

 GoogleとSun Microsystemsが提携を発表したようです。

 Sun Microsystemsといえば、長年マイクロソフトへの敵対心をむき出しにしてきたScott McNealyの印象が強くあったものの、てっきり昨年の4月の提携で丸く収まったのかと思っていましたが。
 やっぱりScott McNealyは、まだまだマイクロソフトに対する対抗心を収めたわけではなかった、というところでしょうか。

 実際の今回の発表は「Java技術とGoogle Toolbarの普及促進に向けた提携」とのことですが、今回のCNETの記事で憶測されているような今後についての想像をついしてしまいますね。

 なんといってもOfficeアプリケーションと言えば、マイクロソフトにとってOSと並ぶ2大収益源。
 ここにGoogleが宣戦布告となるのであれば、そのインパクトはなかなかに興味深いものがあります。
 

 まぁ、Googleとマイクロソフトは、ここ最近すっかり対立構造がはっきりしてきて、ブログでもいろいろ話題になってましたし、MicrosoftのバルマーCEOは、検索分野で同社のライバルであるGoogleとその広告事業をたたきつぶすと言った」ぐらいですから、お互いに相手の心臓を握りにいってるのは、ある意味当たり前の展開なのかもしれません。

 そういう意味ではSun抜きでもOffice事業への展開は十分考えられますが、長年マイクロソフトの強敵(?)を自認してきたScott McNealyですから、自分抜きの戦いに黙っていられなくなったというところでしょうか。

 さて、ここで気になるのがこの戦いの結末。

 個人的な印象では、ブログを書いている人はGoogleの勝利を語るけれども、ブログを書いていない人と話すと「やっぱりMicrosoftが勝つんじゃない?」という話になる傾向があるような気がしますが、はたしてどうなんでしょうか・・・

はてなとイーマーキュリーは、日本のGoogleとYahoo?

2005年9月21日 はてな、イー・マーキュリー共同勉強会を読んで。

 はてなとmixiのイーマーキュリーが、共同で技術勉強会を実施したようですね。

 議事録どころか講演の音声ファイルまで公開されているっていうのも、注目なんですが、やっぱり勉強会でここまで注目されるのはこの両社ならでは。

 何しろ両社とも、多くのファンに指示されており、過去の対談イベントでも「はてな対mixi?」なんて記事が書かれるほどの注目企業。
 技術勉強会とはいえ、「この次にくるもの」を期待してしまうのは私だけではないですよね。

 ちなみに、はてなとイーマーキュリーは、両社とも今注目のネット企業な上に、経営者の近藤さんと笠原さんが二人ともいわゆるU30の代表で、先日のWEB人にも二人とも選ばれたし、サービスに使っている言語もPerl、と似ているところが多いわけですが、実は冷静に比較すると結構特徴的な違いがあるような気がしてきます。

 はてなは、いわゆる「イノベーター」をターゲットとして、最新技術を使ったサービスをこれでもかというぐらいに次々と繰り出す、明らかにエンジニアの会社。
 もちろんバックに川崎さんという凄腕のマーケッターがいるわけですが、基本的に前に出てくるのは自身がエンジニアでもある社長の近藤さんとCTOの伊藤さん。会社としてアピールするのもほとんどが開発周りの活動が中心です。

 それに対してイーマーキュリーは、最近のmixiの傾向にあるように、はてなに比べるとターゲットは比較的普通の人。(もちろん、利用者にネットに詳しい人が多いのは間違いありませんが)
 1年半で100万人を超えるサービスに急成長したmixiですから、当然そのサービスを支えるエンジニアのレベルも相当高いはずなのですが、メディアやイベントなど、表に出てくるのは基本的に笠原さんやふぁるさんで、はてなに比べると意外なほど、サービス開発者のバタラさん達が前面に出てくる機会は少ない気がします。

 そう考えてみると両社の違いとかぶって思い出されるのがGoogleとYahoo。
 
 以前CNETで「グーグルvsヤフー–勝負を左右する企業文化の違い」なんて記事もありましたが、強力な開発陣を前面に押し出しエンジニアの理想の会社として君臨するGoogleに対し、Yahooは比較的メディア企業への道を歩みつつあると言われていて、その高いであろう技術力のわりにはエンジニアに脚光があたることは無いような気がします。

 もちろん、はてなとイーマキュリーは、そもそもバックグラウンドも全く違う会社なわけですし、はてなは何でもオープンにするスタイル、mixiは招待制で閉じられた空間と、サービス自体にも違いがあるわけですから、違って当然なわけですが、

 そういえば、はてなの人たちが社外取締役の梅田さんを含めてGoogleをよく例え話に出すのに対し、笠原さんがセミナーや取材でよく引用する「インターネット上であらゆるサービスが出尽くしたと誰もが感じている時に、今までのルール自体を変えてしまう企業が登場する。」という発言は元Yahoo!のCEOであるTim Koogleの言葉だったりするなぁ・・・となんだか気になりだすと止まりません。 

 まぁ、はてなが技術力を買われてGoogleに買収されて、イーマーキュリーがYahoo360日本展開のベースとしてYahooに買収される、なんてオチも十分ありえる訳ですが、最近はすっかりネットの話題はGoogleを初め米国の巨大ネット企業に独占されている感もありますから、是非はてなとイーマキュリーには日本を代表する世界のネット企業になってもらいたいです。
(とか他人事にしてないで自分もがんばれよ、という話なんですけど・・・)

セミナーをブログで公開する価値と、非公開にする価値

My Life Between Silicon Valley and Japan – 情報の伝播の新しさと、それを苦々しく思う人たちの存在を読んで。

 先週フォーサイトが主催で梅田さんのセミナーがあったようです。
 私は残念ながら参加できなかったのですが、週末ブログを見ていたらびっくり。
 はてなブックマークの人気エントリに、梅田さんの講演の議事録がそのまま掲載されてるじゃないですか。

 フォーサイトクラブ・セミナー「ウェブ社会『大変化』への正しい対応・間違った対応」梅田望夫さん講演ログ

 適切な過去ログにリンクも張ってある実に濃い議事録で、まるで参加したかのように得した気分に浸っていたわけですが。

 梅田さんのブログにも書いてあるように、実はこれって結構グレーゾーンです。
 少なくとも、梅田さんにおいては今回のように適切なフォローが入るわけですが、通常の有料セミナーってセミナーのコンテンツ自体が価値で、それをもとに参加料が正当化されているわけなので、無料でこうやって内容を公開されると困る人も多いことでしょう。

 実際、困るのはセミナー主催者だけでなく、いわゆる講演料を収入の一つの柱にしている「閉ざされたエスタブリッシュメント世界の住人」に取っても大問題になる可能性があります。

 梅田さんが言っているように、「主催者側が、講演開始前の注意として「携帯の電源をお切りください」だけでなく「この講演内容をBlogで公開するのはご遠慮ください」なんて話になってしまう可能性」は十分あるように感じます。

 ただ、「本当にイベントの内容が公開されると、有料セミナーやイベントはその価値を失うのか?」という疑問がここで浮かんできます。

 例えば、これを上手く逆手に取っているのが、百式の田口さんが開催している無敵会議やアカデメディア。(ちなみに今月は第三回検索会議が開催される模様
 このイベントでは、最初に田口さんの「今日の内容はすべてオープンなので、ブログに遠慮なく書いてください」という趣旨の発言で幕を開けるのが非常に特徴的。

 その姿勢が呼び水となって、多くのブロガーをはじめとする参加者を集め、募集一日でほとんどのイベントが満員御礼になるうえに、終わってからもブログ上でたくさんの議事録が公開され、それがまた次の参加者を呼びこむというポジティブなサイクルが回っています。

 議事録を見れば、当日の内容は大体把握できるのに、それでも即効で満員になるのは、議事録を読むだけでは得られない価値がイベント自体に参加することで得られるからでしょう。

 もちろん参加費が安いというのはあると思いますが、このモデルは、通常の有料セミナーや講演でも参考になるはずです。

 例えば、今回の梅田さんのように、講演の議事録が毎回ネットで公開されるものだと思われた場合、はたしてその人の講演をお金を払ってでも聞きたいという人は減るのでしょうか?

 少なくとも、まだその人の講演を生で聞いたことが無い人は、逆にネットの議事録を読んで、これを生で聞いてみたいと思うかもしれません。当日生で話を聞いて感動した人も、また聞きたいと思った人もまた参加するでしょう。
 必ずしも、議事録が公開されることは、その講演者にとって負の効果をもたらすばかりでなく、宣伝効果を考えると実はプラスではないかと思えてきたりもします。
  

 こう考えてみると、この話は結構ミュージシャンの話と近いところがあるような気がしますね。
 CDを買っているファンがコンサートに来ないかと言えば、全くそうではないですし、テレビやDVDでコンサートが見れるからそれで満足するかというと、それもまた別。
 もちろん無料のファイル交換ソフトで音楽を入手して満足している人もいるでしょうけど、逆にそこで初めてそのミュージシャンの音楽と出会ってファンになる人もいるでしょう。

 やっぱりネット時代においては、非公開を前提ではなく、公開されてしまうことを前提で、コンテンツやビジネスモデルを設計する必要があり、そうできる人が強い時代になるということかなぁと改めて思います。

 ちなみに、何でもかんでもオープンにすれば良いかと言えば、もちろんそういう話ではなく、そういう意味で印象的なのが昨日CNETに掲載されていたグーグルの非公開イベントの記事。

 グーグル、「秘密イベント」を開催–報道関係者やブロガー400人を招待

 なんでも「Zeitgeistで行われるすべての講演や説明を公表してはならない。講演者や参加者らが確実にオープンに話せるようにするため、報道もブログへの掲載も一切を禁止する」とのことだそうで。
 喋りたがりのブロガーをわざわざ集めておいて「秘密イベント」って何だよー。とつい思ってしまうわけですが。

 この辺の緩急の使い方がグーグルという会社は絶妙だなと、改めて思ったりします。

 まぁ、こんな緘口令をひいて効果があるのは、検索結果をコントロールできるグーグルだけかもしれませんけど・・・
(公開したら、お前のブログ、検索エンジンで引っ掛けないぞ、と脅されたりとか)

iPod nanoで独走のアップルにソニーはついていけるか

BCNランキング :: 売れ筋速報 :: iPod nanoが垂直発進、初登場1位で早くも市場塗り替える勢いを読んで。

 iPod nanoがまさにバカ売れ状態のようですね。

 個人的にも、先月MP3プレイヤーを買ったばっかりなんですが、iPod nanoのあまりの衝撃に言葉もありません。

 いや、本当にこれは物欲を刺激してくれます。

 BCNのシェア推移を見る限り、iPod nano効果はまさに火を見るより明らか。
 まさに「垂直発信」というのもうなづける綺麗なピークです。

 こうなってくると気になるのは他のメーカー、特にソニーの動向でしょう。
 ソニーがiPod nanoの発表当日に、新製品の発表を合わせてきたという点に対しては、賛否両論があるようですが、個人的には悪くない手だと思ってます。

 ある意味、自民党に対する民主党の「二大政党」みたいなもので、アップルのライバルはソニー「だけ」という認知をまずさせるという意味はあります。

 実際、当日に発表を重ねたことで、ワールドビジネスサテライトをはじめ、多くのメディアは「アップル対ソニー」と取り上げていましたし、ブログでもアップルとソニーを対比して書いている人が多かったようです。

 
 ただ、問題はマーケティング上はそうやって何とかライバル色を出せても、製品の魅力の面では iPod nanoのインパクトが明らかに大きくなってしまっている点。
 何しろソニーの新製品はまだ発表されただけで、店頭に並ぶのは11月。まぁ、正直、同じ土俵で比較ができる状態ではありませんね。
 2番手を確実にするだけでは、アップルの背中が遠くなっていくだけの状態に陥ってしまいそうです。

 ただ、唯一興味深い点があるとすれば、ソニーが「オープン」な方向性を選択し始めたこと。
 NIKKEI NETに津田さんがコラムを寄稿されていましたが、その中でも触れられているようにWMA対応は結構意味があるような気がします。

 アップルは独走中とはいえ、そのエコシステムに参加できている企業は実は一部。
 それ以外の企業を束ねて別のグループを形成できれば、ソニーもアップルに追いすがっていけるかも・・・と思ったりもしますが、はたしてどうなるんでしょうか・・・?

グーグル参入でブログ検索「市場」は広がるのか消えるのか

グーグル、噂のブログ検索サービスを公開–4つのインターフェース – CNET Japanを読んで。

 グーグルが、いきなりブログ検索サービスを公開してきましたね。

 ブログ検索サービスについては、ここ最近テクノラティが選挙特集コーナーを開設して話題を呼んだり、Feedsterが三井物産と組んで日本進出というニュースが流れたり、今日はアスクジーブスがブログ検索サービスのベータ版を開始したりと、日本でも結構動きが出てきた分野ですが、いきなりの本命登場に業界も騒然と言う感じです。
 
 
 いきなり出てきたから、まだまだレベルが低いかというと、そこは流石グーグル、どうやらそうでもないらしく。
 メディア・パブさんのリサーチによるとテクノラティと比較しても、量的には既にGoogleが圧勝で、総合的に見てもかなり使えそうとの感触とのこと。
(ちなみに、Going My Wayのkengoさんによると「Blog専用の検索がでたことでひょっとしたら通常の検索結果からBlogが除かれるかもしれないですね。」という読みもあるようです)

 なにしろ「英語の他、日本語、中国語、韓国語、仏語、伊語、独語、スペイン語、ブラジルで使われるポルトガル語など」に対応していて、4つのインターフェースまで用意するほどの余裕ぶり。
 何かに影響されて作ってみたというものではなく、プランどおりに積み上げていたというのが嫌と言うほど伝わってきます。

 はてなのnaoyaさんも、ブログで「RSSサーチの要点になる価値の重み付けのアルゴリズムとスケーラビリティの確保ってのは、Google が世界で一番得意とするところなんですよね。」と書いてますが、まぁいわれてみればGoogleがブログ検索をやってなかったのが不思議な話で、来て当然のものが来たというのが正確なところでしょうか。

 まぁ、改めてブログ検索という行為自体を考えてみても、あくまで検索行動の一種類なワケで、最終的にはGoogleやYahoo!などの検索サービスの1メニューになっていくと考えるのが普通でしょう。

 こうなると気になるのが「ブログ検索」というものが一つの市場としてどうなるのかという点です。
 テクノラティのようにリサーチなどのB2B的なビジネスを実現できる事業者はまだ良いとして、ライブドアの未来検索のような単純な検索だけを売りにするサービスは、かなり厳しい戦いを強いられそうな印象があります。
 他の事業者の打ち手を見たいところですが、naoyaさんが書いているように「「Why couldn’t Google do what you’re doing?」に対する決定的な答えが出せるかどうか、改めてそれを考えさせられる」という視点の大事さを痛感します。
 

 昨日書いたイーベイ+スカイプの話にしても、ネット上の新サービス、新市場に見えたものは、なんだかんだいって結局GoogleやYahoo!に上手く買収してもらうか、彼らが狙わないニッチ市場で生きていくしかない蜃気楼だったというのが毎度の結論になってしまうような気がしています。

 もちろんGoogleがすべてをカバーできるわけではないとは思いますが、何ともいえない無力感を感じてしまうのは私だけでしょうか・・・