ソーシャルメディア炎上事件簿 (小林直樹) を読むと、ソーシャルメディアの炎上のどこが怖くなくて、どこが本当に怖いのか分かるはず

4822227219 「ソーシャルメディア炎上事件簿」は、タイトル通りソーシャルメディア関連の炎上事例をまとめた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 私自身、「ソーシャルメディアで炎上したらどうしたら良いですか?」と何度これまでに企業の方から聞かれたことか分かりません。
 炎上という言葉が醸し出す雰囲気から、実際の炎上事例を知らない方にとっては、ほっておくと勝手に利用者が炎上させにくるというイメージを持ってしまうようです。
 ただ、この本を読むと実はソーシャルメディアの炎上のケースというのは明確に炎上する原因があるケースがほとんどで、炎上を避けるためのポイントというのはそれほど複雑ではないと言うことが分かるはずです。
 しかも炎上で最もダメージを受けるケースというのは、九州電力のやらせメールに見られるように、ネットで炎上が始まっているのに長い期間気づかないケースです。
 本気でソーシャルメディア上の炎上が怖いのであれば、唯一の解決策はソーシャルメディア上の利用者の声に普段から耳を傾けていくことでしょう。
 この本には日本でおこったソーシャルメディア上の炎上事例がほとんど丁寧にまとめられていますので、炎上に不安を感じているソーシャルメディア担当者の方には参考になる点が多々ある本だと思います。
 
 海外の炎上事例については、合わせて「グランズウェル」や「エンパワード」、「ビジネスツイッター」などを読まれることをお勧めします。
【読書メモ】
■きっかけは、有名人を見たことをちょっと自慢したい、面白がってもらいたいといった「サービス精神」からくる反響狙いの投稿・ツイート。それが実名アカウントではなくても、書き込み内容や状況から、個人が特定された。「匿名だから大丈夫」と思い込んでいる人が多いだけに、問題の根は深い。
■典型的炎上パターン6分類
・やらせ・捏造・自作自演
・なりすまし
・悪ノリ
・不良品、疑惑、不透明な対応
・コミュニティ慣習・規則の軽視
・放言・暴言・逆ギレ


■九州電力のやらせメール
 一連の経緯を一言で言えば、一般市民によるソーシャルメディア上での告発がまずあり、その後に九電トップの首が取られることになった事例といって差し支えないだろう。それだけのパワーをソーシャルメディアが既に持っていることを示す事例となった。
■東芝ビデオ修理”クレーマー”事件の致命的な3つの判断ミス
・A氏の対応を渉外管理室にまわしたこと
 →企業側から見て”厄介な客”こそ、顧客サポートに長けたプロが対応すべき
・暴言音声の公開後も、A氏に積極的にコンタクトを取りに行かなかったこと
 →訪問も電話も平日の昼間にしており、普通の会社員が家にいる時間ではない
・法的措置に頼ったこと
 →コミュニケーションを重ねて解決していこうという姿勢が見えなかった
■炎上しやすい話題・発言
・口汚い言葉、不穏当・不謹慎な発言
・イデオロギーがかかわる話題
・人を見下す言葉、発言
・犯罪自慢、武勇伝を語る
・価値観の否定、押しつけ
■ウエスティン、アディダスの両事件は、偶然だが話題の対象はJリーガーであり、そこには選手のファン、チームのファンがついている。ネットの掲示板に、その問題を扱うスレッドが1度立ってしまうと、国内サッカー板の住民を巻き込んで騒ぎが一気に拡大していく。
→ここでネット上の話題をいち早く伝えるWebメディアが我先にとニュースに仕立て、提携先ポータルサイトのニュース欄にも配信する
→Yahoo!ニュースのトップページのトピックス欄に見出しが載れば、時に大手紙の1面を飾るよりも広く認知される威力を持つ
■投稿前チェックリスト
・この投稿内容に一抹の不安も、危うさも感じるところはないか?
・この投稿が大勢の人にRTされても差し支えないか?
・特定の人・層について言及している場合、該当者が見ても問題ないか?
・上司、取引先など仕事上の関係者が見ても問題にならないか?
・親・きょうだい、愛するパートナーor意中の人が見ても構わないか?
■お詫びに当たっての注意点
・安易に先延ばしをしないこと
・お詫びと抗議をセットにしないこと
■通り一遍のお詫び文面から踏み込んでどれだけ謝意を伝えられるか。そのメッセージ次第で、受け止めるユーザー側は問題を許し、共感し、ファンにさえなっていく。
■お詫びの伝え方
・自社メディアで発信
・メディアを通じて発信
■ソーシャルメディアで悪評が広まったならソーシャルメディアで挽回する。それがセオリーだ。
■いわゆる企業の危機管理論では、企業は迅速かつ正確に情報を公表するようにと説いている。だが、危機管理広報の現場に日々直面している平能氏は、これを「理想論であり、正確さと迅速さは矛盾する」と実態を語る。
■現場が保守的になってしまうと、一向に情報が集まらない。会見の開催やリリースの公開がずるずると先延ばしになり、「対応が遅い」「ダンマリを決め込むつもりらしい」と悪評が広がっていくことになる。

4822227219 ソーシャルメディア炎上事件簿
小林 直樹 日経デジタルマーケティング
日経BP社 2011-08-25

by G-Tools