ブログがジャーナリズムを変える (湯川 鶴章)

ブログがジャーナリズムを変える 「ブログがジャーナリズムを変える」は、「ネットは新聞を殺すのか」という刺激的なタイトルで有名な、時事通信の湯川さんの新作です。
 光栄にもデジタルジャーナリズム研究会で、献本をいただきましたので読んでみました。
 
 ブログと既存メディアの関係というのは、個人的にも非常に興味がある分野です。
 個人的にはブログのようなCGMは既存メディアを破壊するものではなく補完するものだと考えていますが、その過程で発生している変化が既存メディアのビジネスモデルを壊し始めているのは事実。
 その現実を直視し、警鐘を鳴らし続けてきた湯川さんの未来予測には賛同できるところが多々あります。
 特に印象に残ったのは情報ハブという視点。
 デイブ・ワイナーの発言の引用で「読者を巻き込んだ新しいタイプのジャーナリズム」というのがありますが、これまでの記者と読者という対立した区別ではなく、記者も読者も同じサイドに巻き込み、エディターがその交通整理をするというイメージは興味深いです。

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さおだけ屋はなぜ潰れないのか (山田 真哉 )

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 いまさら紹介する必要も無いほどのベストセラーで、いまさら読むのも恥ずかしい限りなんですが、嫁さんが知り合いに進められたとかで買ってきたので、ついでに便乗して読んでみました。
 
 会計といういわゆる数字苦手人間にとって縁遠い分野を実にわかりやすく解説していて、なるほどこれは売れるわけだと妙に納得です。
 
 個人的に印象に残ったのが「人脈は回転率で考える」というひとこと。
 まさか会計本で人脈論が展開されるとは思いませんでしたが、「人脈というと、なるべく多くの業種の幅広い世代の人々と関係を持つことに重点が置かれがちだが、それは大きな勘違い。」というくだりには考えさせられるところがあります。
 そういえば、一時期GREEで友達登録の数を増やすのに凝っていた時期があったなーと振り返ってみたり。関係ないですが。
 いまさら言うのも恥ずかしいですが、会計について食わず嫌いの人にお勧めの本です。

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ブログスフィア (ロバート・スコーブル)

ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち ブログスフィアは、あのマイクロソフトのブロガーとして有名なロバート・スコーブルが執筆した本です。
 ONEDARI BOYSの関連で献本していただきましたので、早速読んでみました。
 最初は「ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち」というタイトルからだと、アメリカブログ界の歴史本のように思ってしまったのですが、違います。
 ブログというツールが、企業と消費者の会話をどのように変えてきたのか、そしてこれからどのように変わっていくのかというのを、企業ブロガーの第一人者の視点から鋭く分析したビジネスブログ担当者向けの指南書ですね。
 原書のタイトルが「Naked Conversations(裸の会話)」で、副題が「How Blogs Are Changing the Way Business Talk Withs Customers(顧客とのビジネストークをブログがどのように変えていくのか)」なので、そちらからイメージしてもらったほうが分かりやすいかもしれません。
 これまでの企業から消費者に向けての「広告」という一方的なコミュニケーションではなく、ブログを通じた双方向の「会話」というのがいかに重要で、いかに強力かということを、実体験や事例を踏まえて多角的に分析・解説されている非常に良い本です。
 さすがロバート・スコーブル。
 「会話の時代」という表現も印象的でした。

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インターネットの法と慣習 (白田 秀彰)

インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門 インターネットの法と慣習は、Hotwiredで連載されていた白田さんのコラムを書籍化した本です。
 デジタルジャーナリズム研究会で献本いただいたので早速読んでみました。
 実は私は法学部出身だったりするのですが、法律については正直全く理解していません。そもそも日本で法律というと、なんだか堅苦しい押し付けられたルールという印象があって、日常生活に役立たなさそうですし。とか言い訳してみたり。
 そんな私でも、この本を読むと法律がそもそもどういうものだったのか、という根本的な部分から振り返って理解することができました。 
 そもそも法律とは誰のためにあるのか、国によってなぜこれほど受け止められ方や使い方が違うのか、インターネットの登場によって法はどういう変化を要求されているのか、白田さん独特の軽妙な語り口でわかりやすく解説してくれます。
 特にタイムリーなのが著作権に対するくだり。
 今まさにYouTubeに関連してネット上でも議論が盛り上がっているところですが、現状の著作権法とネットワークにおける法律について、封建社会と比較するあたりは非常に考えさせられるところです。

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コの業界のオキテ!!  (藤原博文)

 コ(コンピュータ)の業界のオキテ!!は、1995年に技術評論者から刊行された書籍です。技術評論社版については数年前に絶版になっているのですが、今回Talpa-Techによって復刊されたものを献本いただいたのでご紹介します。
 タイトルからすると、ハードウェア業界の話に思えるかもしれませんが、内容はソフトウェア・プログラマー業界についての話です。
 業界の諸問題を内部から赤裸々に指摘しており、そこここで納得しながら読んでました。
 特に驚きなのは、この本が1995年に刊行されたという事実。
 10年以上たった今でも、業界が抱える問題というのはそれほど大きく変わっていないことに驚かされます。
 特にプログラムの上手下手に関連して、勤務時間の長さと生産性の関係性についての指摘については考えさせられるところがあります。
 遅くまで忙しそうにしている人と、とっとと仕事を終わらせて帰る人と、果たしてどちらの生産性が高いのか、勤務時間を基準にしていると陥りやすい罠だといえるでしょう。
 また、今後のプログラマ育成のための問題点の指摘についても「記憶に頼る学習くらい役立たずはない。」「学校で学ぶべきことは、新しい知識の習得方法、習得の訓練であってくれなくてはならない」という指摘には改めて考えさせられます。
 細かい暗記に頼らなくても、インターネットで検索すれば「答え」は見つけることができる時代に、はたしてどういう教育をすれば良いプログラマ、エンジニアを育成することができるのか。
 
 ソフトウェアやプログラミングに関わる人にお勧めしたい本です。

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そんな新事業なら、やめてしまえ! (セルジオ・ジーマン)

そんな新事業なら、やめてしまえ! 既存の資産と能力を活かす6つの原則 そんな新事業なら、やめてしまえ!は、そんなマーケティングならやめてしまえ!で有名なセルジオ・ジーマンの新刊(といっても出たのは去年)です。
 インパクトのあるタイトルが印象的ですが、書籍の中で主張されていることは経験に裏打ちされた理論で成り立っており、地に足の着いた本です。
 ジーマンが主張しているのは「イノベーション、イノベーション」と言葉に踊らされて新事業に走る前に、自らの事業を見つめなおして「リノベーション」するべきだという点。
 個人的には、新事業を立ち上げる方に興味があるので、イノベーションの方に興味がありますが、ジーマンの主張は鋭く非常に良く理解できます。
 特に印象に残っているのは、イノベーション派とリノベーション派の思考回路の違い。
 イノベーション派が「自分たちがつくれるものから出発して、売れるかどうか見てみよう」と考えるのに対し、リノベーション派は「自分たちが売れるものは何かまず見つけよう、それからそれが自分たちでつくれるものか検討しよう」とか。
 たしかにビジネスの視点で考えるなら売り上げがたってなんぼなわけで、まずそこから考えるというのは、自分の今の役割を考えると耳が痛いところです。
 そうは言っても新しい技術で何かを作り上げるプロセスはこれまた楽しいのでやめられないわけですが・・・
 新事業にたずさわる人は、是非一度読んでみると面白いと思います。
 特に大企業の新事業担当の人には胸に刺さること間違いなしです。

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