[メディア]ハードディスクビデオと電通の未来 を読んで

isologue -by 磯崎哲也事務所: ハードディスクビデオと電通の未来を読んで。

 磯崎哲也事務所の磯崎さんは、リアルタイムでテレビをほとんど見ていないそうです。


 何でも、CoCoonを買ってからほとんど録画でテレビを見ているそうで、「ハードディスクの価格低下のスピードを考えるに、5年後、10年後にテレビをリアルタイムで見る人って、明らかにかなりの少数派になってるんじゃないでしょうか。」と書かれています。

 さて、そうすると現在のテレビ媒体を中心とした電通や博報堂のビジネスモデルはどうなるんでしょうか?
 

 シンプルに考えれば確実に崩れるはずです。
 最近のハードディスクレコーダーには、明らかにCM飛ばしのための30秒早送りボタンがついてきてるし、大手企業がテレビCMをやめるという記事も見ます。
  
 しかし、磯崎さんが電通のファクトブックのデータをブログに掲載されているように、実はここ数年はテレビ広告の市場規模というのはあまり下がっていないように見えます。
 実際、広告代理店の方に話を聞いても結構強気です。 
(仮にテレビの媒体価値が下がったとしても、マス向け広告をやろうとする限り地上波テレビが結局一番コストが安いとか)
 ネット広告ではテレビの置き換えにならないというのがその根拠なのでしょう。

 逆に、Ad Innovatorの織田さんが「P2Pを使った映画のダウンロードサービス:NetCableTV」で書いているように、「今までのTVなどの広告ビジネスモデルは、予算のほどんどを媒体費につかい、制作費はそれこそ予算の何分の一、何十分の一という感じだった。このようなP2Pテクノロジーが出てきて、この媒体費が基本的にただになる。コンテンツ配信のコストが必要なくなるからだ。これにより広告ビジネスのモデルは間違いなく変わっていく。」という見方もあるようです。

 さてどうなるのでしょうか?

 もし、現在のテレビCMが衰退するとしたら、代わりになるものの一つの流れとしては、広告と番組の一体化があるでしょう。 
 007の映画と車のニューモデルのタイアップなんかが有名ですが、ジム・キャリーの映画「トゥルーマンショー」にあったような、番組中にあからさまに広告をするパターンも今後増えてくるかもしれません。

 ショップチャネルのような通販番組自体が優良コンテンツ化している流れもあるし、実際にはもう既にそういう流れにあるのかもしれません。
 あんまりその風潮が出てくると、今度は番組全てを斜めに見ないといけなくなりますね。

 まぁ少なくとも、現在のテレビ番組の主流である「その答えは!」で人を前のめりにさせといてCMに入るという、視聴者をおちょくった番組作りが減るのなら私は歓迎ですが・・・

アマチュア革命がもたらす世界 を読んで

CNET Japan Blog – 梅田望夫・英語で読むITトレンド:アマチュア革命がもたらす世界を読んで。

 結構前の記事になってしまうが、非常に考えさせられる内容だったので取り上げてみたい。


 梅田さんはこう書いている。

「つまり、20世紀にプロが台頭してアマチュアを蹴散らしていった根拠は、何がしかの権威によるお墨付き(certificates)であったが、これからはそうではない時代に入る、ということが事の本質なのだと思う。」
 
 梅田さんがここで書いているプロのお墨付きである「大学を出る。資格を取る。認可を得る。などの権威が認めた証書」が権威を失うという現象は、そこら中で見ることができる。

 一番端的な例でいえば、学歴だろう。
 有名大学を出て一流企業に就職すれば、終身雇用で一生安泰という時代は終わりつつある。
 もちろん教育が不要だという話ではないが、受験戦争にさえ勝ち抜けば一生安泰という人生は、もうごく一部の組織でしか残っていない。

 資格業にも同様の変化がおきているらしい。
 先日前職の経理部の人間と話をしたら、会計処理にもITの波がやってきていて、多くの公認会計士が職を失う時代が来るのも時間の問題ではないかという話になった。
 もちろん規制の問題があるので完全に仕事が消え去るという話ではないが、資格を取って事務所を開けば家の近くのビジネスが取れるという時代はもう終わっている。

 医者のようなプロではなければできない仕事も、一般人が医学の知識をつけてきたことにより急速に権威を失いつつある(とはいえ、病気になったら頼らざるを得ないのだが)

 この変化を引き起こしているのは、変化時代のスピードが早いこと、手軽に幅広い情報が入るようになったこと、ネットが距離を埋めてしまうこと、など様々な要因があるのだろう。

 
 まぁ、でも冷静に考えればこれまでの「ある若い一時期に徹底的に競争して、ある種のCertificates、つまりは既得権を獲得してプロになる」という仕組み自体がある意味不思議なシステムだったのかもしれない。
 既得権によって「生涯の競争優位」を簡単に手に入れることができたわけだから。

 結局「プロ」であるためには一生プロとして努力しつづけなければならず、そうしなければ真の意味でのプロとは呼べないというのが真実なような気もする。
 

 そうしみじみと考えさせられたのが先日メジャーで大記録を達成したイチローの
言葉だ。
 テレビで見ただけなのではっきり覚えていないが、イチローが地元の野球少年立ちを前にこのような発言をしていた。

「日々、自分が正しいと思ったことを信じて努力してください。
 そして、人生で大きな選択をしなければならなくなったときに、自分で選択できる大人になってください。」

 やはり、プロの言葉は違うなぁと感動してしまった。

(ちなみに、最近の発言は「滑走路」の「偉業」というエントリにまとめられていました。あらためて読むとこちらも凄いなぁと言う感じなのでリンクしておきます。)

[P2P]Skypeが企業向けVoIP市場に参入へ を読んで

Skypeが企業向けVoIP市場に参入へ – CNET Japanを読んで。

 P2P電話のSkype(スカイプ)が、いよいよ企業向けIP電話市場を明確にターゲットにするようだ。


 ここ数ヶ月のSkypeの認知度向上は目覚しいものがある。
 IT系の雑誌はおろか、週刊ダイヤモンドや朝日新聞、ついには週刊プレイボーイにまで掲載されてしまった。

 さて、やはりここで気になるのは「はたしてSkypeは企業で電話の代わりになるのか?」ということじゃないだろうか?

 朝日新聞に25万人と出ていたが、現在Skypeを使っている人の多くはテクノロジーへの興味で「試した」人が中心なのが実態ではないかと言われているし、実利用の中心は、主に海外とのやり取りだと考えられる。
 ただ、電話市場の中で国際通話の占める割合は非常に小さい。
 国内電話の料金はプロバイダ型のIP電話の登場によりかなり低水準まで既に下がっているので、無料電話目当てだけでSkypeの普及が急速に進むとは思えない。

 私も5月ごろ某情報サイトのコラムでSkypeを取り上げたが、正直な話、当時は実利用での普及にはまだしばらく遠いのではないかと思っていた。

 でも、案外、国内でもSkypeが早くに普及する可能性はあるんじゃないだろうか。

 Skypeのようなソフトフォンの最大のデメリットは、PCのような端末に依存している点だ。だからいろんな批判的な意見がある。

・電話をするのにはヘッドセットなどの機器が必要だし(⇒かかってきた時にかぶるのがばたばたするし、日本のオフィスでは結構恥ずかしい)
・現在は番号体系やPCの起動状況の関係で、完全に電話の代わりをすることが難しいし(⇒結局普通の電話も残さざるを得ないんだったら、そっちでいい)
・誰かのPCに電話がかかってきても、他の人が代わりに取れないし(⇒日本のような誰かが変わりに電話を取る文化には馴染まない)

 一般的な企業を相手に普通に考えれば確かにそうだ。
 ただ、小規模なIT系の企業とかに閉じてみると、案外上記は問題にならないような気がする。

 IT系の会社は、メールでのコミュニケーションが中心になるので案外電話を利用するシチュエーションは少ないことが多い。
 そう考えれば、上記の批判的な意見をクリアするのは案外簡単だ。

 例えば、オフィスにかかってくる電話は、今までどおり普通の電話で受ければいい。
 ただ、個人ごとの電話はSkypeInの番号とかにしてしまっても良いだろう。席を外すときはPCを切ってしまえば、Skypeができないとき=電話で話ができないとき、なのだから留守番機能が動作すればいい。

 自分が電話をかけるときはPCが席にあるんだから、そのPCを使えばいい。
 以前にも「Skype、有料IP通話サービスの試験提供を開始 を読んで」で書いたが、SkypeOutを使えばSkype利用者にも普通の電話番号にもPCから電話をすることができる。

 ヘッドセットは確かにうっとおしいが、BlueTooth対応ヘッドセットなんかが出てきているし、慣れれば両手が自由になるので逆に便利なのに気づく。

 そもそも何で席にPCのような大きい箱が置いてあるのに、電話機のような小さい箱を並べて置かなければいけないんだったっけ?

 番号をボタンで押してかけるから?
 別に電話アドレス帳もPCに入っているんだから、携帯電話でかけるようにアドレス帳から相手を探して一発でかける方が自然な流れじゃないんだろうか?

 そうすれば、その会社は多機能電話機とか高価な交換機とか無駄な買物はしなくて済む。(もちろんコールセンター機能は別で必要になるだろうが、それはアウトソーシングしても良いだろうし)

 なんだかそうやって考えれば考えるほど、自分が過去の常識に囚われている古い人種になってしまっていたような気がしてしまった一日でした・・・

[通信業界]ソフトバンクがイー・アクセス全株を売却 を読んで

ソフトバンクがイー・アクセス全株を売却 – CNET Japanを読んで。

 どうも、私は大きな勘違いをしていたようです。


 ソフトバンクが日本テレコムを買収したときに、てっきりTD-CDMAの電波の権利を押さえる意味もあるのかと思っていたのだが、今回ソフトバンクはあっさりイーアクセス株を売ってしまった(笑)

 イーアクセスのADSL事業自体は、おそらくヤフーBBのインフラとかぶるし、ヤフーBBのライバルへのインフラ提供という事業なので、何となくいるのかいらないのかグレーだったが、TD-CDMAの権利についてもいらないとは思わなかった。

 ただ、どうもいろんな人に聞く限りではTD-CDMAの帯域幅だけでは、ソフトバンクが思い描く大規模な移動通信事業参入は難しいというのが現状のようだ。

 そういう背景が、先日の800Mhz帯域の問題で孫さんが総務省に噛み付いた背景にあるようで、ソフトバンクには別の帯域幅が用意されるのではという噂も耳にする。
 そんなこんなでTD-CDMAには興味を失っているということなのかもしれない。

 まぁもちろん、そもそも日本テレコムがイーアクセスに出資していたといっても所詮十数%。簡単に過半数を確保できる状態ではなかったんですが。
C&Wにすら食指を見せていたのに、なんでイーアクセスは不要なんでしょう?
やっぱり本当のところは良く分かりません。

 案外イーアクセスの経営陣が反発を見せたとか、他の株主が売ってくれなかったとか、イーアクセスの顧客がアッカに切り替える兆しを見せたとか、いろいろ裏事情があるのかもしれませんね・・・

Amazon、Yahoo!、eBayと楽天は何が違うのか を読んで

CNET Japan Blog – 梅田望夫・英語で読むITトレンド:Amazon、Yahoo!、eBayと楽天は何が違うのかを読んで。

 CNETの梅田さんと楽天の(GREEの)田中さんのディスカッションが非常に興味深い。


 梅田さんの「Googleと楽天・ライブドアを比較することに意味はあるか?」という記事に対して、田中さんが「ネット産業は、サービス産業かテクノロジー産業か?」というトラックバックを打ち、それに梅田さんが答えるという形で議論が展開していく。
 (実は私もそれぞれの記事に個別にトラックバックを打ちながら考えようと思っていたんですが、議論のスピードについていけませんでした(笑))

 最後の梅田さんの記事のタイトルには含まれていないが、根底に流れているのは「Googleは何なんだ?」という疑問のように思う。

 
 まず米国のYahoo!、Amazon、eBayと楽天の比較論は、根本的には既存のサービス産業の違いとそれほど変わらないと思っている。
 Think Global, Act Localという有名な言葉があるが、どの産業においてもいくら経済のグローバル化が進んでいるといっても、その国にあわせたローカライズを行わないで成功するということは少ない。

 もちろん自動車やテレビのような製造業や、マクドナルドのような飲食業では事情はかなり違う。言葉を伴わない「モノ」の場合は、その製品自体が対象の国の文化に受け入れられれば、ある程度は用意にグローバル化が可能だ。
 しかし、それでも国にあわせて適切な手を打たなければ成功できないというのは、過去の数多くの外資系企業が日本参入で失敗した例や日本企業の海外進出の苦労を見れば明らかだ。
 (例えば米国車の日本参入の数々の失敗なんかが分かりやすい例かもしれない)

 これが言語をベースとする情報産業になると、その敷居はさらに高くなる。
 もちろんグローバル言語である英語の国が優位にあるのは言うまでも無い。グローバルな規模の優位を確立することも容易だし、そもそも最初からそれを計算に入れているモデルも多い。
 
 逆にいうと、情報産業においては米国で成功しているからと天狗になって参入すると失敗するのは当たり前だろう。
(米国のネットオークションで圧倒的な成功を収めているeBayが、鳴り物入りで日本に参入したのに上手く行かずに撤退したのは有名な話だ。)
 結局どんな産業であっても、それぞれの国の顧客を見ながら事業を行わなければ成功できないという話に帰結する気がする。

 上記の話とGoogleの現在の成功については次元が違う話だ。
 だから、この議論が盛り上がるのだろう。

 もちろん、Googleが顧客を見ていないわけではないのだが、Googleは明らかに顧客をテクノロジーでリードしている。
 他の事業者が基本的には既存顧客のニーズをテクノロジーで満たそうとしているアプローチなのに対し、Googleは「俺が作る未来についてこい」と言わんばかりの勢いに見える。 
 
 先日もMOTの勉強会で同じような議論になったが、やはりこういうテクノロジーでパラダイムを変えられる企業が、変化の時代には強いという話になった。
 変化を作り出して自らゲームのルールを変えることができるからだ。
(実際、これまでのネット産業は既存のインターネットやMicrosoftのルールの上でプレイしていたのに対し、Googleは強力な検索エンジンを武器にインターネットをあたかも人々の巨大なデータベースであるかのようにインターネットのルールを変えてしまったと思う) 

 ただ、逆にいうとゲームのルールが固定化した後や、テクノロジーが陳腐化すると、逆にそれが足枷になってしまうということも良くあることだ。
 そうなった時に、テクノロジーだけの会社は実に弱い。自社のテクノロジーが別のテクノロジーや低コストなものに置き換えられてしまうと存在価値を失ってしまうから。
 そうなった時には、結局顧客を押さえているものが強いということになるのではないだろうか。

 最近のGoogleのGmailやSNSへの事業展開には、そんな未来への思いが強く表れているように感じてしまいました。

 と自分でも書きながら、だんだんまた良く分からなくなってきてしまいましたが・・・ちょっとまたもう一度勉強しなおします・・・

「Googleニュース」登場の衝撃 を読んで

「Googleニュース」登場の衝撃を読んで。

 早いもので、Googleニュースの日本語版が開始されてもう一ヶ月になる。


 最初にGoogleニュースについて取り上げたときには、記事掲載を拒否しているのは一部の新聞だけだったような雰囲気だったが、どうも勝手掲載だったようだ。
 いつのまにやら大手で掲載されるのは朝日新聞と日経新聞だけになったらしい。
 (現状のニュースソースの一覧はceek.jpでまとめられています

 以前に「準備着々、報道機関ライブドア を読んで」でも書いたが、最近ますますメディア産業というものも一つのコンテンツ産業として見れば良いのでは?との思いが強くなってきている。

 記事というコンテンツを「つくり」、何らかの方法で利用者に「提供する」というイメージだから。
 音楽というコンテンツを「つくり」、何らかの方法で利用者に「提供する」のと同じように考えれば良いような気がする。
(ちょっと極端すぎるかもしれないが) 

 今回のGoogleニュースに対する反応も、各メディアが自分のコアをどちらと思っているかで変わってくるような気がする。

 記事を「つくる」のがコアだとすれば、その記事の提供先がGoogleニュースのような形で増えるのはウェルカムのはずだ。
 逆に記事を「提供する」のがコアだとすれば、インターネット上のメディアという軸では、Googleニュースをライバルとみなさざるを得ないだろう。

 「つくる」機能と「提供する」機能の両方を持っている既存大手メディアの「持てる悩み」がこれからより深くなるような気もする。 
(つくる側の機能がブログとの競合でどうなるかという話は、Unfogettable Daysの「ブログジャーナリズム/ブログメディアの特徴」で丁寧にまとめられています。こちらはまた別の機会に考えたいです。)

 
 ちなみに湯川さんのブログでは「グーグルニュースのコンピューターは、短時間に同じテーマの記事がどれだけ多く出ているかなどといったことを重要度の判断基準にしている。つまり記事を出す報道機関が数多く存在していて初めて成り立つ仕組みだ。現在のグーグルニュース日本語版のように大手が2,3社しか参加しないようではうまく機能しない。」と書かれている。

 実はこの点については、個人的には少し疑問があったりする。
 これまでの大手新聞の記事は、それほど各誌で大きな違いを見せていたんだろうか?
 案外、最新記事レベルであれば、現状のニュースソースでそれほど変わらないサービスを提供できてしまったりしないのだろうか?

 もちろん私も、グーグルニュースが既存メディアの役割を全て置き換えられるとは思っていない。
 先日週刊アスキーの編集長をされていた福岡さんにお聞きしたときは、やはり見出しの編集能力が重要だと話されていた。特に日本語は漢字の選択やひらがな・カタカナなど英語に比べて見出しの自由度が高いから、より一層編集者の裁量が影響するようだ。
 このあたりはグーグルニュースのような自動的な仕組みではカバーするのはかなり難しい。 

 まぁ所詮まだサービス開始から一ヶ月。
 この議論の結論が見えてくるのはまだまだ先の話でしょうね。

 どうなるのかなぁ・・・