本日、AMNで新体制の開始を発表し、私、徳力が代表取締役社長をさせて頂くことになりました。
概要についてはプレスリリースをご覧いただければと思いますが、プレスリリースでは書ききれない背景や思いなんかを、自分が忘れないためにもこちらにメモしておきたいと思います。
設立から2年での体制変更と言うことで、一般的なオーナー社長ベンチャーからすれば滅多にないパターンなので、驚かれる方も多いかもしれませんが、すでに坂和さんにブログで書いて頂いているように、社内的には役割のスイッチというのが基本的なイメージです。
この2年間、AMNの方針や戦略については、本当にいろんな試行錯誤や紆余曲折がありました。
様々な課題も見つかりつつ、意外なところに未来が見えつつ、という2年間だったのですが、全体で見ると当初私個人が心配していたより、はるかに順調に来れたというのが正直な感想ではあります。
ただ、その一方で課題になっていたのが、メディア事業に対する取り組みと、AMNならではの新ソリューションの開発。
もともと、AMNは、設立時のビジョンとして、書き手の人たちの価値を重視した事業運営というのがポイントの一つとしてありました。
これは社長の坂和さんが、もともとCNETで編集を担当されていたこともあって、最近の広告サービスがアフィリエイトとか行動ターゲティングとか、あまりにメディア自体の価値、書き手の価値を無視しているという問題意識があり、ソーシャルメディア時代に適合した新しいメディアの模索というのが、一つの重要なビジョンでもあったのです。
ただ、立ち上がったばかりのベンチャー企業として、売上を上げるためには、まずはクライアントである企業に認知してもらうことや、クライアントのニーズに対応したサービスの提供が最優先。
そう言う意味で、この2年間はとにもかくにも売上を上げるための活動に全社的に注力しており、営業チームや社長の坂和さんはもとより、メディア事業をやるはずの私も営業側の支援でてんてこまいだったのが正直なところです。
おまけにメディア事業の担当が私と言っても、私自身はメディア事業の経験もないですし、どちらかというと一利用者側の視点の人間。
会社としてメディア事業がどうしても後回しになってしまっていたというのが実情でした。
そこで、2月でAMNも設立2周年を迎え、営業チーム体制も整ってきたこともあり、坂和さんからメディア事業に専念したいという提案を頂いて今回の新体制の議論となったわけです。
今後は、坂和さんにメディア事業の立ち上げに注力して頂き、営業チーム側も立花さんだけでなく、上田さんにも明確に取締役として参加してもらうことでチーム体制の強化をし、私がその間に利用者視点で全体の調整をおこなうという形の今回の新体制にするという結論に至った次第です。
実際には今までも社内的には4人でのチーム経営という意識でやっていたので、その実情に明確に体制を合わせたというイメージで、それほど4人の意識的には大きく変わらないというのが実際のところだったりしますが。
今回の新体制で、明確に役割分担もできたことで、今後よりAMNらしい活動ができるのではないかと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
というところまでが、全体の話で。
ついでに、以下に個人的な思いを書かせて頂きます。(既に長文ですが、以下さらに長文注意です)
全体の話としては上述のような感じなので、それほど社内的には大変化ではないのですが。
正直なことを言うと、私自身が代表取締役という肩書きになることに対しては、まだまだ不安で一杯ですし、強烈なプレッシャーに押しつぶされそうになっているのも事実です。
もう時効だと思いますので、ぶっちゃけたことを書いてしまうと、実は社長交代については以前から坂和さんに何度か相談されたことがあり、その都度断り続けていたという歴史があります。
前述のように、そもそもチームで経営してるわけだから肩書き自体は別に気にしなくても良いのではないかという話もありますし、すべてに細かい私なんかより部下への接し方が柔らかい坂和さんがトップでいた方が社内の雰囲気も良いだろうというのもありましたし、AMNの事業であるメディア事業にしても広告事業にしても、私自身は業界での経験が全くないという視点もありました。
ただ、今あらためて振返ってみると、私自身が一番怖かったのは、自分がいわゆるマーケティング事業をする会社側の人間に明確になってしまうことで、自分がブログ側、利用者側の潜在的な「敵」の立場になってしまうことだったのではないかと思っています。
以前にも、「私たちは、インターネットに恩返しをする責任があるということ。」というエントリーで、私がAMN自体に入ることも断り続けていたという逸話を暴露してしまったことがありますが。
当時の私にとっては、マーケティングをする「企業側」と「利用者側」は対立構造にあるというイメージがなんだかんだ言って強かったのだと思います。
ステルスマーケティングやPayPerPost的な手法をブログ上で否定しつつも、自分がもしそっちの企業側の立場になってしまったら、そういう手法を使わざるを得なくなるのかもしれない、そちら側の立場になることで、ようやっと仲間に入れてもらえたインターネット上のブログコミュニティやネットワークから敵認定されることになるんじゃないか、また仲間はずれになってしまうんじゃないか。
そんな潜在的な恐怖感があったのが本音だったと思います。
だから、私の今のブログには私がAMNの取締役であることがプロフィールぐらいにしか書いてなかったですし、私の名刺の肩書きは「取締役 ブロガー」とちょっとネタっぽい感じで、自分がまだブロガー側の人間だという言い訳を残してきたんだと改めて思います。
じゃあ、何で今になって、新体制の提案を受けることになったのかというと。
上述したような社内的な背景はもちろんあるのですが、個人的に自分のマーケティングに対する携わり方の可能性が明確に見えてきたというのが大きくあります。
残念ながら、前述したような「マーケティング=利用者の敵」とか、「マーケティング=企業の宣伝で利用者の役に立たない」というような雰囲気は、特にインターネット上で強いように思います。
実際に、これまでのマーケティング手法には、企業側の都合で利用者に一方的に押しつけられるものも多くあり、そういうイメージや敵対意識が強く存在するのは理解できます。
実際、私自身もなんだかんだ言って、そうだったわけですから。
ただ、この2年間で私が強く体験することができたのは、企業と利用者が一緒になって製品やサービスを盛り上げる、本当の意味での「Market+ing」である「マーケット(市場)を作る」というマーケティングの可能性。
2年間の間に、AMNで30回を超えるいわゆるブロガーイベントを開催させて頂きましたが、その過程で企業の中には、その製品やサービスに利用者よりはるかにこだわりを持っている人たちもたくさんいること、その思いがその製品やサービスのファンに伝われば、いろんな共感や感動が生まれることも体験できました。
そういった担当者の方々の思いやビジョンが、ちゃんと利用者と共有できれば、それによって正しいクチコミが自然と広がるような仕組みができれば、それこそが本当の意味でのマーケティングなのではないかと感じるようにもなりました。
もちろん、残念ながら今のところはまだそれは理想論であって、とりあえずはいわゆるブロガーイベントなる形態で、企業とそのファンである利用者やブロガーをつなぐところまでしか事業としては確立されていないわけですが。
この2年間のAMNで、ソーシャルバナーとか、クチコミアーカイブサイトとか、ソーシャルタイアップサイトとか、いろんな取り組みを試行錯誤する過程で、なんとなく単純なブロガーイベントだけでなく、企業と利用者で一緒にネットとリアルの両方で盛り上げていく仕組み作りが見えてきそうな気がしています。
まぁ、最悪事業としては上手くいかなかったとしても、私個人として何と言っても重要なのは、AMNでは、いわゆる「マーケティング=利用者の敵」というイメージのマーケティングではなく、「企業とそのファンや利用者が共に味方として一緒に市場を盛り上げていくマーケティング」を目指すことができそうだという自信を持てたと言うことです。
私自身は今その概念を、企業と利用者の会話という文脈で、「カンバセーショナルマーケティング」と呼んでいますが、まぁその名称は正直どうでも良くて。
インターネットを効果的に活用することで、マスマーケティングの世界に慣れてしまって利用者との対話を忘れていた企業の方々と、企業が利用者の声を聞いてくれることを信じられなくなっている私たち利用者が、もう一度ちゃんと会話を取り戻すことができれば、そのプロセスに自分が何らかの役割を担えることができるのであれば。
そんなやりがいのある仕事はないのではないかと思えるようになりました。
もちろん、カンバセーショナルマーケティングというのは、ブロガーを集めてイベントを開催すれば良いというだけの話ではないですし、ビジネスブログを立ち上げればよいというだけの話でもないですし、ブログ検索をすればよいというだけの話でもありません。グランズウェルに描かれているような様々な要素を検討する必要があると思います。
マスマーケティングに比べると、企業がやらなければならないことは大量に存在していて、本当にそういった手法が企業にとってそれがコストパフォーマンスや必要性の面から重要なのかどうかは、まだ確信できているわけではありません。
AMN一社でできることはきわめて限定的ですし、現在の日本のマーケティングをめぐる業界構造や、昨今の金融危機なんかを考えると、不安な要素が満載で今からプレッシャーに押しつぶされそうになっているのも事実です。
でも、私自身が、ブログを始める前に感じていた孤独感とか、無力感とかに比較すれば、そんな課題なんかは何てこと無いような気もしますし。
今の、大勢の方に支えて頂いているAMNであれば、きっと何かができるのではないか。
いろんな方とインターネットを通じてつながっている今であれば、自分みたいな人間が社長になっても、私たちが理想と思っている企業と利用者の関係づくりとか、コミュニケーションとかが実現できるのではないか。
そんな風に前向きに考えるようになれてきています。
(先日ご紹介したWOMマーケティング協議会なんかも、そう思えるようになった要因の一つだったりします。)
そう言う意味で、本日よりこのブログは、いわゆる社長ブログになってしまったのですが、社長だから会社の宣伝のためにブログを書くのではなく。
趣味でブログを書いていた人間が、皆さんのおかげで社長にさせて頂いたということを忘れないように、名刺の肩書きはあえて下記のようにしてみました。
正直、ブロガーと肩書きに入れるほど、ブログ書いて無いじゃないか!というお叱りを受けるのは覚悟の上ですし。
大企業の方と名刺交換をさせていただいたときに、ふざけた会社だと思われるリスクがあるのも覚悟の上ですが。
「ブロガー」というキーワードは、私自身にとっては「情報発信をする自律する利用者」というイメージで、非常に重要なキーワードだと思っており。
自分が利用者視点のマーケティングをうたっているからこそ、現在の役割を担わせて頂いていることを忘れないように。
自分がブログを書いているからこそ、現在の肩書きを頂いていると言うことを忘れないように。
あえてこの肩書きにすることをお許しください。
もちろん、AMNは新体制とは言っても、所詮設立2年たったばかりで、スタッフも14名しかいませんし、設立当初に描いていたビジョンからすると、達成できていないことばかりですし、課題も山積みの会社です。
ただ、AMNの最大の特徴は、14名のスタッフだけでなく、ブログやインターネットを通じてつながっている皆さんと一緒に何かをできること。77名のパートナーブロガーの方々や、イベントに参加頂いている方はもちろん、ブログやソーシャルメディアやインターネットの可能性を信じている皆さんと一緒に、何かに取り組むことができることだと思っています。
そう言う意味では、AMNをきっかけにやれそうなことに思いをはせると、目の前の課題や不安を忘れてしまうほど、様々な可能性が次々に浮かんで興奮してしまうぐらいです。
まだまだ拙いところが多く、お恥ずかしい面もお見せするとは思いますが、皆さんと一緒にブログやインターネットの可能性を具現化する仕事ができれば、リアルとネットの融合を良い意味で推進するようなことができれば、昨年「わたしがAMNを通じて挑戦していきたいこと」で書いたようなことが実現できれば。
こんな幸せなことはありません。
これからは、これまで以上に、皆さんと一緒にいろんなものを作り上げていく仕組みを増やしていきたいと思っていますので、アドバイスや、ご指導のほど、今後ともこれ以上によろしくお願い致します。
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