日本のブロードバンドは儲からない?

日本のソフトバンク型ブロードバンドは失敗? : IT Pro 記者の眼を読んで。

 現在の日本のブロードバンドを巡る環境を考える上で非常に参考になる記事です。

 「日本のブロードバンドはすごいね」・・・。昨年末に取材で訪れた英国で,繰り返し言われたのがこれ。褒められてうれしくなったのもつかの間,「だけど日本みたいにはなりたくないな」と必ず言われてしまう。

 英国は、いまだに256~512kbpsがブロードバンドの主力だそうで、日本国内でADSLが40Mbps台、FTTHで100Mbps台を中心に高速化を売りに競争が起こっているのとは雲泥の差があります。

 やはり、英国の通信事業者からすると「節操なく続くスピード競争で,ビット単価(1ビット通信当たりにユーザーが支払う料金)を落とすのはまっぴらごめん」というのが本音のようです。

 まぁ、そう言われて振り返って見ると、日本国内のブロードバンドサービスはYahoo!BBが口火を切った価格競争で、「誰も儲からない」水準での競争が続いていると言われます。

 Yahoo!BBがサービスを開始した当初は、多くの通信事業者が「あんな価格帯で儲かるわけが無い」と嘆きつつも、やむを得ず追随したと言うのが実情でしょう。
 欧米の通信事業者が、この轍は踏みたくないと願うのも当然な気もします。

 
 ただ、その代わり大きなメリットを享受している人もいます。
 我々利用者はもちろん最大の受益者です。
 
 今なら4千円も払えば十分すぎるほどのブロードバンド環境を自宅に整備することができます。
 利用するたびに通信料金を気にして頻繁に接続を切ったり、テレホーダイタイムに固執する必要もなくなりました。

 記事にあるように『「通信料金を安くしてアプリケーションでもうける」という成功モデルをはっきり示せた事業者はいない』というのは、確かに通信事業という視点ではそうですが、バブルを乗り越えたインターネット関連事業者はブロードバンドの普及に後押しされるように事業を拡大しています。

 つまり、実際には通信料金の低下によってアプリケーションで儲ける事業者は増えてきているわけで、通信事業者にとっての問題は、現状の通信事業の収益と、アプリケーションでの収益の規模が差がありすぎる点なのかなぁと感じます。
  
 
 そういう意味では、日本のインターネット関連事業者は、世界的に見ても非常に良い事業環境にあり、有利な立場にあるとも言えるはずですね。
 これなら世界をリードするブロードバンド産業が日本から生まれて当然・・・と思うのですが、あまりグローバルに展開できているという話を聞かないのが残念です。

 そういえば、携帯電話周りのコンテンツ事業も、結局あまり国際展開できていないような・・・
 やはり言語が問題なのか、それともそもそもインターネット関連事業ってのはドメスティックなものなのでしょうか?

ヤフーが買うならシックス・アパート?はてな?

Kazuho Oku’s blog 「Yahoo! が Six Apart を買収へ?」を読んで。

 つい先日、Six ApartがLive Journalを買収するという話があったばかりなので、つい「おおっ、まじか!?」と思ってしまいましたが、どうやら推測記事だったようです。


 まぁ、GoogleにはBloggerがあるし、Microsoftも手を出しているし、一体Yahoo!はどうするんだ?というのは多くの人の疑問でしょうから、ガセネタとしてもつい信じてしまいそうになる背景があるのも事実ですね。

 特に日本国内のブログ周辺を巡るプレイヤーの乱立具合を見れば、ヤフーの今後はますます気になります。

 ライブドアがブログだけでなくSNSも始めたり、エキサイトがビジネスブログポータルを開設したり、GMOグループではJUGEMにYaplogにと複数ブログサービスを持っていたりと、ポータルの3番手あたりを争おうとしているグループがブログ周りで盛り上がっているのに比べると、ヤフーは申し訳程度にジオログを始めた程度で、その超然とした姿勢は不気味なほどです。

 グロービスの小林さんもブログで「今年、サービスの統合も含め、日本にブログサービスの再編が起こるだろう。」と予言していますが、奥さんが「ヤフーが買うとしたら、やっぱり、はてな? 」と書かれているように、つい色んな組み合わせを想像してしまいますね。

 そういう意味で、さっそくこの風説の流布に鋭い突っ込みを入れているR30::マーケティング社会時評のコメントで、なるほどなぁと思ったのが下記の部分。

 そもそもブログユーザーというのは、最大手のライブドアでさえ20万人、はてなが10万人、その他にも数万人を擁するサービス業者が10社ぐらい並んでいて、端的に言って「どんぐりの背比べ」状態である。その中でよほどマーケティング、技術上のアドバンテージがあるのでもない限り、ヤフーがどこか1社にカネをつぎ込んで買収するなんてことは考えにくい。(中略)「横綱相撲」を取るプレーヤーが乗り出してくるほどには、ブログというのはメジャーでも何でもない世界なんだと思うよ、きっと。

 まぁ、そういうことなんでしょうねぇ。
 ヤフーの利用者数やシェアを考えれば、実際現状のブログの市場規模なんてかわいいものでしょう。
 

 ただ、ヤフーの社員の方にこの辺の話を聞くと「もう、うちも大会社だから小回り効かないんですよ・・・」というあきらめとも謙遜ともつかないコメントが返ってくることが多いというのもまた事実。
 
 はたしてこれはトップポータル事業者にとってのイノベーションのジレンマ的な現象なのか、それとも後からやっぱりヤフーが美味しいところを持っていくんでしょうか?

livedoor フレンドパークはmixiに追いつけるか?

ライブドア、ソーシャルネットワーキングサービス「livedoor フレンドパーク」β版サービスを開始 – livedoor コンピュータを読んで。

 ポータルサイトを保有している会社のSNS参入というのは、国内では初めてですから今後の動向が非常に注目されます。


 最大の焦点は、やはり、既に30万人近い利用者を抱えているだろうと言われているmixiに追いつけるのかどうかという点でしょう。

 ライブドアにしろ、その他のYahoo!のようなポータルにしろ、ポータル利用者と言う意味では数百万人単位の利用者がいるわけですから、狸算をすれば簡単に追いつけると言う心積もりはあるでしょう。

 特にブログでの利用者獲得合戦を振り返って見ると、先行するサービスがパフォーマンス低下で評判が低下したところに、資金力のある会社が金に物を言わせたサービスを展開して顧客をかっさらうというシナリオも考えられなくはありません。
 

 ただ、SNSは既に利用している友達という資産を考えると、移行コストが非常に高いサービスで、その移行の敷居の高さは、移行が比較的簡単なブログの比では無いはずです。

 使い勝手が多少便利になる程度では、現在のmixi利用者がわざわざlivedoorフレンドパークに移行する可能性は低く、SNS的なものが好きであったり中核となるであろうコアターゲット層がmixiやGREEにほぼ囲われつつある現状を考えると、普通に同じ事をやるだけであれば、さしものlivedoorも苦戦を強いられそうに思いますが、どうなんでしょう?

 ちなみに、ソーシャルネットワーキング.jpの原田さんが早速レビューをかかれています
 友人のカテゴリ分けなんかは、是非mixiやGREEにも導入してほしいなぁと思いましたが、まぁそれは細かい機能の話なので。

 やはり、気になるポイントは、原田さんが書いているとおり「既にLivedoorは、ブログ、アバター、デパート、オークション、マップなどなどなど多数のコンテンツを抱えておりそれらとどう絡ませるかが楽しみである。」という点ですね。

 独立系のmixiやGREEでは難しい、ポータルサイトならではの独自展開を見せてくるのか、それとも力技や想像もつかない奇策でトップSNSに食い込んでくるのか。
 とりあえずは、楽しみに様子を見ていきたいと思います。

ソフトバンクホークスとソフトバンクブランド

ITmediaニュース:「ソフトバンクホークス」誕生 企業ロゴも一新を読んで。

 年をまたいだ恐ろしく古い話題になってしまいましたが、結局ソフトバンクの社名は変わりませんでしたね。


 11月に「ソフトバンクというブランドの行く末」という記事まで書いて楽しみにしていた自分としては、残念な(?)限りですが。

 これまでに積み上げた認知度を消し去るのはもったいないと考えたのか、愛着のある社名を変えることに反対した人たちがいたのかは分かりませんが、公表されている理由は「同社が目指すデジタル情報革命にはソフトが重要」と考えたためだそうです。
 まぁ、落ち着くところに落ち着いたと言うべきなんでしょうね。

 日本テレコムの社名がソフトバンク〇〇になる日も遠くはなさそうです。
 (さすがにヤフーBBのブランド名を今更変えるとは思えませんが・・・)

 
 ちなみに、個人的には昨年一年かけた球団買収騒動を冷ややかに見守っていたのですが、最近テレビのニュースで「ソフトバンク(ホークス)が」「楽天(イーグルス)が」とキャンプ情報等で社名が毎日連呼されるのを見ていて少し心を入れ替えつつあります。

 これが野球の影響度の大きさと言うべきなのか、球団名に企業名がしっかり入る日本の野球ならではなのか良く分かりませんが、今回の買収によるブランド認知度向上の効果は私が思っていたよりも大きそうです。

 
 そういわれれば、オリックスがブレーブスを買収したときも「オリックスって何?」という感じでしたが、今や普通ですし。
 IT業界以外の一般の人にとっては、オリックスの時も、今回のソフトバンク、楽天の参入も同じような話なのかもしれないですね。

 どうもIT業界の視点で見すぎていたかもしれないなぁと反省中です・・・

ゲームアイテムの売買とバーチャル経済

Wired News – 禁止しても拡大する、ゲームアイテムの売買 – : Hotwiredを読んで。

 オンラインゲームにおけるバーチャルな貨幣やアイテムの売買をゲーム会社がいかに阻止するかと言う話を良く聞きますが、バーチャルアイテムの2次市場の規模は、なんと年間8億8000万ドルにのぼるそうです。


 個人的には、パチンコや競馬でお金を入手することができるのだから、オンラインゲームでお金を得ることができても良いじゃないかと思ったりしていたのですが、話はそれほど単純ではないようですね。

 論点は、青少年に与える影響などの倫理的な話だけでなく、詐欺行為や、リアルの金持ちがゲーム内でも金持ちになってしまうなど、多岐にわたるようですが、興味深かったのは「貨幣運営」の視点。

 このHotWiredの記事を受けてe-Tetsu Blogでは下記のように分析されています。

ゲームの運営者がゲーム内の財産をリアルマネーで取引することを嫌うのは、そのゲーム世界の財務責任を負うことを恐れるからではなかろうか。価値が高まれば高まるほど、つまり人気が出ればでるほど、その運営は神経をすり減らす作業となり、後には引けなくなる。

 そういう話もあるのであれば、確かに単純に判断できる話ではないですね。
 ゲームを運営しているつもりが、いつのまにか日銀と同じ悩みを抱え込むことになるなんて・・・・ 

 ただ、個人的には売買の禁止は非常に難しいとも思います。
 記事の中でも発言があるように「売り手は必ず出てくる。なぜならそれに金を払う人がいるから」です。

 そういう意味では、HotWiredの記事の最後にあるように、それを前提として考えるというのもアリかもしれません。
 先日ご紹介したCyworldなども、バーチャル通貨が機能している事例かもしれませんから、そろそろオンラインゲームでもそういうビジネスモデルが機能してもいいとも感じます。
 
 まぁ、個人的にも昔オンラインゲームにはまったことがあるので、ゲームでお金が稼げたら良いなぁと思ってしまっているだけかもしれませんが・・・
(でも、そうなるとゲームの世界も現実と同様殺伐としてしまいそうで、難しい問題ですね)

2006年に向けた携帯電話産業の前哨戦の始まり?

2004年総集編–定額制と新規参入で変わる携帯電話業界 – CNET Japanを読んで。

 いよいよ2005年は、今後の携帯電話産業の未来を占うのに重要な年になりそうです。


 2004年は、ソフトバンクが総務省に対して行政訴訟を起こして世間の注目を集めましたが、それもこれも我が世の春を謳歌する移動通信事業に参入したくて仕方が無いからでしょう。

 CNETの記事を見れば分かるように、携帯電話のARPU(顧客一人あたりの収入)は6000円~7000円代。
 一般的なADSLが3000円代なのを考えると固定通信事業者が移動通信に参入したがる気持ちは良く分かります。

 しかも、携帯電話は個人個人が契約するのに対し、固定電話はいくら頑張っても世帯毎、携帯はほぼ全国民から等しく6000円を超える金額を徴収できているわけで、通信事業者で移動通信参入を望まなければ嘘だと言えます。

 ただ、CNETのシェアのグラフに出ているように、この数年間携帯電話事業者のシェア争いにそれほど大きな変化が無いのも事実で。
 典型的なバランスの取れた寡占化市場と言えるでしょう。

 さて、このバランスが新規参入によって変わるのかどうか?
 鍵を握るのは2006年と言われている番号ポータビリティの導入と言われていますが、果たしてどうなのでしょう?
 
 固定電話のマイライン導入のときもシェア激動のチャンスと言われ、フュージョンコミュニケーションズの参入や熾烈な値下げ合戦が話題を呼びましたが、ふたを開けたらほとんど何も変化がありませんでした。

 
 今回の移動通信への新規参入が、ADSLにおけるヤフーBBのような大成功へのチャンスになるのか、マイラインにおけるフュージョンのようなある程度の新規参入のチャンスに過ぎないのか、なんとも良く分からないところです。

 ただ、個人的に最近痛感しているのは、利用者から見れば固定通信だの移動通信だのと言う区分は無意味であること。
 利用者に「通信インフラ」を提供するのは最終的には一社になる可能性もあるわけで、固定通信事業者からしてもここが正念場になるのではないかと思います。

 正規に携帯電話事業参入を表明しているのは、ソフトバンクとイーアクセスだけですが、公衆無線LANサービスも移動通信事業と考えれば、NTT地域会社にNTTコミュニケーションズ、先日Skypeとの提携を表明したライブドアなども候補に上がるわけで。

 今年の動向は実に興味深いところです。