「多様な意見」はなぜ正しいのか (スコット・ペイジ)

4822246000 「多様な意見」はなぜ正しいのか は、いわゆる群衆の叡智の可能性について考察している本です。
 先日の「未来を洞察する」同様、「群衆の叡智サミット」の主催者の岡田さんが紹介されていたので、購入して読んでいたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 「みんなの意見は案外正しい」で注目されていたような、多様な集団による可能性について、非常に詳細に分析をされています。
 特に「一様な集団はたった一人の人を含んでいるのと変わらないのである」という点を論理的に分析しているくだりは、なかなか考えさせられます。
 「ウィキノミクス」や、「クラウドソーシング」など、群衆の叡智的なアプローチを模索している方には、ヒントになる点がいろいろとある本だと思います。
【読書メモ】
■問題解決において、多様性は強力な要素である・ 
 いつでも能力に勝るわけではないが、予想よりはるかに多くの場合で勝るのだ。
■多様性の分析
・多様な観点:状況や問題を表現する方法
・多様な解釈:観点を分類したり分割したりする方法
・多様なヒューリスティック:問題に対する解を生み出す方法
・多様な予測モデル:原因と結果を推測する方法
■「愚かな一貫性は、狭量な心の化け物だ」ラルフ・ワルド・エマーソン
■天才存在定理:どんな問題に対しても、富士山の地形をつくり出す観点が多数存在する
■サッカーママのようなカテゴリーが情報として価値を持つのは、そのタイプの人々の振る舞いや行動が他の人たちと違う場合だけである。
■多様性が能力に勝る
 最高のソルバーたちは似たような振る舞いをしがちで、そのため集団になっても個人の時とさほど変わらない出来を示す。
 一方、ランダムだが賢いソルバーの集団は多様になる傾向がある。この多様性が、集団としてより良い結果を生むのだ。
■一様な集団はたった一人の人を含んでいるのと変わらないのである。


■「違うことは誤解されることである」ラルフ・エマーソン
■問題解決に取り組む組織、企業、大学は、多様な観点とヒューリスティックへ変わる多様な経験、訓練、アイデンティティーを持つ人たちを探すべきである。
 とくに、一流大学から成績評価平均点の高い学生を雇うより、多様な大学から多様なバックグラウンド、専攻、選択科目を選んだ出来の良い学生を雇う方が効果的かもしれない。
■(個人でも)より大きな貢献を果たすには、多様な観点とヒューリスティックを身につけるべきだ。
■人々の集団が正確な予測をするための必要条件
・人々が多様な予測モデルを持っていること
・人々が互いに独立していること
・予測プロセスが分散していること(互いにコミュニケーションを取らないこと)
■群衆の知恵の二つの定理
・多様性予測定理:群衆の集団的な正確さが、個人の正確さの平均値マイナス集団的な予測の多様性に等しい
・群衆が平均を負かす即:群衆の予測の正確さはメンバーの正確さの平均より悪くなりえない。このため、群衆はその平均的メンバーより必ず正確な予測をする
■投票にはない市場の二つの効果
・正しく予測しようという動機
・多様になろうという動機
■ビッグサイエンスもチームが牛耳っている
・1901年から1915年まで、ノーベル物理学賞は14人に授与された
・1995年から2004年までには、その二倍の数の人が賞を受賞している
 賞一つあたり平均2.8人という値は、ノーベル賞が最高三人にしか与えられないことを考えればますます驚くべき事実と受け取れる
■多様なツールの超加算性
 人々の集団が一緒になって問題解決に取り組んでいるとき、一人の人が向上を果たせば、他の人がその新たな解をさらに向上させられる。
■交渉に携わる人は立場ではなく利益を強調すべき(ハーバード流交渉術)
■自分と違う風に考えている人、違う言葉をしゃべる人、違う経験、訓練、価値を持つ人と出会ったら、チャンスと可能性に気づくべきだ。
■才能のある”自分”と才能のある”彼ら”が、さらに才能のある”自分たち”になれることを知っておくべきだ。

4822246000 「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき
水谷 淳
日経BP社 2009-01-22

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