ライブドアD-cubicの採算分岐4万人は多いか少ないか

「4万ユーザーを獲得しなければ失敗」–ライブドアの公衆無線LANサービス – CNET Japanを読んで。

 野村総研がライブドアの公衆無線LANサービスD-cubicについて、設備投資の費用を回収するには、約4万ユーザーを獲得する必要があるという試算を発表したそうです。

 最近物議をかもしたHDDレコーダーのCM飛ばしの影響のレポートといい、最近の野村総研は何だか元気がいいですね、という話は置いておいて。

 実際問題、果たしてこの4万人という数字は、どれだけ達成が難しい数字なんでしょうか?

 何でも「公衆無線LANサービスの有料利用者数は2005年3月時点で約10万人」だそうで、その数字からすると4万人というのは全体の4割で高い数字にも感じられます。

 ただ、逆に市場全体として考えると「現在PHSのデータ通信加入数は200~250万件といい、これが潜在的な公衆無線LANユーザーの数」になるそうです。
 この数字からすると、4万人というのは全体の2%にしか過ぎませんからかなりリーズナブルな雰囲気はでてきますね。

 それにしても、個人的に改めて驚いたのは、公衆無線LANサービスの損益分岐点の低さ。
 Yahoo!BBが2001年にADSLサービスを、月額2280円という驚きの価格でサービス開始したときに、損益分岐点としてあげていたのが200~300万人。

 今回のライブドアのD-Cubicは、まぁ山手線内だけという違いはあるものの、その50分の1で良いという計算になります。
 通信事業の参入障壁もここまで下がってしまったか、と改めてしみじみと感じてしまいました。

 そもそも、D-cubicの年間の運営費が仮に野村総研の試算どおりだとすると、2億5000万円で済むわけです。

 ライブドアは例のニッポン放送関連で1000億円を越える資金を入手したと言われていますから、このままだったら赤字垂れ流しでも研究開発費や広告費と思えば、当分我慢できるのかもしれませんね。

LifeHacksとは、仕事をゲームに変える技術?

[を] LifeHacks EXPO に行きましたを読んで。

 先週末に、LifeHacks EXPOに行ってきました。

 Life Hacksとは、Hotwiredによると「これは効率よく仕事をこなし、高い生産性を上げ、人生のクオリティを向上させようとする取り組み」とのことで、誤解を恐れずに日本語で言ってしまうとまぁ仕事術ということになるんでしょうか。

 実は、イベント自体はリクナビ主催の「エンジニア適職フェア」なんで、明らかに自分は対象顧客じゃないんですが。
 Life Hacksについてはアカデメディアで紹介されてから、ずっと気になっていたので思わず黙って申込です。

 
 イベントの詳細については、上記のたつをさんのログや、LACRIMEさんのメモログOverlasting::Lifeの詳細メモを見ていただくとして。

 個人的に印象に残ったのは、パネリストの皆さんが実に楽しそうにプレゼンしていること。

 そもそもは会社の中での仕事のやり方をプレゼンしているわけで、普通ならもっと地味な感じになりそうなもんですが、お三方のプレゼンは実に魅力的です。
 まぁ、考えてみたら当たり前で、お三方は仕事自体を楽しんでやってるわけですよね。

 帰ってきてから、会場でもらったLife Hacksの小冊子を読んでいると、ますますその思いは強くなってきます。
 冊子の事例として取り上げられているどの会社も、実に楽しそう。自分のモチベーションを上げる仕組みや、仕事をシンプルにこなしていく仕組みを作ったり、社員のアイデアをくみ上げる仕組みを作ったり、果てはサイコロで給料を決める(!?)会社まで。
 まるで仕事の話というよりは新しいゲーム作りを見ているようです。

 改めて考えてみると、これまで、えてしてホワイトカラーの仕事というのは本人の才能や根性、モチベーションなんかに依存していて、ある意味管理が不可能で、それぞれの人の裁量に任せてしまっている印象があったわけですが。
 Life Hacksで紹介されている会社は、どこも「仕事」をいかにシステマチックにシンプルに処理していくかという技を磨いているように思えます。
 

 これって何かに似てるなぁと思って思い出したのが、これまで主に製造業を中心に行われてきた「カイゼン」や「ビジネスプロセスリエンジニアリング」の仕組み。

 例えば、はてなが実施している「あしか」と呼ばれる紙を使ったアナログなタスク管理システムなんかは、トヨタの看板方式をほうふつとさせますし、イーナチュラルの10分刻みの時間管理システムなんかも製造業の細かい作業時間管理をほうふつとさせます。

 ホワイトカラーの「仕事」を製造業の製品やパーツとして捕らえると、実は同じような試みができるということかもしれません

 実際、一度そういう風に自分たちの「仕事」を捉えてしまえば、全体の仕事を一度に対処不可能な複雑で大きな困難と捕らえずに、シンプルな作業の塊と捕らえてゲーム的に処理しやすくなるのかもしれませんね。
 

 もちろん、これまでも同様の仕組みや仕事術は、いろんな会社や個人ベースで実践されてきていたはずです。
 ただ、最近のブログを中心とした情報ネットワークが、他人の仕事術を簡単に共有することができる環境を作ってしまったので、ネットを通じてそういう手法が一気に共有できる環境が出来上がったというのが現状なんでしょうね。

 百式の田口さんが紹介していた「GTD(Get Things Done)」なんかは、米国でカルト的人気を呼んでいるという記事もありましたが、これから日本でもブームになりそうな予感がします。

テレビ広告で検索サービスを離陸させることはできるのか

Ask.jpの訪問者数が増加を続け月間100万人超に–ネットレイティングス調査 – CNET Japanを読んで。

 Ask.jpの利用者が月間100万人を越えたそうです。

 ちょうどmixiが「もうすぐ100万人」キャンペーンをやっていたところなので、もう100万人?と驚いてしまいましたが良く見るとAsk.jpは登録者ではなく月間利用者なんですね。

 Ask.jpといえば、2月にサービスを開始してから、宇宙戦争のテレビコマーシャルをはじめ、ネットマイルのキャンペーンなど、様々なプロモーションを打ってきてましたから、その辺が一定の効果を挙げたと言えば良いのでしょうか。

 テレビ広告を使った検索サービスのキャンペーンといえば、10億円を投じたGMOグループの9199.jpが記憶に新しいところですが、Alexaで9199.jpとAsk.jpのトラフィックを比較してみるとこんな感じです。

 9199.jpのトラフィックは11月ごろのスマップの稲垣のテレビCMを打っていた頃にピークをつけていますが、その後あっさりと下がってきているのが良く分かります。
 結局、広告で認知度を無理矢理上げても、利用者を定着させるほど特色のあるサービスではなかったということでしょう。
(まぁ、実際9199.jpは広告主側により過ぎている印象もありましたので、さもありなんという感じですが)
 
 
 その視点で、Ask.jpのトラフィックを見ると、9199.jpに比べれば比較的トラフィックを維持できている感じはあるものの、やはり右肩下がりになってきている印象もあります。
 
 ポイントは、プロモーションで集めてきた利用者が、その後定着しているのかどうかでしょうか。

 ネタフルのコグレさんが「開始直後は、ぼくもしばらくAsk.jpを使っていたんですけどね。いつの間にか、やはりGoogleに戻ってしまいました。」と書かれていますが、やっぱり検索のヘビーユーザーを今から移動させるのは難しい印象もありますので、当面はあまり検索を上手く使えていない利用者がターゲットになるような感じもします。
 
 そういう意味では、しばらくはそのターゲットに対するプロモーションはコストをかけて実施せざるを得ない感じもしますが・・・どうなんでしょう?

 まぁ、アスクジーブスはバックにIACがついていて資金力はありますし、もともと長期戦のはず。
 使い勝手も独自検索エンジンTeomaなどかなり考えて作られていることをCNETのイベントでもアピールされていましたから、上手く口コミがまわるようになればポジティブなサイクルがまわるようにはなるはずで、いろいろ展開のプランがあることと思いますので、注目したいところです。

「テレビ」会社にとってオンデマンド配信は必要ない?

[R30]: テレビ番組のアフィリエイト、何で誰もやらないの?を読んで。

 実は先日、ひょんなことからテレビ東京さんに取材していただく機会をいただきました。

 なんでもP2Pの著作権がらみの話を土曜日のワールドビジネスサテライトで取り上げる予定とのこと。
 テレビに取材してもらうなんて滅多にないことなんで、これは知り合いみんなに教えなきゃ。と思っていたところ、ふと不安に。

 そもそも、テレビの取材ってどういう形で取り上げられるかも分からないどころか、本当に自分の発言が使われるかどうかも分からないわけです。

 本来なら、自分で内容を確認してから知り合いに教えたいところですが、テレビニュースなんて放送されるのはあくまでその日だけ。
 新聞や雑誌の記事なら、後でコピーしてFAXで送るという手も無くはないですが、テレビの動画ニュースではそれも難しかったりします。
 最初に取り上げた記事でR30さんが書いているみたいな、番組データを有料でいいからオンデマンド配信できる仕組みが、今週土曜日だけでいいから欲しくなってしまったりします。
(ということで、興味がありましたら是非今週土曜日のワールドビジネスサテライトを見てみてください、という宣伝でした。どういう感じで使って頂けるかは分からないんですが・・・(汗))

 ちなみにR30さんの記事を読んで、あらためて以前高広さんが、コンテンツの摂取形態には、ライブ、タイムシフト、オンデマンド、デリバリーの4種類しかないと発言されていたのを思い出しました。
 現在のテレビって基本的にライブしかないわけですが、そこはR30さんが指摘するように「テレビにはテレビというチャネルしかない」というのが、大きく影響していたように感じます。
 テレビ局の事業は、「コンテンツを電波でライブ配信してなんぼ」と考えている限り、それ以外の方法を考える必要が無いわけですよね。

 ただ、今回取材を受けて驚いたのは、テレビ局の方々が、このライブという一回だけの放送のために、かけている手間の大きさ。
 今回の私の取材だけでも事前打ち合わせとセミナー会場、実際の取材と3回も時間を割いていただきましたが、実際に電波に乗るのはしょせん数十秒程度でしょうから、実に贅沢な話。

 貧乏性の私からすると、せっかく時間をかけて作成したコンテンツなんだから、二度三度とおいしい仕組みを作れば良いのに・・・とか思ってしまうんですが、結局のところライブ配信だけで十分儲かるからあれだけのコストをかけられるということなのかもしれませんね。
 儲かっている限りは、無理して他の事業をやらないというのは、ある意味では悪い選択肢ではないような気もしてきます。
 (あくまで現状の事業の利益が維持できるという前提においてですが)

 まぁ、実際問題、オンデマンド配信が事業として定着するまでには相当時間がかかりそうな印象もあります。
 音楽配信も、各事業者が様々な方式でバラバラとやっていたときは、ほとんど鳴かず飛ばずでしたが、今の動画配信事業の状態はその当時を彷彿とさせます。

 先日「ネット動画配信は成功するのかしないのか」というのを書きましたが、そういう意味では湯川さんが「求められているのはネット配信じゃなくてオンデマンド」という記事で書かれているように「フジテレビや日テレがやろうとしていることは、その方向に向けての最初の一歩ということになる。この段階では大きな収益を上げることは不可能だろうから、今後はコンテンツ提供者の囲い込みが焦点になるはず。」というのが現状の正しい認識なんでしょうね。

 音楽配信においては、Appleが圧倒的な品揃えの豊富さと、1曲1ドルという低価格、さらにiPodという配信インフラの3点セットで一気にブレイクした感があります。
 動画配信においても、同様の3点セットが必須になるだろうとつくづく感じてしまいますが、はたして動画配信がそういうポイントを迎える時には誰が業界をリードするんでしょうか・・・やっぱTivoかな・・・

 (ちなみに先日の記事へのコメントで教えていただきましたが、HDDレコーダー版iTunesのようなモデルは東芝やパワードコムが共同で「ひかりdeDVD」というサービスを試していたりするそうです。これって評判はどうなんでしょうね?)

競合事業者への転職を本当に契約で阻止できるのだろうか?

マイクロソフト、グーグルを提訴–主要研究者の引き抜きをめぐって – CNET Japanを読んで。

 マイクロソフトがGoogleに転職した元幹部を訴えたそうですね。

 先日、マイクロソフトの広報ブログ責任者がスカイプに移ったニュースを紹介しましたが、「ここ数カ月の間にも複数の著名なMicrosoft社員がGoogleに移っている」そうで、どうもマイクロソフトはすっかり草刈場になってしまっているみたいですね。

 マイクロソフトも堪忍袋の尾が切れたのか、今回はGoogleと元幹部を競合禁止制限事項の違反にあたると訴えているようです。

 なんでも、根拠となっているのは、その元幹部の方がマイクロソフトに入社するときに交わした契約書。
 非競争事項と呼ばれる機密情報を入手できる立場にある社員を直接競合する事業者に転職しないように約束した項目がポイントになるようです。

 そういえばこの手の契約って良く聞きますが、実際に訴訟でどの程度防げるものなのかは良く分かりません。

 
 そもそも、ヘッドハンティングを受けるというのは、その人材に何かしら魅力があるからなはずですが、一般的にその魅力って総合職でもない限り業界の専門知識が大きく効くはずで。
 そういう意味では、そもそもこの手の主要人材の場合、転職先って同業種しかありえないような気もします。
 実際、社員がお客さんごと競合に移ってしまったなんて話は、別に良く聞く話ですよね。

 まぁ、今回のケースはマイクロソフトからするとよっぽど許せないケースということで訴訟に至ったんだと思いますが。
 ネット業界なんて、ほとんどの会社が競合のようにみなすことができますから、もしこの手の条項が厳密に適用されると、主要人材は入社時の踏み絵で一生縛られる・・・みたいな話になりかねないような・・・それはないですかね。

 
 ただ、こうやって訴訟とか振りかざして北風政策で縛ったところで、結局のところ出て行く社員は出て行くでしょうから、いかに社員が残りたがるような魅力的な会社でいることができるかというのが、これからどんな会社でも重要なポイントになってくるんだろうなぁ・・・と思ってしまいました。
(最初からそれができれば苦労はしないんでしょうけど)

ネット動画配信は成功するのかしないのか

フジテレビ、番組の有料ネット配信を本格化–提携複数もライブドアおあずけ – CNET Japanを読んで。

 フジテレビと日本テレビが立て続けに番組の有料配信に関する発表を行っていますね。

 ネットを通じた動画のネット配信、いわゆるビデオオンデマンド的なサービスは、インターネット以前のいわゆるマルチメディア時代からキラーコンテンツだと言われ続けて未だに大きな成功例が無いまま現在に至っている感があります。

 何と言っても、良く言われるのは「ネットの動画配信は採算が合わない」という点。人によってはインターネットで動画配信は流行らないとばっさり切る人も多いようです。

 ただ、個人的にはこの部分はあくまでいつか技術が解消する点だと信じてます。
 実際、ネットを通じた音楽配信についても同じような議論があった時代がありました。インターネット初期に音楽配信をビジネスにしようとして数々の事業者が失敗したり、鳴かず飛ばずだったりしましたが、それを踏み台として現在のAppleのiTunesの成功があります。

 動画配信においては、音楽ファイルに比べてもはるかにファイルサイズが大きいというハンデがありますから、そもそも設備投資が巨額になるため採算ラインが高くなります。
 おまけに関係者に話を聞いた感じだと、これまでネットで配信されていた動画コンテンツは、ISP事業者やポータル事業者がかなり高額で仕入れてしまったため、更に自ら採算ラインを上げてしまっていたのが実情だったようです。

 インフラも高いし、仕入れ値も高いでは、まぁもともと成功する確率は下がってしまうわけで、そりゃあ失敗するよなぁと言う話ですが、その失敗がトラウマになって再挑戦する意欲を失っている事業者も多いようですね。
 

 ただ、ここに来てUSENがGyaOで無料動画配信を行ったり、民放の主力が本格参入と風向きが変わって来ている感じがあります。
 そもそも、コンテンツホルダー自体が自主的に事業を行うのであれば、コンテンツの仕入れ値についてはコントロールが可能なわけでそもそも優位なわけで、そこに配信技術の向上によるコストの低下が追い風になっているのでしょうか。

  
 ちなみに、個人的には配信時のインフラの安定性が高く求められるストリーミング配信よりは、非同期で再生できるダウンロード型配信の方が有望だと思っていますが、日本ではフジといいUSENといい、ストリーミング配信が主流のようですね。

 フジテレビはISPと提携することで、インフラの安定度を確保する形で配信するということなんでしょうが、どうなんでしょう?

 iPodとiTunesの組み合わせの成功例にならうのであれば、現在急速に普及しつつあるHDDレコーダーに有料でコンテンツをコピーできるモデルを組み上げた方が良い様な気もするんですが・・・難しいのかな・・・