グーグル的思考 (ジェフ・ジャービス)

4569708196 「グーグル的思考」は、米国でブロガーとしても有名なジェフ・ジャービス氏がグーグル的経営手法の可能性について考察した書籍です。
 かなり以前に買って読んでいたのですが、読書メモを書いてなかったので遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 タイトルだけ見ると、「ザ・サーチ」のようにグーグル自体の分析をしている本のように見えてしまうかもしれません。
 ただ実は、この本で考察されているのはもともとの英語での書籍のタイトル「What Would Google Do? (グーグルならどうする?)」にあるように、インターネット時代の経営やマーケティングをグーグルのように全く新しい視点で考えようと言うメッセージです。
 ジェフ・ジャービス自身が、米国で有名な炎上事例であるDELL HELLというネガティブキャンペーンのきっかけとなった人でもあり、自らの体験も踏まえての「客との関係をひっくり返してみよう」というメッセージを企業に提示しているわけです。
 インターネットやソーシャルメディアの進化によって企業がつきつけられている本質的な課題や可能性について考えさせられる本ですので、ソーシャルメディアを活用したマーケティングに携わる方だけでなく、経営企画や顧客サービスを担当している方々にも是非読んで欲しい本です。
 「グランズウェル」や「ブログスフィア」、「ビジネス・ツイッター」と合わせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■デルヘル(デル地獄)2005年6月
 ジェフ・ジャービスのデルに対する批判記事が、グーグルで「デル」を検索した際に、1ページ目に表示されるように
→2005年8月 ビジネスウィーク誌がこの一件を記事に
■ジェフ・ジャービスからのデルに対する助言(2005年8月)
・ブログを読むこと
 彼らを単なる「ブロガー」と侮ってはいけない。彼らこそ、消費者であり、市場であり、運が良ければあなたの顧客となる人々なのだ。
・消費者と対話する。
 ブログに対する御社の方針は「見るには見るが、介入しない」だそうだが、それは消費者に対する侮辱だ。
・ブログを開設する。
 ブログを書くことで、御社が消費者との対話を恐れていないことの証になるからだ。
・マスコミやブログ上の悪い評判に耳を傾け、自らに問題があることを認める。
 その上で、今後どのように向上していくかを示してくれれば、こちらも力になれる。
■その後のデルの対応
→2006年4月 不満や解決策を提示しているブロガーたち一人一人と接触するように。
→2006年7月 デルのブログ「ダイレクト・トゥ・デル」が開始
       ライオネル・メンチャカが登場してから事態は一変悪名高き炎上パソコンについても、真っ向から話しあった。
→2007年2月 マイケル・デルはアイデア・ストームの立ち上げを命じた
→2007年 1億5000万ドルを投じて、悪名高い顧客サポートセンターのテコ入れを図った。(処理時間を計測する代わりに、問題一つの解決にかかる時価を計測するようにし、電話たらい回しの問題を45%から18%にまで削減)
→デルに対する不満をブログに書いたら、デルから連絡が来て問題が解決したという記事が、様々なブログ上で見られるようになった。


■リンクは、あらゆるビジネスや組織を変える力を持っている
■ネットワークに関するエブスリンの法則(元AT&Tワールドネット幹部)
 ネットワークからの利益を最小限に抑えれば、規模と価値は最大限に成長する。
 競合他社を寄せ付けないために、会員に対する費用とマージンは低く保たなければいけない
 従来のネットワークは、これとは反対の形で機能している。
■オープン性に対してデフォルトしない(カテリナ・フェイク Flickr創業者)
 オンラインの写真サービスでは、ユーザーたちが自分の写真を公開したがらないことが前提とされていた。しかし、フリッカーは特にユーザーからの要請がない限り、写真を共有できるようにしたのだ。
■エレガントな秩序をもたらせ(マーク・ザッカーバーグ)
 コミュニティというのは、我々が始めるものではない。
 コミュニティはすでに存在しており、その目的のために活動している。我々は、どうしたらその活動を向上させるための手助けができるかを考えなくてはいけないのだ。
■AOLやマイスペースのように、そのネットワークにユーザーを引き込み、壁の中に閉じ込めようとする企業は勝者にはなれない。
■自分の周りにコミュニティが形成され始めたら、自分がそのコミュニティを所有していると思ってはいけない。コミュニティを所有するのは、そのコミュニティ自体だ。
■大ヒット商品の時代は終わった(メディアの新経済(ウメア・ハーク))
 商品の製作、流通、マーケティングを通して金儲けをすると言うやり方は、もはや時代遅れになりつつある。
■新世代のメディアの価値を築く3つのポイント
・新発見(良い素材の発見)
・集合体(新世代の流通)
・順応性(マッシュアップなどを使ってコンテンツを広げる)
■マスマーケットは短命な現象であった。
 これは1950年代、テレビの急速な普及とともに生まれた。続いてアメリカのほとんどの都市で小規模の新聞社が倒産したのを受けて、放送と印刷双方において、「万人向けの商品」がもてはやされるようになったのだ。
■「統制と信頼は反比例の関係にある」(デビッド・ワインバーガー)
■テレビの黄金時代は、テレビがインターネットに開放された今、あるいはこれからなのだ。
■顧客の価値は「持っているお金ではなく、どれくらい情報源になってくれるか」で測られるべきだ(A・G・ラフリー P&G会長)
■生焼けの提示(ニック・デントン)
 ブロガーたちはあえて不完全な知識をウェブ上に掲示することで、それを完全にするための協力を仰ぐことができる。
■グーグルは、費用のかさむ過ちを犯すことを恐れない
「私は、やるべきことを急ぎすぎて、やりすぎてしまう会社を作りたいんだ。こうした失敗がないということは、我々がリスクを恐れているということになるからね」(ラリー・ペイジ)
■クレイグの法則「邪魔をしない」
 せっかくユーザーが使いたいと思うようなプラットフォームを構築しても、自分がその中心に居座って、人々がやりたいことを邪魔するようでは最悪だ
■アメリカ国内の家庭の80%は、一年の間に一冊も本を買ったり読んだりしない。アメリカの成人の70%は、この5年の間に一度も書店に足を踏み入れておらず、58%は高校卒業以来一冊も本を読んでない(Bookstatistics.com)
 
■広告と広告代理店が、この世からなくなることはないだろう。
 すべての消費者に愛され、口コミで広まるような完璧な商品など、生まれるはずがないからだ。
■客との関係をひっくり返してみよう
・顧客の一人一人を満足させることを目標に掲げて、顧客サービスに資金を投じる
・顧客があなたの商品について意見を寄せるためのソーシャル・ツールに資金を投じる
・ブランドが顧客のものであることを理解し、彼らに委ねる
■混沌のシナリオ(ボブ・ガーフィールド アドバタイジング・エイジ)
 古いメディアが収縮する一方で、新しいメディアは大きな広告主を受け入れる準備が整っておらず、大きな広告主も新しいメディアに対応する準備が整っていない。その結果、金銭は両者の間の裂け目へと消えていくのだ。
■人間同士のつながりが広告業に取って代わる中で、広告に費やされる費用は減っていくだろう。(中略)浮いた資金の一部は、いまやそれ自体が広告の役割を果たす商品の改良と、広告代理店の役割を果たす顧客との関係の向上の双方に費やされなくてはいけない。
■広告代理店と広告業は、企業と顧客の関係に介入してはならない。(中略)有能なコンサルタントは、コンサルティングが終わったら辞去するものなのだ。
■代理店は自らをネットワークとして再構築すべきだ(トバコワラ)
■アメリカのユーザーがインターネットにアクセスするには、概算で日本のユーザーの二倍の費用と10倍の時間がかかっている
■「どんな行動も、消すことはできないし、世間の目からも逃れられない」
 「もはやプライバシーは存在しない。腹を据えるしかない」(ビントン・サーフ)
■グーグルとインターネットのせいで、クリエイティブ・クラスが仕事を奪われるという非難の声もあるが、私に言わせれば、インターネットのおかげで万人向けの品質を超えた作品は世に出られるようになったのだ。インターネットはマスを打ち崩した。それとともに、マス向けのメディアも経済構造も崩壊した。

4569708196 グーグル的思考
早野 依子
PHP研究所 2009-05-16

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